FXや仮想通貨は、ハイリスクながら儲かりそうなイメージがあり、魅力的に映るかもしれません。しかしお金のプロから見れば、投資初心者にはおすすめできません。

なぜ仮想通貨やFXは投資初心者に不向きなのか、その理由を解説。そして、初心者におすすめできる投資とはなにか?紐解いていきます。

1. 投資と投機の違いを知る

FXや仮想通貨は投資ではなく、投機に分類されます。投資と投機は違うと知りつつも、説明できない人は意外と多いかもしれません。定義を確認しておきましょう。

・投資:長期的な価値の上昇が期待できる。

・投機:短期間に売買を繰り返し、価格差で利益を狙う。

ゲーム理論では、投資は非ゼロサムゲーム、投機はゼロサムゲームと説明できます。

投資:非ゼロサムゲームでは、長期的な市場拡大が期待できるため、参加者全員が期待できる利益の合計はゼロになりません。

投機:ゼロサムゲームでは、参加者全体が期待できる利益の合計がゼロになります。FXの場合、二国間の為替の取引になるため、市場全体は上がりません。ドル円ならば、ドルが上がれば円は下がり、儲かる人がいれば、必ず誰かが損する構図です。

参考:三井住友DSアセットマネジメント わかりやすい用語集 解説

2. FXはあっという間に数百万円を損する恐れも

デイトレードやスキャルピングのような、短期間で売買を繰り返すFX取引は、ゼロサムゲーム。手数料や税金などを考慮すれば、利益がマイナスになる場合もあります。

FXで特に気を付けたいのが、レバレッジ(証拠金<自己資金>を担保にして、自己資金以上の取引を可能にする制度)です。

レバレッジを掛けると、少ない元本で何倍もの金額を取引できます。そこをおすすめポイントしてFX会社の紹介ページには、少額から取引可能と記載されている場合があり、少額からはじめられる=低リスクだと勘違いしてしまう方もいるかもしれません。

元本140万円でレバレッジが25倍の場合、単純計算で、3,500万円の取引ができます。ドル円の為替レートが140円で取引を開始し、130円に動いた時点で売却すると、損失は10万円の25倍である250万円になります。つまりFX相場が急変すると、元手よりずっと大きな金額を損する危険性があるのです。

またFXには、外貨預金の金利に似た、スワップポイント(2ヵ国間の金利差調整分)を長期的に稼ぐ方法もあります。2倍程度の低レバレッジで、長期投資を前提とするのであれば、投資と言えるでしょう。ただし、為替相場は予想が難しいため、投資に慣れてから検討しましょう。

3.仮想通貨は、本質的な価値が定まっていない

ビットコインなどの仮想通貨は、それ自体が価値を生み出さないため、長期的な価値の上昇を期待できません。こちらも投機に分類されるため、初心者におすすめしにくいもの。

仮想通貨の変動要因は、主に需給です。今はまだ株式のように業績や、会社の資産などの裏付けがなく、値動きの予想も困難です。また暗号資産に関する詐欺も多く、十分な注意が必要です。

4.結局、初心者には「投資信託」がおすすめ

では、投資で資産を増やしたいなら何が初心者におすすめなのか?それはやっぱり債券、株式、不動産などの分野で分散・長期投資をすること。

一つの会社の株式や債券に集中投資すれば、その会社の業績に資産が左右されてしまいます。つまり個別銘柄への投資ではなく、複数の会社に投資できる、投資信託を選びましょう。

不動産投資の場合も、不動産の購入よりも、不動産投資信託・リートへ投資の検討を。不動産投資をはじめるには多額の資金が必要で、入居者の有無に収益が左右されてしまいます。また投資する物件の見極めも、簡単ではありません。

一方リートならば、プロが投資する、優良な複数の不動産物件から生まれる利益を分配金として受け取れます。


FXや仮想通貨への投機で長期的に儲けることは困難でハイリスク。結局のところ、資産形成に近道はないと割り切り、投資信託を活用し、長期的な利益を目指しましょう。

山田ももこ

ファイナンシャルプランナー。 大学卒業後、アセットマネジメント会社に入社。上場企業の管理部門を経て、ライター・編集として独立。「とっつきにくいお金の話を分かりやすく」をテーマに、資産形成や投資について伝えることを得意としている。

Source: 三井住友DSアセットマネジメント,ニッセイ基礎研究所,日本銀行