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平日に更新している「毎日書評」に加え、4月からは毎週土曜日に「毎週新書」としておすすめの新書をご紹介していきたいと思います。

ちなみにきょうは4月1日ですが、エイプリル・フールのジョークではありません。

ということで第1回目の本日にピックアップしたのは、『今すぐ眠りたくなる夢の話』(松田英子 著、ワニブックスPLUS新書)。1万人の夢を分析してきたという東洋大学社会学部社会心理学科教授が、夢の研究の最前線を明らかにした一冊です。

そもそも夢とは記憶情報の処理過程のことで、私たちは毎晩、複数の夢をみています。

「実は(誰でも)毎日夢をみているんですよ」というと、多くの方が驚かれます。

覚えている頻度は人によってさまざまですが、夢の記憶は儚いもので、「夢をみたことを覚えていない」、あるいは「思い出そうとしたけれど忘れてしまった」ということも多いでしょう。

1年に1回ぐらいしか夢をみない、というような人もいますが、みていないのではなく、ほとんどの場合、覚えていないだけです。(「はじめに」より)

ドイツの夢研究者であるシュレードルによれば、客観的評価では、ポジティブな感情が優勢な夢をみる確率が21.1%、ネガティブな感情が優勢な夢をみる確率は56.4%、感情を伴わない夢をみる確率が、13.5%、感情のバランスがとれた夢をみる確率は9.0%なのだそうです。

ネガティブな感情の夢が多いことは共通しているようですが、とはいえ夢はいつも同じではなく、忘れ去ってしまった夢、楽しい夢、焦る夢、飛び起きるような夢、ストレスによる悪夢まで、その階層はさまざま。

また心の健康の度合いのみならず、年代による差や成長に伴う変化など、生涯発達やパーソナリティ(性格の差)なども反映されるもの。だから、知れば知るほどおもしろいというわけです。

それにしても、私たちはなぜ夢をみるのでしょうか?

夢が形成されるメカニズム

夢の形成過程を説明するモデルのなかでいちばん支持されているのは、睡眠学者のアラン・ホブソンとロバート・マッカーリーが提唱した「活性化―合成仮説」なのだそうです。

これは「レム睡眠中に脳幹の“橋(きょう)”から信号が発生し、感覚や感情、記憶の回路が活性化されることで夢の素材が生じる。それに対して、覚醒時よりもまとめあげる機能が弱くなったレム睡眠中の前頭前野が、不十分ながらも夢の素材をなんとかまとめあげようとしている」と考えるものです。ホブソンは、「夢は睡眠中に自己活性化した脳の働きによるものである」と表現しています。(53〜54ページより)

記憶に残っている夢のことを思い返してみれば、なんとなく納得できる気もします。

いずれにしてもこの仮説によれば、レム睡眠とノンレム睡眠の切り替えも脳内の化学伝達によってなされているよう。「アセチルコリン(筆者注:睡眠に深く関わる、神経刺激を伝える神経伝達物質)」がレムをオン、ノンレムをオフにし、「セロトニン(精神を安定させる、脳内の神経伝達物質)」と「ノルエピネフリン(交感神経の情報伝達に関わる神経伝達物質)」がノンレムをオン、レムをオフにするというのです。

いいかえれば、人間と動物のレム睡眠に“橋”は必須だということ。ところがその後、神経科学者マーク・ソームズが、「橋を損傷していても夢をみる患者がいることから、夢とレム睡眠は同義ではない」と指摘してもいるのだとか。(53ページより)

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夢をみやすいのはどんなとき?その役割は?
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