日常生活において、「自分はなんて要領が悪いんだろう」と感じる場面は少なくありません。しかし、そもそも「要領よくやる」ということばは意味が広すぎるものでもあります。そのため結局は、「実際の行動を変えられないまま」になってしまうわけです。
そこで『努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ』(菅原洋平 著、アスコム)の著者は、まず「要領のよさ」を次のように定義づけています。
「要領の悪さ」とは、目的を見失ってしまうこと。
「要領のよさ」とは、しっかりとゴール設定することで、脳が整理され、ゴールに向かって(自然と)最短距離を歩んでいけること。(「はじめに」より)
そして「要領のよさ」は、次の5つで構成されているのだとか。
① 「余計な情報」に惑わされない
② 「脳のムダづかい」を減らす
③ 「すぐやる人」になる
④ 「同じ失敗」を繰り返さない
⑤ 「思い込み」を捨てる
(「はじめに」より)
つまり「要領をよくする」ために大切なのは、ムダを省いたり、余計な情報をカットすること。そのため誰でもすぐに実践でき、再現性もあるというのです。
きょうは第1章「ちょっと待った! その『要領がいい』、実は間違いです!」に焦点を当て、「要領がいい人」の特徴を確認してみることにしましょう。
マルチタスクか、シングルタスクか
×マルチタスクでどんどん仕事をこなす
○マルチタスクの場面でも「シングルタスク」で対応
(28ページより)
要領がいい人には、「複数の仕事を同時進行でこなせる“マルチタスカー”である」というイメージがあるかもしれませんが、著者によればそれは大きな勘違い。
要領がいい人ほどマルチタスクをしていないことが、脳科学の実験で明らかになっているというのです。
シカゴ大学のエドワード・ヴォーゲル教授らによる実験では、複数の色の棒が表示された画像を見て、「青色の棒だけを数える」という課題を行いました。
この課題では、複数の色の棒が同時に表示されたとしても、「青色の棒を探す」という目的を覚えておく力「ワーキングメモリ」が求められます。
結果、実験中の脳波の動きを見ると、正答率が高い人は、ほかの色に目を奪われず、「青色の棒だけを集中して数えられる」ことがわかりました。(28〜29ページより)
ここから、要領がいい人(=ワーキングメモリ能力の高い人)は「並行してたくさんのこと(マルチタスク)をするのが得意」なのではなく、「優先順位をつけ、1つずつ集中して処理する能力に長けている」ということがわかったわけです。
そもそも脳は、基本的にシングルタスクしかこなせないのだとか。なぜなら脳の本質は「情報選択」だから。つまり、一度にひとつのことしか考えられないようにできているのです。
時間を有効に使うために複数のタスクを同時に行おうとすると、ひとつの作業の処理スピードが遅くなり、脳の疲労も大きくなってしまうようです。その結果、どちらの作業にも集中できず、パフォーマンスが低くなってしまうということ。
そこで著者は、忙しいときこそ、あえて脳にひとつずつ課題を与え、処理スピードを高めてみるべきだと主張しています。たとえば、オンラインセミナーの音声を聴きながら皿洗いをするようなことは、じつは非効率的。皿洗いがだらだら続いてしまい、オンラインセミナーの内容も頭に入らないということになりがちだからです。
むしろ効率的なのは、皿洗いを先にすませたあと、オンラインセミナーに集中すること。(28ページより)
臨機応変に対応するべき?
×臨機応変に対応する
○記憶の関連づけがうまい
(35ページより)
「あの人はいつでも臨機応変に行動していてすごい」と感じさせる人がいますが、そうした能力は「覚えたことを関連づける力」に深く関係しているのだそうです。
体験した記憶を、うまく「ほかの記憶」に関連づけて保存しておくことで、次に似たような場面に遭遇したときに、その記憶を生かして上手にふるまっているのです。(35ページより)
なお、この「記憶の関連づけ」は意図してトレーニングすることができるそう。方法はいくつかあるようですが、たとえばそのひとつが、「なにかうまくいったことがあったら、『○○のときみたい』と振り返ること」。
たとえば、次のように。
先に簡単な資料を送っておいたことで打ち合わせがスムーズになったら、「映画の予告編を観ておいてもらったおかげで、映画を観るまでの話題ができ、デートでの会話が弾んだときみたい」と振り返る(36ページより)
プレゼンで用意していなかった内容を求められたとき、別件で作成していた資料の内容をうまく織り交ぜて話せたら、「キャンプでありあわせの物でおいしい食事をつくれたときみたい」と振り返る(36ページより)
自分なりにうまくできたこと、土壇場でできたこと、他人から「よかった」と指摘されたこと…。そうした記憶を関連づけることで、勝手に「将来の臨機応変な行動の準備」をしてくれる機能が脳には備わっているということです。(35ページより)
著者が研修やセミナーで話している「要領のいい人」になるためのコツ40種を明かした、とても実践的な一冊。「これなら実践しやすそう」と感じたものから試してみればいいというので、気軽に活用できるはずです。
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