いつも雑談していたり、残業することもなかったり…本当に仕事をしているのかわからないのに、しっかり成果を出している人がいるものです。
『なぜ、サボる人ほど成果があがるのか?』(理央 周 著、日本実業出版社)の著者もそういう人を見てきたそうですが、そこから学んだのは「オフィスにいない時間も仕事につなげているんだ」「成果を出す仕事は常識の外にもあるんだ」ということだったそう。
このような一見仕事をしていないように見えるけれど、成果につながる自由な時間を、「サボる時間」と私は呼んでいます。この「サボる時間」の中で、将来の企画の発想を練ったり、現場の生の情報を得たりして、仕事に生かすのです。(「『サボる時間』がないから忙しいーーはじめに」より)
つまり、ただサボっているだけではなく、“サボるような調子でフレキシブルに仕事をしている”のでしょう。だとすれば、相応の効果があったとしても充分に納得できる話。事実、著者も「サボる時間」をつくるようになった結果、おもしろいように成果が出せるようになったのだとか。
つまり本書では、そうした経験によって培った“最短の時間で、最大の効果を生み出す「タイムパフォーマンス(タイパ、時間対成果)」をあげる工夫”を紹介しているわけです。
しかも「なにをやめたほうがいいか、それはなぜか、どうすればいいか」についてすぐ理解できるようにと、○×の対比で構成されている点もポイントのひとつ。きょうは、第2章「『サボる時間』をつくる段取り」に注目してみたいと思います。
先にやるべき仕事は、どっち?
×「手のつけやすい仕事」を先にする
○「時間がかかる仕事」から先にする
(34ページより)
段取りをする際に必要なのは、「どんなアウトプット=成果を出す必要があるか」をまずは考え、そこから「いまなにをすべきか」と逆算して行動すること。
料理をつくるさいには、「食卓にすべての料理を並べて、おいしく食べられる状態にするためには、どのような手順がいいか」を考えます。
スープとステーキとサラダをつくるのであれば、時間をかけて味を染み込ませたスープから先に仕込みます。
煮込んでいるあいだに、人参のキャラメルグラッセをつくり、サラダをつくる。そこまで用意できたところでステーキを焼き始める……と段取りをするのです。
ポイントは、「全体像から逆算すること」「最も時間のかかる仕事を見極めること」です。
仕事もこれと同じです。(35ページより)
たとえばウェブサイトの制作であれば、まず最初にするべきは「ウェブサイトを、お客様にどう使ってほしいか? どういう反応を求めるか?」と考えてみたうえで、全体像から逆算すること。
いちばん時間がかかるのが動画撮影だったとしたら、その準備を進めている間に、関係者に依頼して、打ち合わせをして、文章を練って…という具合に考え、「どのようにすれば全体をスピーディに進行させることができるか」を具体的な計画に落とし込んでいくべきだというわけです。
急ぎの仕事も大事ですが、目の前の仕事にやみくもに取り組むのではなく、全体像から逆算し、とくに時間のかかるものから先に着手するように予定を立てましょう。(44ページより)
そういう意味ではたしかに、料理をつくる際と手順は変わらないことがわかります。(34ページより)
日程調整のコツは?
×「記憶」で日程調整する
○「記録」で日程調整する
(44ページより)
ダブルブッキング、ドタキャン(直前キャンセル)、リスケ(日程の再調整)をする人は、何度も繰り返すもの。しかし当然ながら、それは相手の時間を奪うことになり、ひいては「信頼できない」という印象を与えてしまうことにもなるでしょう。
そこで打ち合わせの日程を決めるときには、スケジュールを実際に確認し、「先約がないか」「前後の予定に無理がないか」を確実にチェックすることが必要。すぐに、その場でアプリに入力したり、手帳に記入することも忘れるべきではありません。
「あとでやろう」と思うこともあるかもしれませんが、そうすると忘れてしまったり、勘違いしたりする可能性が高まってしまうわけです。
私はGoogleカレンダーに予定を入れるときに、2時間前にリマインドしてくれる「通知」も一緒に設定します。2時間前に設定すれば、万が一、当日に失念していたり時間を勘違いしたりしていても、なんとかできるからです。(45ページより)
信頼を失うのは一瞬ですが、信頼の回復には時間がかかるもの。だからこそ、万全を期すことが大切なのです。(44ページより)
空いた時間の使い方は?
×「すき間時間」を無目的に過ごさない
○「すき間時間」で作業をこなす
(48ページより)
5分、10分の細切れの時間である「すき間時間」は、できるだけ有効に使いたいもの。そこで著者はすき間時間には「作業」をすることを勧めています。具体的には、名刺整理やその日の経費計算、書類整理など、ちょっとした時間にできる「作業」を日ごろからストックしておくといいそうです。
すき間時間にできる作業には、スマホ向きの作業と、パソコン向きの作業があります。たとえば、SNSやメールのチェックなどは、スマホでやってもパソコンでやっても大差ない作業ですが、こみ入ったメールの返信やエクセル入力などは、パソコンで作業するほうが効率よくできます。(49ページより)
細かな作業こそ、わざわざ時間をとってまとめてやるのではなく、細切れの隙間時間にやるべきだということです。(48ページより)
「毎日生きること」を「人生の経営」だと考えると、時間は重要な経営資源だと著者は指摘しています。
つまり時間の使い方を変えれば、仕事の成果に加えて人生の充実度も大きく変わるということ。忙しすぎる日常から抜け出し、より効率的に時間を活用するため、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?
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