ChatGPTと、Bingに導入された人工知能(AI)チャットボットは一見、まったく違いがないような印象を受けます。

確かに、実行できるタスクはどちらも似通っています。同じプロンプト(指示文)を繰り返したとしても、別の返答が返ってくるはずです。

今回の記事では、ChatGPT本体と、BingバージョンのAIチャットボットについて、大きく違う点を9つピックアップして説明します。

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その1:目的

ChatGPTと、BingのAIはどちらもGPT(generative pre-trained transformer=生成型事前学習済み変換器、の意味)という言語モデルを採用していますが、そのプラットフォームは異なります。

ChatGPTの場合

ChatGPTは多目的チャットボットで、自身が学習した、広範ではあるものの限られたリソースがスキャン対象となります。

リソースには、学術誌、ビジネス系のウェブサイト、出版物、ウィキペディアなどが含まれます。

Bingの場合

一方、Bing版のチャットボットは、基本的にはAIを用いた検索エンジンです。より洗練されたインデックス化やスキャンの技法を持つプラットフォームに、AIチャット機能が統合されています。

つまり、検索エンジンとチャットボット、両方の機能を果たすわけです。

このような位置づけの違いはあるものの、ChatGPTとBingが実行する機能は似通っています。

適切なプロンプトを投げかければ、小論文の執筆、一般的な知識に関する問いかけへの回答、本の要約、議論の精査といったタスクをこなしてくれるでしょう。ただしその反応は、学習に用いられたデータセットによって違ってくることを覚えておいてください。

その2:会話のスムーズさ

ChatGPTとBingのAIは、どちらも会話形式でのやりとりが可能です。しかし、この2つのツールと突っ込んだ会話をしてみると、後者のほうが、より洗練されたモデルを用いていることに気づくでしょう。

Bingの回答のほうが、より自然な印象を受けるのです。

たとえば、ChatGPTと交わした、以下のやりとりを見てください。会話を行ったChatGPTが用いている言語モデルの「GPT-3.5」は、文法的に正しく、事実に基づいた発言をしていますが、表現が硬く、ぎこちない印象です。

ChatGPTとのやり取り
Image: MakeUseOf

具体的には、「あなたの1日について教えてください」という問いに対して、「私はAI言語モデルなので物理的な実体はありません。

ゆえに、従来の意味での『1日』を私は持っていません」というような返事をしています。

一方、Bing AIは「GPT-4」を採用しています(GPT-4は、ChatGPTの言語モデルの別バーションです)。こちらで出力される文章は、よりざっくばらんで、人間らしく感じられます。

Bingでのやり取り
Image: MakeUseOf

Bingは、先ほどと同じ問いかけに対して、こう答えています。

「私は素敵な1日を送りました。さまざまなユーザーと興味深い会話をたくさん交わしました。詩や物語、コードなどを生み出すよう頼んでくるユーザーもいました。私は、創造的になれたことと、みなさんのお役に立てたことが楽しかったです(顔文字)」

原文注:現時点でChatGPTでGPT-4にアクセスするには、有料の「ChatGPT Plus」(料金は月額20ドル=約2600円)にアップグレードする必要があります。

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その3:データの正確性

ChatGPTはその利用規約で、アウトプットするデータの正確性は保証できないと、明確にしています。2021年よりあとに起きた出来事については限定的な知識しか持たないため、ChatGPTは時に不正確な情報を示すことがあります。

実際、自身のリリース日さえ知らないのです。

ChatGPTは時に不正確な情報を示す
Image: MakeUseOf

一方、Bing AIでは、先進的な言語モデルに加えて検索エンジンが統合されているため、より信頼性と正確さが高いデータを生成します。

MicrosoftはBingの訓練において、ChatGPTとは異なり、限定されたデータセットを使っていません。その代わりに、自社の検索エンジンを用いています。世の中の出来事や一般的な知識に関する質問に対して、最新かつ関連性の高い情報を示すためです。

Bingでのより正確な回答
Image: MakeUseOf

もう1つ、指摘しておくべき点があります。BingのAIは、情報源をきちんと示すことです。

どちらのプラットフォームも100%の正確性は保証していませんが、どの情報源をダブルチェックすべきかわかれば、ファクトチェックの効率が上がるはずです。

その4:数学関連の答えの正確性

ChatGPTとBing AIは、どちらも数学を理解しています。どちらのボットも、方程式の解析や、データセットに基づいた演算の実行が可能で、それぞれの言語モデルに基づいたアウトプットを生成します。

どちらのツールでも、基本的な計算をおこなえますが、統計学や物理学、確率といった、より高度な数学の分野に足を踏み入れると、両者の違いが明らかになってきます。

もちろん、100%正確な結果は期待できません。とはいえ、BingのデータセットのほうがChatGPTと比べて、正確性や問題理解力について高い能力を示しています。

たとえばChatGPTは、簡単な確率の問題にも誤った解答をしました。

ChatGPTによる確率の問題の誤った解答
Image: MakeUseOf

一方、BingのAIは見事に正解しています。

Bingによる確率の問題への正確な回答
Image: MakeUseOf

その5:セキュリティ対策

サイバー犯罪をたくらむ者たちは、ChatGPTが登場するやいなや、よからぬ目的に使いはじめました。これを受けて、一部にはChatGPTをサイバーセキュリティ上の脅威だとする声もあります。

悪意ある者たちがChatGPTを悪用して、スパムメールの作成やマルウェアの開発、フィッシング詐欺用のリンク構築を行なうというのです。

開発元のOpenAIも、これらの問題を認識しています。開発チームは常にセキュリティを高めるべく努力しているものの、ChatGPTが、バイアスのかかった、あるいは有害なコンテンツを生成する可能性があることを同社は明確にしています。

ChatGPTが有害なコンテンツを生成する可能性
Image: MakeUseOf

BingのAIボットも、同様のサイバーセキュリティ上のリスクに直面しています。そこで対応策として、会話により厳しい制約を設けることで、ジェイルブレーク(脱獄)されるリスクを減らしています。

Bingでは、何か不審な点のあるトピックに触れると、会話が強制終了される仕組みを採用しています。

Bingの会話を強制終了する仕組み
Image: MakeUseOf

その6:アクセスの容易さ

ChatGPTにアクセスする方法は限られています。モバイル版、あるいはデスクトップ版のアプリケーションがありません。

これに対してBing AIは、Bing、Microsoft Edge、Bingのモバイルアプリ、さらにはSkypeでも利用可能です。ユーザーは、自分が使っているSkypeのグループチャットにBingを追加するだけで、AIによるアシスト機能を利用できます。

おそらくBing AIの唯一の制約は、Microsoft製以外のブラウザでは実行できない点でしょう。Mozilla FirefoxやSafari、Google Chromeでは、Bing AIを使うことができないので、Microsoft Edgeをダウンロードするほかありません。

些細な点にも思えますが、Edgeをデフォルトブラウザとしていないユーザーは、不便を感じることもあるはずです。

その7:新規登録の手間

ChatGPTへのユーザー登録は、とてもシンプルです。OpenAIのアカウントを新規作成し、ChatGPTに登録し、登録確認を待つだけで済みます。

たいていの人は、すぐにアクセスできるようになるでしょう。

対照的に、新しいBing AIへの登録には、最初のうちはかなり時間がかかりました。最初期のユーザーは、順番待ちリストに登録した後、承認されるまで数週間を要しました。この傾向は、特にアメリカ国外に住んでいる人で顕著でした。

Bing AI紹介画面
Image: MakeUseOf

でも幸い、Microsoftはその後、順番待ちリストを撤廃しました。今では、メールアカウントを作成し、Edgeをダウンロードすれば、すぐにBing AIにアクセスできます。

その8:機能性

BingのAIボットは、より先進的な言語モデルを採用し、より幅広いデータセットで学習しているため、ChatGPTよりも機能がすぐれています。さらに、回答前に、検索エンジンも利用しています。

そのため、より正確で信頼性に足る回答や、最新の情報が得られると期待していいでしょう。

ただし残念ながら、Bingではセキュリティに関して厳重な措置が取られているので、汎用性という面では難があります。ユーザーがガイドラインに違反すると、会話は自動的に打ち切られます。

しかも、1回のチャットセッションでのやりとり(ターン)の回数には制限があり、それを超えると新しいトピックを立ち上げなくてはなりません。

もっと自由に使いたいのなら、ChatGPTを試してみましょう。

データセットは限定的で、使われている言語モデルも1代前のGPT-3.5ですが、プロンプトを工夫すれば、ChatGPTの返答の質を向上させることが可能です

原文注:BingのAIとChatGPTに汎用的なプロンプトを投げかけるのではなく、それぞれの言語モデルに基づいて、個別に適した質問を作成するようにしましょう。AIが返す回答の質は、こちらの問いかけによって変わってきます。

ガイドラインに触れない範囲で、AIツールのデータセットを最大限活用するよう心がけましょう。

その9:料金

ChatGPT料金プラン
Image: MakeUseOf

ChatGPTは、無料ですが、OpenAIは月額20ドルでChatGPT Plusを提供しています。

こちらでは、言語モデルにGPT-4を採用し、優先アクセス権が得られるほか、レスポンスもより高速です。

サブスクリプション料金を払いたくないなら、まずはBingのAIを徹底的に試してみるのもいいでしょう。

こちらはすでにGPT-4を採用していますし、MicrosoftはBingについて、広告を通じたマネタイズを計画しているので、こちらのプラットフォームは今後も無料で提供される可能性が高いです。

Bing AIとChatGPT、どちらを使うべき?

ここまで挙げてきたポイントを踏まえて、情報をもとに判断してください。とはいえ、こうしたポイントも、すぐに変わる可能性があります。

AI技術は常に進化を続けています。ChatGPTとBing AIが提供するダイナミックな機能は、採用している自然言語処理技術が成熟する中で、さらに変化していくでしょう。この領域ではきっと、突然大きな進展がみられることもあるはずです。

技術がさらに進むまでの間、ChatGPTで何ができるのか、いろいろと試してみるのも良いでしょう。

Original Article: ChatGPT vs. Bing's AI Chatbot: 9 Key Differences by MakeUseOf