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「食べる」という行為は、「食欲・睡眠欲・性欲」という人間の三大欲求の一つです。食べる姿は、常に意識を向けない限り、もっとも素の部分が表れやすいもの。それでいて、三代欲求のなかで、唯一、公共の場で他者と好意を共有する、とても特別なものです。そんな無防備な「食べる」という行為に、いつなんどきでも「まわりへの配慮」「まわりへの敬意」が映し出されていれば、世界中どんな国でも、あなたに知性と美しさを感じるものです。(「はじめに」より)
フードプロデューサーである『教養としてのテーブルマナー』(小倉朋子 著、SBクリエイティブ)の著者は、このように述べています。
ここでいう「まわり」とは、同席者、料理人、食器、食材の命、歴史、宗教、文化、自然、社会情勢、政治、経済など自分以外の万物のことをさすそう。そして、各国の食のマナーにこそ、万物を読み解くヒントが詰まっているのだといいます。
ビジネスの場でも、そのとき、その場の「誰もが幸せになれる最適解を選択できること」が、真のエリートが身につけている教養です」(「はじめに」より)
テーブルマナーは食の基本であると同時に、ビジネスパーソンが身につけておくべき大切な要素でもあるということ。こうした考え方に基づく本書の1章「美しい食べ方には法則がある」のなかから、【小倉式・食事七則】を確認してみましょう。
第一則 フェイス・トゥ・フェイス
食事とは、ただ食べものを口に運ぶだけではなく、同席者とのコミュニケーションを楽しむもの。
下を向いた状態で、相手の顔を見ながら会話をすることはできませんから、「顔を上げる」というのは、食事の席で、最低限、心がけたいことの1つなのです。(32ページより)
また顔を上げれば、自然と視線が上がって視野も広くなるもの。周囲の状況を把握しやすくなり、お店の人に声をかけるタイミングの見極めや、気配りの判断もつきやすくなるわけです。
つまり「フェイス・トゥ・フェイスの法則」は、同席者とのコミュニケーションを楽しむだけでなく、自分を取り巻く「公共の場」という環境そのものに広く目配りできるようになるための心得だということです。(32ページより)
第二則 指先フォーカス
著者によれば、「指先には、自分の心の表情が見える」ものなのだとか。緊張したとき手のひらに汗をかいたりすることからもわかるように、人の心の機微は手に現れるものだというのです。
もちろん食事の席での指先も例外ではなく、緊張すると指先も緊張し、お箸やカトラリーの使い方などの所作がぎこちなくなったり、ぞんざいになったりしがち。だからこそ著者は自身の教室で、お箸やカトラリーを持つときの指先の細かい動きを、ミリ単位で教えているのだそうです。(34ページより)
第三則 一口一寸
テーブルマナーの本にはよく「一口サイズに切って食べましょう」と書かれていますが、口のサイズは人それぞれ違うもの。切ったサイズが自分の口よりも大きすぎた場合は、口のなかが食べものでいっぱいになり、会話も途切れてしまう可能性があります。では、どうすればいいのでしょうか?
まず「自分の一口サイズ」を知ること。これに加えて、「だいたいの咀嚼回数」も把握していると、なおよしです。
すると、「食べものを口に運ぶ→咀嚼して飲み込む→言葉を発する」という循環のテンポがよくなります。(38ページより)
「モグモグしながら話す」という見苦しさを避けつつ、上手に「食事をしながら会話を楽しむ」ことができるようになるわけです。(37ページより)
第四則 自分ベクトル
まわりに配慮するには、「自分の心のベクトル」は外向きである必要があります。しかし、お箸やカトラリーは内向きでなくてはいけません。
ナイフやフォーク、お箸の先端を相手に向けない。食事とは、ただ自分のお腹を満たすためだけにするものではなく、きちんと相手にも気を配りながらするものであるというマナーの基本が、ここにも表れています。(40ページより)
なかでも洋食の場合は、「刃先を相手に向けないこと」さえ完璧にできれば、自然に美しい食べ方ができるようになるそうです。(40ページより)
第五則 ノイズキャンセル
音を立てて咀嚼することがそうであるように、「ノイズ」とは「騒音」「雑音」のこと。ただし耳に入る「音」だけでなく、お店に被害をもたらしたり迷惑をかけたりするもの、料理を邪魔するもの、食事の場の景色を乱したり、同席者に不快な思いをさせたりするもの、すべてがノイズ。
意識して自分が出しうるノイズに気づき、事前に対処できるようになるだけでも、「まわりへの配慮」のレベルは一気に上がることになるはず。(42ページより)
第六則 絶景キープ
ここでいう「絶景」とは、料理の盛りつけのこと。
その絶景の作者である料理人を尊重し、なるべく最後まで崩さないように食べましょうというのが、この「絶景キープ」の法則です。(45ページより)
ポイントは、「盛りつけが、どこから始まり、どこで終わっているのか」を見極めること。下から始まって上で終わっている場合は上から、奥から始まって手前で終わっている場合は手前から、という具合に、盛りつけの「終わり」を見極めれば、絶景を崩さずに食べ進められるそうです。(45ページより)
第七則 エンディング美
「立つ鳥、跡を濁さず」という教えのとおり、料理を食べ終えてお店を出る瞬間まで配慮を行き届けせる。そうすれば、そこで過ごした時間が素晴らしいものになるわけです。(48ページより)
多様化する社会においては、どこででも臆することなく自分自身を表現することが求められるはず。しかしテーブルマナーは、なかなか人に聞きづらいものでもあるでしょう。だからこそ本書を参考にしながら、大切なことを学んでおきたいものです。
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Source: SBクリエイティブ