アメリカでは、TVやメディアがこぞって起業家やロックスターCEOをもてはやし、彼らが自力で成功したとするアメリカン・サクセス・ストーリーを垂れ流し続けています。

しかし、こうしたサクセスストーリーのなかで、成功した企業リーダーの多くが、実は多大なサポートを受けていたという事実が語られることはありません。

ごく一部の誠実なCEOは、ビジネスの成功にはチャンスや運が大きく関係していて、誰もがそれに巡り会えるわけではないことを伝えようとしています。

しかし、社会全体としては、ビジネス界の巨人たちの偉業を崇拝する空気が支配しています。そして、成功には、少なくとも部分的には偶然や運が作用しているという事実が見落とされ、すべて個人の選択と行動の結果であるかのような誤った認識が浸透しています。

現実には、ビジネス界で最も著名な人たちの一部は、両親から援助を受けなければ、あるいは無鉄砲な野望にチップを賭けることが大好きで気まぐれな投資家の目に止まらなければ、今ほどの成功を収めることはなかったはずです。

こうした有名人のサクセス・ストーリーに触発されて、それほど有名ではない成功者たちの多くも、自分に都合の良いストーリーを作り上げるようになりました。

しかし、そろそろ私たちは、周囲からの支援を受けることではじめて金脈を掘り当てることができたのだという事実をオープンにし、互いに認め合うべきときが来ているのではないでしょうか。

そのほうが、成功のプロセスについてより正確な認識を広めることができますし、当の成功者たちも、人々からその誠実さをたたえられるはずです。

失敗は成功の自然な「副産物」

誰だって失敗したくはありません。しかし、特にビジネスにおいては、少なくともある程度の失敗は避けられないものです。

ユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業)とそのリーダーたちが称賛される影では、スタートアップの70~90%は破綻しているという現実があります。

失敗は悪いことではありません。それは、未知の世界に飛び出し、野心を持って自分の道を切り開いていくときに生じる、自然な副産物なのです。

しかし、“自力による成功”という神話が、どんな旅路でも挫折を何度も経験するものだという現実を覆い隠してしまっています。

世界一の大富豪として新たな栄冠を手にしたイーロン・マスク氏を見れば、最も偉大なリーダーでさえ失敗を免れないことがよくわかります。

このように考えてみてください。裕福な親戚が小切手を切ってくれるまで、あなたがビジネスを始めることが難しい状況だったとしたらどうでしょう。そのことを包み隠さず話せばいいのではないでしょうか?

ビジネスを軌道に乗せることができた理由を正直に話すことは、すべてを自分の力でやらなければならないとする人々の思い込みを払拭する手助けとなるでしょう。

現実的な期待を持つことが満足度の高さにつながることもある

私たちが持つ起業家のイメージの大部分は、マスメディアによって形成されます。メディアがまことしやかに伝えるサクセスストーリーによって、成功者たちが現在の地位を手に入れるまでに、さまざまな紆余曲折を経てきたという事実が見えづらくなっています。

私たちはキャリアのこととなるとせっかちになり、仕事の真価を味わうことよりも(それが社会的価値のある仕事だとしても)、少しでも早くはしごを登ることばかりを考えてしまいます。

もっと地に足のついたアプローチを取れば、キャリアをさらに充実させることができるはずです。Gallup社が最近行った調査によると、就職活動を行なう前に「世界を変えろ」と焚き付けられなかった学生のほうが、より満足度の高い仕事を見つけることができているそうです。

2000人を超える大学卒業生のうち、就職の見通しについて現実的な期待を持っていた人たちは、目的意識を持てる仕事、すなわち、自分の強みを活かせて、深く興味を持つことができ、自分が感じる人生の意義とも合致する仕事に就けているケースがはるかに多かった。

「世界を変えよう」「社会を変革しよう」という陳腐な決まり文句が蔓延する企業社会に置かれれば、ごく一般の働き手たちまでもが、自分に対して高い期待を抱いてしまうのも無理はないことです。

しかし、大成功を収めた人たちが、自分が受けた援助について正直に話すようになれば、若い世代の人たちも、自分たちもまた壁にぶつかる可能性が高いことを理解するでしょう。

失敗や援助を語ることで人間味が生まれる

Amazonの創設者で会長のジェフ・ベゾス氏は、両親から25万ドルの投資を受けて、あの巨大企業を立ち上げました。

この援助についてAmazonの創業物語では語られていないという事実が、この内実を知った人たちがベゾス氏を心から慕えなくなる原因となっています(編集部注:この意見は米Lifehackerによるもので、ライフハッカー[日本版]を代表するものではありません )。

援助を受けたことを正直に話すようになれば、最も成功した人たちでさえ、身近で傷つきやすい存在であることが見えやすくなります。自分の成功を美化する一方で、家族や友人から受けた莫大な援助については口をつぐむようでは、いずれ評判を落とすことになるでしょう。

また、広義の「援助」には、さまざまな形があります。あなたが遅くまで働いている間に、家事を担い、支えてくれたパートナーや家族はいませんか?

こうした援助も金銭的援助と同じくらい重要です。援助とは、必ずしもベンチャーキャピタルの銀行口座から流れてくるものだけではないのです。

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Sam Blum - Lifehacker US[原文