3月8日、また今年も国際女性デーがやってきました。毎年この日には最新のジェンダー・ギャップ指数が話題になります。
内閣府のページによると、2022年度の日本の総合スコアは146カ国中116位。残念ながら相変わらず先進国の中で最低です。
実は、意外かもしれませんが著者が住むアメリカも欧州諸国と比べると低めで、2022年度は27位。北欧はもちろん、イギリス、ドイツ、フランス、カナダなどよりも下なんです。
女性首相が経験する女性に対する固定観念
2022年11月に欧米諸国でも女性に対する偏見が垣間見えた出来事がありました。
それは、フィンランドのマリン首相とニュージーランドのアーダーン首相(当時)がニュージーランドで会談し、記者会見をしたときのこと。
男性記者から「年齢が近いから会談したのか?」という質問が飛んだのです。
ちょ、ちょっと待って。フランスのマクロン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は誕生日が1カ月しか違わない、いわゆる同じ学年。
この2人は昨年何度も会っていますが、その理由が「同じ年齢だから」と思う人はいませんよね。
このあり得ない質問に対しては、アーダーン首相が即座に「バラク・オバマと(ニュージーランドの元首相の)ジョン・キーが同年代だから会談したのかと質問する人はいない」とやり返しました。表情からは、不快さと「そんなこと質問する!?」という唖然さが入り混じった心境がうかがえました。
表面的には落ち着きを払っていたマリン首相も、アーダーン首相のコメントの後に、「私たちは首相だから会談した」ときっぱり。
女性という理由でアンコンシャスバイアスの対象になる両首相
この両者は、女性、特に職務に対して年齢の若い女性ということでこれまでも欧米のメディアのアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の対象になってきました。
マリン首相は、就任後の2020年5月、イギリスの「ヴォーグ」誌にこう語っています。
いままでどんなポジションにいても、私の性別が出発点にされていた。私が若い女性であるということが。将来、女性であることが問題にされず、そのような質問されることがなくなることを願っている。私はできるだけ良い仕事をしたいだけ。中年男性よりも優れているわけでも劣っているわけでもない。
本人が自覚している通り、全世界から「女性」首相、「若い女性」リーダーという枠組みで常に見られてきました。
それが特に顕著だった例があります。昨年夏にマリン首相がプライベートで踊っている動画が話題になり批判を受けましたが、これだって男性首相の場合とはまったくことなる極めて厳しい反応を受け、同氏はドラッグテストまで受け(させられ)ました。
イギリスのジョンソン首相だってコロナ下のロックダウン中に飲み会してましたよね。ひんしゅくを買っていたけれど、厳しい処分や批判にはありませんでした。
イギリスの「The Guardian」の記事では、マリン首相はこう述べています。
私は1日も仕事を休んだことはない。仕事以外の時間ではなく、仕事で評価されると信じたい。
性別にかかわらず仕事ぶりで評価されるのが当たり前なのに、女性に対してはそうではないのでしょうか。
「産休を取った世界初の首相」というレッテル
一方、コロナ禍のニュージーランドを率いてきたアーダーン首相も、リーダーシップへの賞賛に混ざって性別に関して心ない言動に晒されてきました。
アーダーン首相は在任中にこう述べています。
私は優れたリーダーになりたい。優れた女性リーダーではなく。単に(在任中に)出産したことだけで知られたくはない。
アーダーン首相が、任期中に産休を取った世界初の首相となったのは事実。でも、その事実だけがフォーカスされて実際の仕事や業績が二の次にされるとしたら、どうでしょうか。
また、アーダーン首相が1月19日に辞任を発表した際、BBCワールドニュースは「Jacinda Ardern resignation: Can women really have it all?(ジャシンダ・アーダーンの辞任:女性がすべてを手に入れるのは無理なのか)」という見出しのツイッターを投稿、批判を受けて後日謝罪しています(投稿も削除されたそうです)。
男性のリーダーが辞任する際に、「男性」がその理由として取りざたされることはありません。