会社の外でも「自分は通用するか」を見つめ直す
さらに、今の自分のスキルが会社の外でも通用するものかどうかを見直すことも重要だといいます。
たとえば、社内の人的ネットワークを使って問題を解決することを得意としている人なら、転職して人間関係が一新した瞬間に、その方法は使えなくなってしまいます。
今の会社にいるからこそ持てている強みを捨てたときに、自分個人にどんな能力があるか、会社の外で求められている能力と自分の能力はフィットするのかをリサーチすること、つまりマーケットにおける自分の現在地を知ることがスタートだと石原さんは強調します。
会社員はどうしても、会社という文脈のなかに閉じ込められて視野が狭くなりがちです。多くの人は、自己否定をしたくないので「自分は結構イケているはず」と考えると思います。
でも、自分を「イケている」と思わせる原動力が会社によるものだというケースも多いもの。現在の肩書を外しても通用する力は何かを考えることが重要になります。
その際には、自分のスキルがデジタル化が進む世の中でも通用するのかを考えることも重要だと続けます。
たとえば、AIによる翻訳ツールなどは近年目覚ましい進化をしました。ビジネス文書の翻訳というスキルに対するニーズは確実に下がっています。
今持っているスキルが10年後や20年後も必要とされるものなのかを考え、今のスキルを補う力や、他のスキルを掛け合わせることも考える必要があります。
自分の現在地を踏まえながら、そこにどんなデジタルスキルを掛け合わせるとキャリアにおける強みとなるのか、それを考えたうえでどんなスキルを身に付けていくのか。それを考えることでしか「自分のリスキリング戦略」は見えてこないのです。
後編では、リスキリングをしながら、それをどう自分のキャリアにつなげていくのかについてお聞きします。
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石原直子(いしはら・なおこ)

銀行、コンサルティング会社を経て2001年からリクルートワークス研究所に参画。人材マネジメント領域の研究に従事し、2015年から2020年まで機関誌『Works』編集長、2017年から2022年まで人事研究センター長を務めた。2022年4月、株式会社エクサウィザーズに転じ、はたらくAI&DX研究所所長に就任。専門はタレントマネジメント、ダイバーシティマネジメント、日本型雇用システム、組織変革など。著書に『女性が活躍する会社』(大久保幸夫氏との共著、日経文庫)がある。近年は、デジタル変革に必要なリスキリングの研究などに注力する。