よりよい人生、よりよいキャリアを望むなら、今避けて通れないのが「リスキリング」。ただ学び直すだけでなく、変化の激しいこの時代に必要とされ続けるために新しいスキルを身に付ける、いわば「自分自身をアップデートする」ことです。
そのためには、自身が現在持っているスキルや経験を見つめ直し、その価値を高める分野を見極めて学ぶこと、つまり「リスキリング戦略」も重要になってきます。
学び方自体も書籍やセミナーだけでなく、SNSやオンライン講座はもちろん、さまざまなテクノロジーを活用した「新しい学び方」が広がりつつあります。この特集では、「自身の価値を最大限に深化させる学び方」をご紹介します。
最終回は、リスキリングの専門家として活躍しているエクサウィザーズはたらくAI&DX研究所所長の石原直子さんに、ビジネスパーソンが今取り組むべきリスキリングとは何か、自分のスキルに合わせたリスキリング戦略の作り方についてお聞きしました。今回は前編です。
▼後編はこちら
リカレント教育とリスキリングの社会的背景の違いとは
リスキリングが注目される以前から、学び直しを意味する「リカレント教育」という言葉が使われていました。同じようなものととらえられがちですが、石原さんは「その社会的背景が異なる」と指摘します。
リカレントとは、繰り返し、交互に、という意味の英単語で、それを使ったリカレント教育(リカレント学習)というのは北欧で広がった概念です。
「学習する」と「働く」を交互に繰り返しながらライフキャリアを構築しよう、という意味で使われています。
実際に、北欧では社会人としてある程度働いた後、一度仕事を辞めて大学院などで学び直し、新たなスキルをもって同じ職場、もしくは新たな職場でこれまでより高い給料で働くというスタイルが可能な社会システムがあります。
リカレント教育が「職業能力は会社の外で身につけるもの」という認識のもとに生まれた概念であるのに対し、日本では新卒で一括採用した人材を会社で育てるという意識が強いため、日本の働き方においてリカレント教育がそのまま適用できるとは限らないといいます。
これに対して「リスキリング」という言葉は、「新しい職務や職業に就くために必要な新しいスキルや知識を獲得すること」という意味で使われます。
特に近年では、デジタル時代に大幅に職務の内容が変わったり、新たな職業が生まれることに対応することにフォーカスした、デジタルスキルやリテラシーを高めること、といった狭義的に使われることが増えています。
デジタル時代のビジネスの変化が起きて、人々に求められる職業能力も大きく変わっています。それに備えていなければ、会社は今は必要としていないスキルを持った人材を抱えることになります。
あるいは、その人たちを大量に解雇することになり、今の時代に必要なスキルを持っていない失業者で街があふれてしまう可能性もあります。
そういった状況を回避し、デジタルが様々な変化を促す時代にも生き残っていけるスキルを身に付ける必要がある、ということで注目されているのがリスキリングなのです。
石原さんは、ビジネスパーソンに必要なリスキリングには大きく3つある、と話します。