得意を伸ばすか、苦手を埋めるか
——個人がリスキリングを続けていくうえで、大切なことを教えてください。
リスキリングをする際、「自分の得意分野を伸ばす」という考え方と「自分の苦手分野を補完する・埋める」という考え方があります。
私は、リスキリングを進めていくうえで、「自分の強み×デジタル」や「自分の強み×グリーン」というかたちで、自分の強みをベースに掛け算でリスキリングをやっていく必要がある、と考えています。
やりたくないのに「AIの講座を3カ月間受けてください」と強制されても、自分ごとにはなりません。一説にリスキリングの成果が出るまで12カ月から18カ月かかると言われています。つまりコツコツやる必要があるわけです。そうすると嫌々するのではなく、「自分は将来、どういう仕事に就きたいのか」ということと直結していないと続けられません。
そのため、まずファーストステップは自分の評価から。「自分は何をやりたいのか」「自分のキャリアは何か」「自分のスキルは今、何があるのか」など、まずは自分を評価するところからスタートするのが鍵になるでしょう。
あと、やはり1人だと挫折してしまいがちなので、一緒に取り組む仲間や折れそうになった時に支え合える仲間がいると継続しやすくなります。
リスキリングは、将来を明るくするための生存戦略

——リスキリングの一歩を踏み出そうという読者に、アドバイスをお願いします。
「リスキリングは生存戦略だ」と、私は考えています。
極論ですが、あなたの今の仕事が「10年先・20年先もそのままで、今のままで大丈夫」という方はリスキリングは不要かもしれません。でも、あらゆる場面でAIやロボットと一緒に働く時代はすでに来ています。収入アップを見越してキャリアを考える場合、デジタルやグリーンのスキルは避けては通れません。
つまり、ビジネスパーソンが個人としての生き残り、生存戦略としてのリスキリングに取り組んでいく必要があるのです。
その取り組みは、早ければ早いほど良いでしょう。なぜなら、外部環境がどんどん変化しているからです。今の段階から将来を見据え、会社や周囲の環境を活用してリスキリングを進めていくことが重要です。
あと、もう1つお伝えしたいのは「リスキリングは貯金」という考え方。
新しいスキルを貯金のように身に付けていくことによって、将来が明るくなる。リスキリングによる蓄えがあることで、将来に対する不安や焦りを払拭することができると私は考えています。
まとめ:リスキリングで学ぶべきテーマ・ジャンルや、続けていくうえで大切なこと
- 学ぶならキャリア・給与アップにつながるスキルが良い。また、今おすすめのジャンルはデジタル、そしてこれから需要が増すであろうグリーンスキル。
- リスキリングをするうえで大切なのは、自分の強みとなにを掛け合わせるか。そのためにも自己評価をまず行なうべき。
- リスキリングはビジネスパーソンにとっての生存戦略。早い段階から、将来を見据えて進めていくことが重要。リスキリングの蓄えがあれば、将来の不安や焦りを払拭できる。
後藤 宗明(ごとう むねあき)

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事/SkyHive Technologies日本代表
自身のリスキリング経験を活かし、現在は日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行なう。著書に『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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Source: 一般社団法人 ジャパン・リスキリング・イニシアチブ, Amazon