映画は時代を色濃く反映します

だから、古い映画では特定の人種が虐げられていたり、ステレオタイプを押し付けられていたり、近年の映画ではアップデートされた社会通年が描かれていたりします。「男性は主役で女性は男性のサポート役」というステレオタイプも長く横行していましたね。

それが変わってきた背景にいるのは、勇気を持って訴え続けた人たち。そして、そうした声の中には、作品づくりにおける「基準」になったものもありました。

というわけで今回の記事では、本日の国際女性デーに合わせて「映画の中で描かれる女性」について語っていきたいと思います。

自信を持ってオススメする面白い作品ですし、仕事や実生活にも役立ちそうな要素もピックアップしてご紹介します。

女性が描かれる作品に関わる「ベクデル・テスト」

「ベクデル・テスト」という言葉をご存知でしょうか。これは、映画に登場する女性がどのように描かれているのかを測る基準で、以下の3つのルールがあります。

  1. 女性キャラクターが2人以上出演している
  2. その2人が互いに会話をする
  3. 話題は男性以外のものである

漫画家のアリソン・ベクデルが1985年に提唱し、彼女の名前にちなんで「ベクデル・テスト」と呼ばれています。

なぜこうした基準ができたのかというと、かつての女性の登場人物は、男性のサポート役ばかり。男性に守られたり、男性を待っていたりするタイプがほとんどだったからです。

女性の社会進出が進む中で、物語の中でも血の通った1人の人間として存在感を発揮させてほしい、そのほうが作品として面白い、と考えられるようになりました。

では、どんな作品がベクデル・テストをパスしているのでしょうか?

ベクデル・テストをパスした作品。描かれたのはどんな女性たち?

1. 『アナと雪の女王』(2013):自身の自立や社会的立場に立ち向かう

意外かもしれません。

ディズニーは長いこと「男性に選ばれる女性」を描くイメージがありましたが、実は『ポカホンタス』『ムーラン』『ターザン』などに見られるように、古い作品でも自立した女性を描いてきたのです。

アナと雪の女王』は姉妹愛を描いた映画と言われる通り、アナとエルサが話す内容はお互いのことや家族愛について。男性に関する話で盛り上がっているシーンはほとんどありません。

2. 『ドリーム』(2016):能力でポジションを確立する

天才的な計算能力を持つ“計算手(コンピューター)” と呼ばれた黒人女性たちが、NASAの有人宇宙船の打ち上げに大きく貢献した実話をもとにした映画『ドリーム』。

有色人種というだけで差別されていた時代に、女性たちが明晰な頭脳で自分達のポジションを確固たるものにしていった様子が描かれています。

手動で計算していたところにIBMのコンピューターが導入され、失職の危機に直面した人々の様子は、AIの導入に悩む現代人にとってヒントになるかもしれませんよ。

なお、本作の時系列は事実に基づいていない部分が多々あります。

たとえば、映画の中のNASAは、有色人種の女性がぶつかる壁を理解し、積極的に取り払う努力をしていて、それが作品の見せ場にもなっています。しかし実際には、この作品の設定時代とされているよりも前からトイレ問題などはなかった、と主人公のモデルとなったキャサリン・ジョンソン本人が証言しているのです。

調べてみると、NASAは人権の面で前衛的だったことがわかるので、鑑賞後に照らし合わせてみるのも面白いかもしれません。

3. 『ハンガーゲーム』(2016):人の心をつかみ生き残りを勝ち抜く

貧困格差が極端に広がった未来のアメリカを舞台に、12歳から18歳の男女1人ずつ、合計24人の選ばれし若者たちが、最後の生き残りをかけて死闘を繰り広げる『ハンガーゲーム』。

ジェニファー・ローレンス演じるカットニスは、プレイヤーとして選ばれてしまった12歳の妹に代わり、デスゲームに志願。生き残りをかけた戦いに年齢も性別も関係ありません

最終的に生き残るのは、群衆の支持を得た者になりますが、人の心をつかむ方法や自分のペースに巻き込む流れづくりといったスキルは、学ぶことが多いでしょう。

4. 『エイリアン2』(1986):経験から得た知識で人を導く

『エイリアン』(1979)のラストで唯一生き残ったリプリーが、行方不明になった157人の入植者の安否を確認するために、小惑星「LV-426」に植民地海兵隊の一員として派遣され、再びエイリアンと対峙する物語を描いた『エイリアン2』。

ベクデル・テストの漫画が発表された際に、本作が唯一テストをパスした作品だと書かれたことで有名です。

男性社会の中で、女性というだけで軽く扱われるリプリーですが、経験をいかしてエイリアンとの戦闘法を考え、弱気になる男性らを鼓舞します。年齢や性別にかかわらず、経験者の発言には耳を傾けるべきだと感じられる作品です。

5. 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015):チームで結託し、運命を切り開く

独裁者イモータン・ジョーの元から逃亡し、「緑の地」を目指すフュリオサ大隊長と5人のワイブス(イモータン・ジョーの出産母体たち)。

途中から、ジョーの血液袋(輸血が必要な時に新鮮な血を提供する存在)として捕縛されていたマックスと手を組み、ジョーが築いた社会と砦を奪って運命を切り開きます。

こう書くとあっさりしていますが、疾走感と退廃的なビジュアルと、人を人とも思わないコンセプト(血液袋とか)に圧倒されること間違いないでしょう。

同作のフュリオサ大隊長は、カリスマ性のあるリーダーの代名詞のような存在。計画がダメだったと分かってからの立て直しや、妊娠中であるワイブスへの理解や感情のコントロール、決断力と行動力は、1人の人間として見習いたいことばかりです。


ここに挙げたのは、どれも高く評価されて興行成績的にも大成功を収めた作品たち。

ベクデル・テストをパスしているから、といった理由だけではなく、どの登場人物も性格や背景が詳細に練られており、深みがあって魅力的という共通点があると思います。

ちなみに、今回はベクデル・テストをメインに紹介しましたが、マコ・モリ・テストというのもあります。

これは、『パシフィック・リム』シリーズで菊地凛子が演じた「マコ・モリ」というキャラクターにちなんだテスト。以下のような条件が当てはまります。

  1. 映画またはドラマに、最低でも1人の女性キャラクターが出演している
  2. 独自のプロットアーク(話の曲線)を持っている
  3. プロットは男性キャラクターのプロットアークをサポートするためだけに存在するわけではない

『パフィシック・リム』シリーズは、ベクデル・テストはパスしていないものの、マコ・モリという魅力的なキャラクターを生んだことは高く評価されていますよ。

ベクデル・テストやマコ・モリ・テストを知っていると、映画をより一層楽しめると思います。それ以前につくられた作品と照らし合わせてみると、新たな発見も多いかもしれません。

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