ネックスピーカーにはなるけれど…。
ヘッドホン・イヤホンブランドのV-Moda。ローランドの傘下だけあってファンも少なくないと思いますが、その中でちょっと変わり種のヘッドホンが去年登場しました。
イヤーカップの向きを変えることで、ヘッドホンにもスピーカーにもなるという「V-Moda S80」。実は、アメリカでは公式が値下げしており、400ドル(約53200円)から発売1年未満ですでに170ドル(約22600円)まで下がっています。
アクティブノイキャン(ANC)なしだからと敬遠していた米ギズモード編集部が、値下げを機にレビューしてみました。
2022年夏ごろに登場したヘッドホン、V-Moda S80。正直、そんなに注目されなかったなという印象です。値下げした170ドルならと思い、使うことに。
最初に総括すると、スピーカーにもなるというユニークさだけではカバーできない要素があるっていうのが本音です…。

不十分な基本仕様
400ドルヘッドホンなら、流石にこれはついてるだろうと期待する要素がありますよね。
その最たるものがANC。なのに、S80にはこれがない。ないからパッシブノイキャンに頼るしかない。オバーイヤー型のヘッドホン(400ドル)で、全部パッシブノイキャンに丸投げはキツいです。
次に、3.5mmイヤホンジャックがないので、有線という選択肢がなく、接続方法が限られています。
防水・防汗仕様もありません。ヘッドホンなのでワークアウト向けではないものの、夏場の通勤・通学はちょっと考え直しちゃいます。
あと、絶対許容できないのが、ケースが同梱じゃないこと。これは(価格を考えても)あって当たり前と思っている人は多いはずです。ついでに言うと、折りたたみもできません。

ユニークさに寄せすぎ
ユニークなデザインにこだわったのは伝わってきます。アルミと亜鉛素材のパーツがバンドとイヤーカップをつなぐデザインはとても素敵です。
ヘッドホン全体がスリム、特にヘッドバンドは結構薄い。これ、見た目にはプラスかもしれませんが、着け心地はマイナス。
バンドは合皮で覆われていますが、長く着けていると頭に重みを感じます。バンドのパッドが足りないんでしょうね。
イヤーカップはパッドがしっかり入っているので、着け心地は良し。ただ、すぐ熱くなるので汗をかいちゃうし、防汗仕様じゃないからますます気になってしまいます。

イヤーカップはデザイン性を重視して交換可能。好きなカスタマイズを楽しめます。ネジではなくワンタッチ式なのが手軽ですがこれがちょっと緩いような気もしますね。
見た目の良さとスリムさに反して、重いのにはがっかり。355gの端末は長時間利用には向かないかと思います。見た目の美しさを重視した金属パーツが裏目に出たのか。見た目か着け心地か、この選択をヘッドホンで迫られるのはイヤですね…。
カラバリもシックで、合皮と金属パーツも高級感とモダンさがあって、見る分には良いんですけどね。

音、良し!
400mmのドライバー、非常に良いです。ベースも効いててパンチもあるけど、やりすぎ感はなくほかの音域の邪魔もしません。中音は明るく伸びがあります。全体的に音質はとても良いと思います。ただ、高音は低音ほどはないので、トレブル好きには刺さらないかも。
スピーカーにもなるけれど…
これです。S80最大の個性でありウリは、ネックスピーカーになること。首に掛けてイヤーカップをくるっと回転させることでスピーカーにもなります。
しかし、この最大のウリがそんなに良くない。たしかにスピーカーにはなりますが、音は普通なので感動はないんです。
変わり種だけど実際に使える機能というよりは、注目を集めるためのマーケティング的ギミックに感じてしまいます。このネックスピーカーを実現するために搭載されなかったものがあると思うと残念ですね。
つまり、最初に話したとおり、この最大のギミックには足りないものを補えるほどの力はないということです。

正直に言いますが、ネックスピーカーだけど、スピーカーと謳うには音量が小さい! マックスにしても、ヘッドホンの大きめの音漏れと言いたくなるくらい。さらに、長所であるベースの効きは弱まっちゃう。モヤモヤしかない。
操作感、バッテリーの持続時間、マイク
操作感は良いんです。直感的でわかりやすい。再停止ボタンはマルチ機能で、2回押せば曲スキップ、3回で戻るが可能。長タップで音声アシスタント発動。音量ボタンも同じところにあり、操作エリアがまとまっているのも良し。
バッテリーの持続時間は公式20時間となっていますが、これは音量次第。
マイクは普通。悪くないけど、特筆するほど良くもない。普通。
V-Moda S80は買い?
400ドル(約53200円)ならオススメしません。値下がりしている170ドル(約22600円)でも迷うレベル。音質重視ならナシじゃないけど、ANCありのほかの選択肢を検討したほうが良い気がします。ANCなしでこの装着感でこの価格…。
訳: そうこ/Source: Roland
ギズモード・ジャパンより転載(2023.3.17公開記事)