リモートワークやハイブリッドワークには、時間枠にとらわれることなく働けるというメリットがあります。
多くの人たちがいま、こうした「ノンリニア」な働き方のメリットを享受しています。
ノンリニアワークとは?
ノンリニアワークでは、仕事をこなして、上司の期待に応えながら、自分にいちばん適したタイミングで働くことができます。
たとえば朝型の人なら、朝5〜9時に仕事したあと、ジムで汗を流し、スーパーで買い物を済ませてからミーティングに参加し、また仕事に取りかかる、といった具合です。こうすれば、午後4時には一日の仕事を切り上げることができます。
ノンリニアなスケジュールなら、その人にいちばん都合がいいときに仕事ができます。生産性がもっとも高まっているときに仕事を済ませることになるので、作業効率もアップします。
ノンリニアワークは、新しいコンセプトではなく、ROWE(ロウ)とも呼ばれています。ROWEというのは、Results-Oriented Work Environment(完全結果志向の職場環境)の略であり、2003年にベストバイが試験的に導入した歴史があります。
こうした職場環境は、成果の上げ方ではなく、期待される成果そのものに重きを置く上司がいてこそ、成り立つものです。
私も社会人になったばかりのころ、上司がROWEの支持者だったおかげで、ずいぶん助かりました。彼女は、部下である私たちがオフィスにいなければならない時間帯を決め(水・木の午前9時〜午後3時)、それ以外は好きなときに働かせてくれました。
彼女自身もROWEの恩恵を受けていました。日中に退社して、お子さんの学校の行事に参加したり、ランニングに出かけたり、年配のご両親を訪ねて行ったりしていたのです。
「決まった曜日の決まった時刻には、オフィスにいること。あとは、好きなときに好きなように仕事してくれてかまわない」。ひとことで言うと、それが彼女から私たちへのメッセージでした。
ノンリニアワークで自主性・生産性がアップする
その呼び名がノンリニアワークであれ、ROWEであれ、上司が重視するのは成果です。この働き方をうまく機能させるためには、これがおそらく何よりも重要な点でしょう。
そうすれば、部下は自由を手に入れ、自主性を通してそれを行使できます。いつ仕事するのかを自分で決められるようになります。社員のモチベーションのコアを構成する要素のひとつが自主性であることを考えると、作業効率がアップするのは当然でしょう。
ノンリニアワークに興味がわいてきましたか? もしそうなら、そのことを上司と話し合ってみるといいでしょう。ノンリニアワークには、それだけの価値があります。
この3年間で、世の中も仕事も大きく変わりました。それを考えると、管理職に就いている人の多くが、この働き方にオープンになっていると言えるでしょう。
けれどもなかには、いまだにそれを受け入れようとしない人もいます。もしあなたの上司がそうなら、実際に相談する前に、次のことを確認しておきましょう。
すべての仕事がノンリニアに適しているわけではない
仕事のニーズによっては、好きなときに好きなように働けない場合があります。
コールセンターオペレーターや用務員、医師、看護師、教師など、シフトワークに就いている人の場合は、特定の時間帯に働くことがスケジュールで決まっています。こうしたシフトワークの場合はたいてい、ノンリニアワークが認められません。
接客業もそうです。コンシェルジュ、小売業、人々の間に入ってさまざまなことを調整するプログラムコーディネーターやケースマネージャーなども、働き方の自由度はあまり高いとは言えないでしょう。
要するに、ノンリニアなスケジュールは、どんな仕事にも必ず適用できるわけではないのです。上司に相談する前に、あなたの仕事がノンリニアワークに向いているかどうか、確かめておきましょう。
「できる部下」になる
あなたの仕事ぶりに「むら」が目立つと、ノンリニアワークを上司に申し出たところで、認めてもらえないかもしれません。
普段から「納期を守らない」「会議に遅れる」「メールに返信しない」「間違いが多い」といった場合は、難しくなります。
ならば、仕事のむらをなくして、期待に応えられる人材であることをアピールしましょう。少なくとも3カ月間は頑張らなくてはなりません。
多くの上司は、仕事ぶりが並かそれ以下の部下にはノンリニアワークを認めたがりませんから、「できる部下」になりましょう。頼りがいがあって、信頼できて、使える部下になるのです。
そういうところをきちんと見せてから、ノンリニアワークの話を上司に持ちかけましょう。
テストしてみて、結果を評価する
仕事がノンリニアワークに適していて、あなたの仕事ぶりも申し分ないのであれば、上司に申し出て、ノンリニアワークについての話し合いをはじめましょう。
私たちは一般的に、恒久的な変更ではないとわかっているときのほうが、新しい試みに挑戦してみようという気が起きるものです。上司も例外ではありません。
なので、ノンリニアワークの話を上司に持ちかけるときには、試してみるべきアイデアのひとつとして提案してみましょう。
その際には、1カ月や3カ月など、テスト期間をはっきりと決めてください。テスト期間が終わったら、あなたと上司の両者で結果を評価することも、明確に伝えておきましょう。
あとは、結果を出すことに力を入れてください。
あなたが好きなときに働けるようになることで、上司にはどんなメリットがありますか? あなたにとってのメリットは二の次です。
肝心なのは、上司に、ノンリニアワークを認めてもいいという心の余裕をもってもらうこと。部下に自由を与えると、主導権を失ってしまうような気がして、抵抗感を示す上司もいるからです。
前よりも仕事のスピードをアップさせる、こなせる仕事量を増やす、いいアイデアをどんどん出す。どんなことでもかまいません。ノンリニアワークで良くなる、あなたが上げる成果に重点を置きましょう。
上司とのオープンなコミュニケーションを維持する
ノンリニアワークをはじめる前に、コミュニケーションの取り方について話し合っておくと、成功のお膳立てが整います。
どのように連絡を取り合うべきか、上司と話し合っておきましょう。もしかすると上司は、仕事の進み具合を定期的に報告してほしいと考えるかもしれません。
このアプローチの目的は、あなたがノンリニアという新しいかたちで働くようになっても、少なくとも同水準の成果をキープできるという確信を上司に持ってもらうことです。
さらに重要なのは、「いいように利用されているのではないか」と、上司に思わせないことです。自分の仕事に透明性を持たせることで、上司がノンリニアワークに納得してくれる確率は間違いなく高まるでしょう。