ライフハッカー・ジャパンとBOOK LAB TOKYOがコラボ開催するトークイベント「BOOK LAB TALK」。第28回目のゲストは、『今すぐ結果が出る 1ページ思考』の著者・長谷川晋さんです。
東京海上、P&G、楽天上級執行役員、Facebook Japan代表取締役、そしてMOON-X株式会社起業と、華やかなキャリアを築いてこられた長谷川さん。しかし、営業職からP&Gのマーケティング職に転職した当時は、慣れないプロジェクト進行を前に“ズタズタ”になり、何をしようにもわからないことだらけだったと言います。
そんな長谷川さんの窮地を救ったのが、自ら編み出した「1ページ思考」。このセッションでは上司との1on1、社外ミーティング、本からの学びのまとめといった「1ページ」の実例とともに、そのエッセンスを解説してくれました。
「1ページ」で鍛えられる、思考のプロセス

本書の冒頭で、長谷川さんは「ビジネスの戦闘力」を因数分解しています。
欠かせない能力は、「考え抜いて腹を決める力」と、「ポジティブに人を巻き込む力」。この2つを一度に実現させてくれるのが、長谷川さんが提唱する「1ページ思考」です。
「1ページ思考をワンラインで言うと、『1枚の紙に書くことを通じて思考を整理し、それを共有することで周囲をポジティブに巻き込みながら物事を進めていく考え方やアプローチ』です。
P&Gにはもともと社内メモを1ページにまとめる習慣があり、それをミーティングの武器として磨き上げました」(長谷川さん、以下同)
「1ページにまとめる」技が生まれた原点には、P&Gでの学びがあったと長谷川さんは振り返ります。
営業職から転職し、会議やプロジェクトの進行に大苦戦。藁にも縋る思いで「今日話したいこと」を4行で箇条書きした紙を印刷して持っていったら、いつもと異なり会議が少しうまくいった──それがブレイクスルーのきっかけになったそうです。
「1ページ」にすることで「思考のプロセスが鍛えられる」利点に気づいた長谷川さんは、この方法の汎用性に着目。
社内ミーティングだけでなく、社外との商談、上司や部下との1on1、学びの共有、さらには自分の人生やキャリアの設計へと、「1ページ」の活用範囲を広げていったのです。
仕事の目的は「結晶化」するまで研ぎ澄ませ
長谷川さんによると、「1ページ思考」には2つのステップがあります。
最初のステップは考え方。会議/プラン/プロジェクトの目的を「結晶化(クリスタライズ)」するまで自分のなかで研ぎ澄ますことが重要だと語ります。
「社内提案のようなとき、その提案の目的自体を考えていないことがよくあります。
仕事で何かをやるからには、何か“差分”があるからやるのであって、それは15分の会議でも、1本のメールでも同じ。
それを意識せずにダラダラやるのと、明確に結晶化してからやるのでは、やるべきことの解像度が変わってきます」
次なるステップは、「1ページ」への盛り込み方。多くの要素を「1ページ」に凝縮する作業は、結晶化のきっかけになります。
「このとき、ある意味では逆説的ですが、詰め込まないことが大事です。
ミーティング時間に対して詰め込みすぎると、全体感が伝わらないし、大事なことが漏れてしまう。
これを避けるためにも目的を考え抜き、アイデアを取捨選択して研ぎ澄ますプロセスを強制的に行なうことが、『1ページ思考』の要になります」
情報を取捨選択することで、受け手にとってもシンプルでわかりやすくなり、議論にフォーカスしやすくなるというわけです。
事例から紐解く「1ページ思考」実践編
この日は実践編として、長谷川さんが「1ページ」の事例を共有してくれました。今回はそのなかから、「社外ミーティング」の1ページをご紹介します。
「社外ミーティング」の1ページ

上の資料は、長谷川さんが書籍化のキックオフミーティングのために準備したもの。
セッションに出席していた担当編集者は、「この『1ページ』のおかげで打ち合わせがサクサク進み、効果を実感した」と驚きを語っていました。
「本を出すのは初めてだから、自己開示として自分の背景や思いを語り、書籍化のテーマ候補を挙げました。
自分が専門家ではない領域について、専門知識のある方とキャッチボールをしながらファシリテートするときに有効なフォーマットです」
こうした社外ミーティングでは、相手やその場を「鬼リアル」に想像することが大切だそう。
「打ち合わせの場所に行き、最初の挨拶のときの相手の表情や、用意してきた『1ページ』を手渡す自分まで想像します。
ちょっと恥ずかしいけど『ここはどう思われますか?』『ああ、いい質問ですね』なんて会話までやり切る。
イメージしながら書き直すことで『1ページ』の内容も研ぎ澄まされていきます」
独りよがりな提案になるのを避けるためにも、「本当に緊張してくるくらい想像できなければ意味がない」という言葉に、アスリートのイメトレと同じ凄みを感じました。
書籍では、上記に加えて「社内ミーティング」の事例や、「学びの蓄積」に役立つ1ぺージも取り上げられています。
「1ページ思考」は、修行なしで使える必殺技
長谷川さんは「1ページ」をまとめるにあたり、どのように思考を研ぎ澄ましているのでしょうか。
具体的なプロセスとしては、M&Aやブランディングなどのヘビーなミーティングであれば90~120分、ライトなものであれば30分くらいの時間をかけて、話す内容を想像して設計し、いくつかあるテンプレートに埋め込んでいくといいます。
ここで大切なのは、最初からPCに入力するのではなく、一旦ノートにまとめることです。
「左側には設計図。誰が対象なのか、ミーティング後にどう思ってほしいのか、そのためにもっとも大切なことを3つ書きます。それも踏まえて、どのような情報が必要かのプチブレストを少し入れます。
そして、右側に書くのが実際の『1ページ』。必ず書くのは会議の背景・提案・ネクストステップです。
ここまでを6~7割の粒度で書き、それからPCを開いて、ドキュメントに入力していきます」

セッションの最後、「1ページ思考とは?」という問いに、「いつでもどこでも誰でも使える必殺技」と答えてくれた長谷川さん。
人生が変わるほどのパワーがあるのに、特別なスキル(修行)は何もいらないのが「1ページ思考」のいいところ。
必要なものは紙1枚、気軽な気持ちで明日のミーティングから試してみませんか?
BOOK LAB TOKYOで書籍購入する「BOOK LAB TALK」の記事を見るSource: MOON-X