ライフハッカー・ジャパンとBOOK LAB TOKYOがコラボ開催するトークイベント「BOOK LAB TALK」。第27回目のゲストは、『10年間で1万冊を読破したライフハッカー書評家が厳選 いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』の著者・印南敦史さんです。
「書評はひとつひとつがドア。興味があるならどうぞ、とドアを開けることが自分の仕事」と語る印南さん。
ライフハッカーの大人気連載『印南敦史の「毎日書評」』10年間の集大成として本書をまとめようと思ったきっかけは? ビジネスパーソンの仕事力とコミュニケーション力を高める、おすすめの一冊は? など本との出会いが広がる話題が満載の90分となりました。
「本が読みたいのに読めない人」のためにドアを開けたい

印南さんが本書の着想を得たのは、自著『遅読家のための読書術』の担当編集者との食事会がきっかけでした。そこで「最近、読む本が減った」「本が読めなくなった」と話すのを聞いて、同じ悩みを持つ人が増えているのでは? と感じたといいます。
「本が読みたいのに『何を読んだらいい?』と迷ってしまう人のための、カタログ的な本をつくりたいと思ったのです。
『これを読め』ではなく、『こういういい本があるよ』と提案する入り口になりたい。
ドアを開けた先をどう進むかは読者が決めることです。
もしそのいくつかに興味を持っていただけたら、これほどうれしいことはありません」(印南さん、以下同)
書店にはベストセラー、AmazonにはAIによるレコメンドがずらりと並ぶ今は、逆に本とのセレンディピティが起きにくい時代なのかもしれません。
「本を多く読む」という目標を立てている読者にとって、プロ書評家が捉えた名著のエッセンスに触れられる本書は、格好のガイドラインになってくれるはずです。
仕事で何より大切なのは「やり抜く力」
本書で印南さんは、ライフハッカーの連載で取り上げた書籍を「普遍的な内容を持つもの」という視点で選び直し、6つのテーマ(仕事力・コミュニケーション力・数字力・プロフェッショナル力・ビジネス教養・心と身体の健康)に分類して紹介しています。
このセッションでは「仕事力」と「コミュニケーション力」にフォーカスして、特におすすめの本をいくつか解説してくれました。
6つのテーマのなかで、印南さんがもっとも重視するのが「仕事力」。
「仕事力とは、結局は個人力。
よく“組織の歯車”と言われますが、歯車として力を発揮するためには、個人の個性、知識、能力をどう生かすかという視点が欠かせません」
そんな「仕事力」というテーマから今回、印南さんが紹介してくれたのが、次の2冊。
『GRIT やり抜く力』
印南さんに強い印象を残したのが、ベストセラーとなった『GRIT やり抜く力』。
「やり抜く力の重要な点は、情熱と粘り強さです。
この2つの力は現代ではないがしろにされがちですが、仕事では地道な努力が何よりも大切。
忘れてはならないのが『ひとつの目標に継続的に取り組む力』であることを気づかせてくれます」
▼書評はこちら
『「書くのが苦手」な人のための文章術』
「10年間、毎日書き続けている僕がたどり着いたノウハウ、たとえば書く気が起こらないときの3ステップなどを紹介しています。
裏テーマは『GRIT』と同じで、続けることの大切さです。
書く力=特別な力というのは思い込みで、大事なのは『続けられるかどうか』。
だから、もっと楽に考えたらいい。
それは仕事全般に言えることだと思います」
『「書くのが苦手」な人のための文章術』もまた、印南さんの10年間にわたる執筆活動の集大成。ライフハッカーの連載が、印南さんの「GRIT」そのものであることが伝わってきました。
▼書評はこちら
苦手を「受け入れる」ことからはじまるコミュニケーション術
続いては「コミュニケーション力」のテーマからピックアップ。
今のお仕事ぶりからは想像できませんが、実は「元々、コミュニケーションが苦手だった」という印南さんが、苦手を「受け入れる」ことの大切さを説いた自著『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』を、まず紹介。
『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』
「人は多かれ少なかれ、みんなコミュニケーションに苦手意識を持っているものです。
でも自分がそう思っているだけで、他人から見たらそうでもない場合が多い。
危険なのは、その思い込みが自分の可能性をふさいでしまうこと」
「どうせ自分はコミュニケーションが下手だから」と開き直ったり、「こんなにやったのに評価されない」と人のせいにするよりも、できない自分を受け入れてしまおう──と印南さん。
「20年近く前、著名なDJでもある友人のMacが壊れて、音源をすべて失ってしまったことがありました。
でも彼は『なっちゃった以上は受け入れるしかないよね』とブログに書いていた。
振り返ってみれば、この言葉が発想の転換のきっかけになった気がします。
できないというのは、できるようになる可能性があるということ。
自分の苦手を受け入れたら、次は前進に向けてどう動くかを考えられるようになります」
▼書評はこちら
▼インタビューはこちら
『これだけは知っておきたい「敬語」の基本と常識』
この『これだけは知っておきたい「敬語」の基本と常識』に限らず「敬語や言葉に関する本はできるだけ読むといい」と話す印南さん。
印南さん自身は執筆において、「あなた」という言葉を絶対に使わないように意識しているそう。
「“あなた”は自分と同等もしくは目下の人に使う言葉だから、そう書くと“上から目線”になってしまう気がするんです。
そうやって細かく捉えていくと、言葉ってすごく面白い。
言葉に関する本をどんどん読んでいくと、ひいてはコミュニケーション力にもつながっていきます」
▼書評はこちら
「同じ今日を共有する」ことが、書き続ける力をくれる

セッションの最後、印南さんの連載のタイトルにかけて「毎日書評とは?」と尋ねた編集長・遠藤に、「コミュニケーション」と答えてくれた印南さん。
「僕は書評を通じて読者の方々とコミュニケーションをとっているつもりなんです。
毎日書評は『電車でさらっと読んでもらえたらいいな』とイメージしながら書いているのですが、そんな僕が意図してやっていることと、読者の行動が一致しているとすれば、それは間接的なコミュニケーションと言えるのではないかと」
印南さんの書評の序文には、よく「今日は…」というフレーズが登場します。それは「今日」という時間軸を読者と共有したいから。
誰かと「同じ今日を共有する」というコミュニケーションが、書き続ける大きなモチベーションになっていると話してくれました。
BOOK LAB TOKYOで書籍購入する「BOOK LAB TALK」の記事を見る