大量の情報からアイデアを生み出すコツ

――お気に入りツール(またはアプリ)を3つ教えて。

Instagram、Pinterest、dマガジンです。

視覚情報がメインですが、大量の情報を摂取していて、女性誌も含めて雑誌はほとんど一通り目を通しています。

情報を垂れ流して見ている中で、気になったことはスクリーンショットを撮っておいて、時間がある時に見返して掘り下げて調べてみます。

仕事のためにもなっていますが、子どものころからのクセみたいな感じで。雑誌も昔から大好きでしたし、本屋でいろんな本を読んだり、レコード屋でジャケットを眺めたり、それがいまはInstagramやPinterestだったりしているのかなと。

――大量の情報を見て、それをどう処理していますか?

大量の情報を垂れ流して、自分自身がいま何に心が動いたのかをわかったらそこを掘り下げます。なぜ興味を持ったか、どこに違和感を感じたのかなどを考えて、それを言葉で説明できるように、掘り下げていく。

最初は直感的だったりするんですよ、「なんか気になる」みたいな。それを調べて、物だったら実際に手にしたり、場所だったら出向いて体験してみたりして、なるべく自分の感覚の一部にする。一部になったら、今まで持っていた感覚とミックスしてみたり。

そういったことを繰り返すことで、自分の性質が少しずつ変わっていき知見が広がっていくことが楽しいんです。

――大量の情報に触れるとき、何か意識していることはありますか?

テーマを持って意識して見ているわけではありません。なので、予想外のものに心が動いたりします。僕は、高所恐怖症なのですが、Instagramで高い場所に登る動画を見たときに、「キュー」っとなるなとか(笑)。この高い場所で何かやったらおもしろいんじゃないかとか。

感覚に引っかかったものは、企画になるんです。なぜ気になったのかを掘り下げていくと、本質的なことに辿り着くことが多くて。なぜ惹かれたのか、分解して言語化するのが好きなんでしょうね。

考えすぎた企画は伝わらない

Photo: Yoshiharu Harada
Photo: Yoshiharu Harada

――これまでもらったアドバイスで印象的なものは?

アパレルブランドのデザインの仕事をさせていただいたときに、代表の方が「考えることよりも感じることのほうがよっぽどむずかしいし大事」とおっしゃっていたことですね。

僕も考えることばかりしがちですが、人間の本質や本能の部分を大事にしないといけない

さまざまな企画を考えてきた中でわかったことは、考えすぎた企画は伝わらないこと。映像や写真を見て、感じてもらうほうが何倍も大事です。泣いてしまったり、鳥肌が立ったり、美しさにうっとりしたり、感じてほしいんですよ。大事なアドバイスをいただいたなと思います。

すべてにおいて「余白」が命

――自分の仕事哲学について一言

余白を大切にする」です。

すべてにおいて余白が、大切だと思っています。自分の考えを一方的に伝えて、相手の考える余地をなくすのではなく、受け手が自分なりに解釈できる余白を残したいんです。

デザインの場合なら余白があることで、美しさを際立たせるというだけでなく、一点を集中させて見せることができます。

『THE FIRST TAKE』も、余白を大切にしています。白背景で、説明しすぎない。歌う前後も余白を残しています。そうすることで、受け手側に「このアーティストはこういう人なんじゃないか」と想像してもらえるのではないかと考えています。

大量の情報のインプットから、引き算をして、自分の感覚の一部にしていく。その繰り返しの中で、次の時代の価値となる感覚を見つけ出すことが大事だと思っています。そして最終的には削ぎ落として余白をつくるということ。

デザインにおいても、企画においても、生活においても、余白があることで大事なことを際立たせていくことが好きなんです。

Source: TBWA HAKUHODO, YouTube

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