XRメタバースとWeb3の接点は?
――今後、XRのメタバースとNFTなどのWeb3技術はどう交わっていくのでしょうか?

上野:XR領域のメタバースにしても、Web3にしても、今後どんどん新しいサービスが登場してくると思います。そのときに、それぞれのサービスが交わっていくことが必要になってきそうです。
たとえば、メタバース空間で身につけられるハイブランドのスニーカーを買ったとします。それが特定の事業者が提供しているメタバースでしか使えないとなると、ユーザーとしては不満が残りますよね。
その場合に、スニーカーがブロックチェーン上のNFTとして存在していれば、各メタバース事業者が受け入れやすいんですよ。
メタバースが複数並んでくるような時代になると、交わるポイントも生まれて、ようやくWeb3の価値が見えるようになってくると思います。
山口:XR領域のメタバース同士に関しては、私はそこまで交わらなくてもいいと思っています。それぞれのメタバース空間でカルチャーは違うし、それぞれのアイデンティティでそのコミュニティに所属して自己表現するので、複数存在していたほうがいいんです。
今のSNSでも、TwitterとFacebookではカルチャーが違いますが、それと同じようなイメージで、並行して存在するカルチャーがあり、それぞれの場所で所有するような生き方になっていくと思います。
上野:私もすべてが交わる必要はないと思っています。
とはいえ、完全にバラバラな状態のままにするのではなく、ゆるくつなげていくためにどんな技術が適切かと考えると、やはりブロックチェーンなのかなと感じています。
過渡期を経て、世界が多層化する時代になる
――メタバースとは何なのか、Web3とは何なのか、定義が明確ではないことがわかりづらさを招いている部分もありそうです。

山口:新しいものが普及していく過渡期には、いろいろな人がそれぞれの観点でそれをとらえて語るので、今の状況はある意味健全ともいえると思います。
インターネットが普及していくときにも「インターネットって何ですか?」という問いに対して、プロトコルの話をする人もいれば、そこで生まれる匿名のネットワークの話をする人もいて、実生活に紐付いた実名でのコミュニティの話をする人もいました。
テクノロジーにいろいろな側面があって、それぞれの側面を使いながら事業化をしたり、社会で役立てようとしている段階なので、画一的な定義をすることにはあまり意味がないと思っています。

――そういった過渡期を経て、今後はどう世の中が変化していくとお考えですか?
上野:リアルかバーチャルかという観点でいえば、「どこまでをリアルとするか?」のとらえ方にもよると思います。
たとえば、私のなかではスマホを見ている時間はもうリアルではないと思っているのですが、スマホはまだリアルにいるような感覚も強いですよね。これがグラスを被るようになれば、いよいよリアルではなくなると思います。
現時点でも、起きている時間のほとんどをスマホやPCの画面を見て過ごしているという人はいると思いますが、それはある意味では既にバーチャルの世界で生きているといえるかもしれません。
ただし、ハードウェアもカルチャーもまだデジタル化しきれていない部分が多いので、それが今後置き換えられていくと予測しています。
山口:今までの社会は、でき上がった仕組みのなかでパフォーマンスを出していくことが重視されていました。でも今後は、ゼロから再発明して世界を新しく作ることが、いろいろなレイヤーで実現できる世界になると思っています。
インターネットは世界をひとつにつなげて垣根や距離をなくしましたが、今度はその世界が並列に分散していくことで、新しい世界が生まれていくのではないでしょうか。
価値観や社会の構造的にもそうなりますし、私たちが取り組んでいるリアルメタバースであれば、実空間ですら多層化された世界になっていくと考えています。
街に出ても、一人ひとり見ている風景が異なり、価値観も体験も並行した世界がたくさん生まれてくる。そんな時代になるのではと思っています。
――現時点では結論を出すことはできないし、今後どう広がっていくのかも明確にみえているわけではない。それこそが、メタバースやWeb3の一番面白い部分なのかもしれませんね。
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山口 征浩(やまぐち・まさひろ)

株式会社Psychic VR Lab 代表取締役CEO。20代後半に上場企業の経営を経験し、30代前半はMITでエンジニアリングを学ぶ。2014年「全人類の超能力の解放」を目的にPsychic VR Labを立ち上げ、VR元年と言われた2016年5月に法人化。経営全般を担う。2017年XRクリエイティブプラットフォームSTYLYのサービスを開始し、2018年3次元空間の"超体験"をデザインする実験プロジェクトNEWVIEWプロジェクト始動。2021年末リアルメタバース構想を発表。空間を身にまとう時代の創造をめざす。
上野 広伸(うえの・ひろのぶ)

double jump.tokyo Inc. 代表取締役/CEO。株式会社野村総合研究所にて数々の金融システムの基盤構築に参画。前職の株式会社モブキャストにて執行役員、技術フェローを歴任し、プラットフォーム及びゲームサーバーの設計・開発、スマートフォンゲームの開発基盤の構築を指揮。2018年4月にdouble jump.tokyoを創業。
馬渕邦美(まぶち・くによし)

一般社団法人Metaverse Japan 代表理事、PwC コンサルティング合同会社 パートナー 執行役員
米国のエージェンシー勤務を経て、デジタルエージェンシーのスタートアップを起業、代表取締役社長に就任。事業を拡大しバイアウトした後、米国のメガ・エージェンシーグループの日本代表に転身、4社のCEOを歴任し、デジタルマーケティング業界で20年に及ぶトップマネジメントを経験。2018年にフェイスブック ジャパン執行役員ディレクター就任。PwCコンサルティング合同会社のパートナー 執行役員として日本企業のデジタルトランスフォーメーションを実現させている。
Source: STYLY, マイクリプトヒーローズ, Oasys 撮影: 吉田祥平