種田さんが実践した語学習得法、きほんの「き」
種田さんが実践した29の体験的速修術から、4つを挙げてみましょう。
1. どんなことばも、まず「入門書」から
「ある国語を自分のものにしよう、と決めたら、その語の文法書から読み始めたりせず、やはり入門書からはいるのがよい」と種田さん。
入門書であっても、あまり詳しすぎるものではなく、使われている単語数も1,000〜1,500語程度のもの。ちなみに英語の場合、中学3年までが約2,000語だそうです。
また、「初歩の時代には、初歩の辞書を」と種田さんはすすめています。
2. 最初の1,500語の暗記はていねいに
外国語を学ぶ場合、大切となるのが単語力。
種田さんは、学びはじめに知っておく単語の目安を1,000〜1,500語としています。そして、単語の参考書を買うのではなく、入門書から自分で選び、自分で単語帳をつくって覚えるべきだと種田さんはつづっています。
3. 会話の第一歩は「ひとりごと」
入門書で受け身の学習をしたら、それを活用する学習に移ります。それが「話す」の訓練です。
「話ができるようになるためには、第一に話しなれることである」と種田さん。さまざまな会話の実習法があるなかで、種田さんがすすめるのは「ひとりごと」。
自分の知っている単語を総動員して、妥当な単語を知らないときは、ことばの置き換えによって表現する方法を会得する。どうしても言えないとき、また言えたと思うが疑問があるときは、メモ帳に書いておいて、帰ってから正当な表現法を調べる、という方法をとる。これはたいそう役立つ学習法である。
(『20ヵ国語ペラペラ 私の外国語学習法』198ページ)
4. 「少しずつ毎日」よりは「ガムシャラ→休み」方式
「少しずつでも毎日」という学び方はすでに時代遅れとし、「集中→中休み→集中」のサイクルで学ぶことを種田さんはすすめています。
ムチャクチャに勉強して、完全にアキアキしてしまうところまでゆく。一日に八時間、首っ引きで入門書なり、読み物なりに没頭する。三日坊主に終わってもかまわない。やったことは、なにもかもすっかり忘れてしまってもかまわない。(中略)決してムダにはなっていないことを保証する。プロセスとしては、新しい語学ないしは新しいものという「ショック」に対して、頭を免疫にしたわけである。
(『20ヵ国語ペラペラ 私の外国語学習法』206ページ)
学習に倦怠期がやってきたとしても、本の美しい写真に見入るなどして脱線しながらでも、勉強をつづけること。「そうしているうちに、必ずや、また、あのアキアキした本をあけて見、すべてを見直す意欲が湧きあがってくるものである」のだとか。
これだけ学習意欲の高い種田さんでも、学びに倦怠期があったというのは大きな励みになりますね。
他にも、語学学校や映画での学び、外国人との交際、ラジオやテレビの講座など、あらゆる学び方に物申す種田さん。なかには“カセットテープ”といった時代を感じさせるワードも並びますが、それも現代に置き換えれば問題なし。どれも応用して試してみようという学習法ばかりです。
語学上達のノウハウはもちろんですが、この種田輝豊という人物にも魅了される本書。50年前に20カ国以上の言葉をマスターし、自由自在に操りながら世界で活躍した日本人に思いを馳せてみるのもまた有意義です。
Source: ちくま文庫