クラウドコンテンツ管理サービス企業Boxの最高経営責任者(CEO)を務めるアーロン・レヴィ氏は、「ChatGPT」を恐れていないと言います。そして読者のみなさんも、恐れる必要はありません。
レヴィ氏には、テクノロジーの大転換を予測してきた実績があります。そのレヴィ氏によると、ChatGPTのような生成系AI(ジェネレーティブAI)は、テクノロジー業界に最大級のインパクトを及ぼす領域になるとのことです。
最近のツイッターへの投稿で同氏は、「まったく予想外のところから、新たなイノベーションや、ディスラプター(破壊的な変革をもたらす人や企業)の大波が押し寄せる」現象が、まもなく起きるだろうと予測しています。
テック業界におけるプラットフォームの移行期は、まったく予想外のところから、新たなイノベーションやディスラプター(破壊的な変革をもたらす人や企業)の大波が確実に押し寄せてくる、と言うことができる唯一の時期だ。
90年代には、ウェブでこうした現象が起きた。2000年代は、クラウドやモバイルがその時期を迎えた。そして今は、AIにこれが起きようとしている。
そのレヴィ氏が今回、Inc.の取材に応じ、AIによる破壊的な変革の波に乗るために、私たちが知っておくべきことについて話してくれました。
すべてのソフトウェアに影響を及ぼす生成系AIの衝撃
生成系AIは、2022年に飛躍的な進歩を遂げました。
「ChatGPT」の登場でにわかに知名度が上がったこの新たなタイプの人工知能は、すでにあるデータを処理するだけにとどまりせん。独自の個性を持つアート作品から、本格的な小論文まで、新たなコンテンツを生成できるのです。
この技術的飛躍によって、テック界のリーダーは、以下に挙げる2つの重要な問いへの回答を迫られている、とレヴィ氏は指摘します。
- AIは自社のソフトウェアで、重要な、あるいは意味ある役割を担うだろうか?
- AIは、自社の顧客に対する最終的な価値提案に変化を及ぼすだろうか?
レヴィ氏は、早ければ2023年内にも、重大な変化が起きるだろうと予測しています。
データ分析企業のCBInsightsによると、生成系AI関連のスタートアップ各社にはすでに26億ドル(約3385億円)が投じられており、ニッチな分野ながら、投資額は今後急激に増加するとの見方を示しています。
つい先日も、MicrosoftがChatGPTの開発元であるOpenAIに、総額100億ドル(約1兆3000億円)を投資するとのニュースが飛び込んできたばかりです。
企業のAI導入には、新たな人材が必要
各社は、生成系AIを自社の事業にどう活用するかを見極めるために、この技術の専門知識を持つ人材を必要とするようになるでしょう。
企業が回答を見つけなければならない問題の例として、レヴィ氏は以下のような問いを挙げます。
使うべき適切なモデルは何だろうか?
使用事例を踏まえて、選んだモデルの利用を促すための適切な施策とはどのようなものだろうか?
さらに、このモデルを自社のソフトウェアにどう応用していけば良いだろうか?
採用のニーズはそれぞれの会社によって異なるものの、チームにとって不可欠な、特定の資質があるとレヴィ氏は指摘し、こう語りました。
起業家精神を持ち、ほかの人と比べて根気が強く、ひたむきさを持つ人材が、この環境では大きな価値を持つでしょう。
APIがカギを握る
生成系AIの特性をフル活用するためには、APIがカギになる、とレヴィ氏は見ています。
「アプリケーション・プログラミング・インターフェイス」の頭文字を取ったAPIは、異なるソフトウェアプログラムやプラットフォーム間でのやりとりを可能にする短いコードです。
Amazon、Google、さらにはChatGPT開発元のOpenAIといったテック系企業が提供するAPIを使えば、自前のモデルを構築する手間をかけずに、すでに存在する生成系AI技術を活用することができます。
その結果として、この新しいAI時代に、より多くのイノベーションのチャンスが生まれるでしょう。
Source: Twitter, CBInsights, The New York Times
Originally published by Inc. [原文]
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