よりよい人生、よりよいキャリアを望むなら、今避けて通れないのが「リスキリング」。ただ学び直すだけでなく、変化の激しいこの時代に必要とされ続けるために新しいスキルを身に付ける、いわば「自分自身をアップデートする」ことです。

そのためには、自身が現在持っているスキルや経験を見つめ直し、その価値を高める分野を見極めて学ぶこと、つまり「リスキリング戦略」も重要になってきます。

学び方自体も書籍やセミナーだけでなく、SNSやオンライン講座はもちろん、さまざまなテクノロジーを活用した「新しい学び方」が広がりつつあります。この特集では、「自身の価値を最大限に深化させる学び方」をご紹介します。

第2回にご登場いただくのは、オンラインプログラミング学習サービスを運営するCODEGYM代表であり、多くの社会人のリスキリングを支えてきた鶴田浩之さん。リスキリングがなぜ重要視されているのか、リスキリングとしてプログラミングを学ぶことで、どのような世界が広がるのかについてお話を聞きました。今回は前編です。

▼後編はこちら

30代未経験でエンジニアに転職。コードジム卒業生に聞く「リスキリング」をキャリアにつなげる秘策 | ライフハッカー・ジャパン

30代未経験でエンジニアに転職。コードジム卒業生に聞く「リスキリング」をキャリアにつなげる秘策 | ライフハッカー・ジャパン

世界で起きはじめている“21世紀の教育格差”

——まず、改めてリスキリングの定義について教えてください。また、なぜリスキリングが必要とされているのか、鶴田さんのご見解は?

私たちが会社を設立した2019年頃は、「リカレント」という言葉がよく使われていましたが、この2年くらいで、それに代わって「リスキリング」が広く認知されるようになりました。

リカレントは、個人が主体的に大学などのアカデミックな場に戻って学び直し、別の職種に就くことを意味する言葉として使われることが多い。一方、リスキリングは必ずしも異業種への転職を前提とはせず、所属先の企業のなかで行なわれるケースも含まれます。

たとえば、カスタマーサクセスの業務に携わる人が、エンジニアとより円滑なコミュニケーションをとるために学ぶといったように、自身の職域を広めることが目的の場合もあれば、DX人材の確保などの人事戦略の一環として、企業主導で行なわれるケースもある。

リスキリングは、大学に戻って学び直すというより、「この時代をサバイブしていくために必要なものは何か」が出発点になっているのがリカレントとの違いと言えるかもしれません。

——個人が働いていくうえで、なぜリスキリングが必要なのでしょうか? 現状維持ではダメな理由は?

“21世紀の教育格差”と呼んでいるのですが、テクノロジーが高度に発展された社会の中で、勉強そのものに関してメジャーアップデートが必要な時代です。

となると、21世紀、これから2030年以降に向けては、2つの観点でこれまでと全く違った意味での教育格差が起きると私は考えています。

これまでの教育格差は、貧困など教育を受ける機会・環境が主な要因となっていましたが、今後訪れる教育格差は、複雑なテクノロジーで多層化された社会で、「目に見えないもの」を扱える人と、扱えない人の間で広がっていくと予想しています。

たとえば、スマホの中でどんな処理が行なわれているのか、ソフトウェアはどんな仕組みで動いているのか…といったことを、多くの人は意識せずに生活しているでしょう。

今後、技術の発展が続くと、高度に多層化・ブラックボックス化された産業が広がっていくなかで、「目に見えないもの」=「抽象化されたもの」を自分の中で理解して扱えることが、多くの人に求められるようになっていくはずです。一般的には、論理的な思考力、ともいえると思います。

今、「リスキリングのためにとりあえずAIを学ぶ」人も増えているでしょう。ただ、高度化された「目に見えないもの」の代表格(=要するに、「よくわからないもの」)がAIということを考えると、その選択は適切と言えるかもしれません。

これまでの電子ビットによる情報革命ももちろんですが、AIを含めた「目に見えないもの」、よくわからないものを理解しようとすることが、21世紀の教育格差について考えるうえで大切な観点だと感じています。

もう1つは、「主体性を持って学ぶことができるか」が、“21世紀の教育格差”を考えるうえで重要な観点です。

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モチベーションは自分でつくるもの。目を向けるべきことは?
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