折りたたみたいのにたたんでない

そろそろイケるのではと思っていました、折りたたみスマートフォン。でも高い。いきなり飛び込むには高すぎる。

なので、ギズモード編集部で購入したGalaxy Z Flip4をこれ幸いと数カ月借りて使ってみました。

結論から言うと、買いません。理由は、スペックやプロモ動画、人の使い方を見て想像していたのと自分のリアルな使い方がまるで違ったからです。

いや、絶対買わないのではなく、「まだ」買わない。使って感じたモヤモヤが、ある日一気に解消されそうな気もするからです。

モヤモヤするのは、気がついたら折りたたんでなかったから。…なんでなの?

良い感じの角度で開いておきたいのに、影ができちゃう

手に馴染む好きな角度
手に馴染む好きな角度

完全に盲点でした。

Z Flip4は、ヒンジが固めで好きな角度で止めておくことができます。手の収まり感とデスク上に置いた時の画面の見やすさから、個人的には110度から130度くらいの状態が好き。

…なのですが、それだとスクリーンの上半分と下半分で色が変わってしまうという問題が発生します。

下の画面が暗く見えてしまっている
下の画面が暗く見えてしまっている

もちろんスクリーンに表示される色は同じです。角度に差があることで見え方が変わったり、下半分に影が落ちて暗くなってしまいます

画面の上下をわけてメールを作成するといった場合には気になりませんが、InstagramやTikTokなどを全面表示で見ていると上下の色の差が気になって仕方がありません。

顔がちょうど折り目のところにきて曲がって見える。全画面で視聴しているなど、スクロールできない状況だとかなりツライ。
顔がちょうど折り目のところにきて曲がって見える。全画面で視聴しているなど、スクロールできない状況だとかなりツライ。

絵が曲がる問題というのもあります。手にフィットしやすい角度でコンテンツを観覧していると、折り目のところに絵がかかって気になってしまう。

YouTubeやTikTokなどの動画コンテンツで演者の顔が画面中央にあって曲がっているとどうにも我慢できず、180度開いた状態で使うことに。

折り目そのものは、コンテンツに集中すると気にならないのですが。

上の画面が下の画面に写り込んじゃってる
上の画面が下の画面に写り込んじゃってる

使用環境によっては、上下どちらかの画面に映り込みまくることも。自分好みの角度で使っていると、窓や照明、コンテンツ自体が上下どちらにも映り込まない、見やすい位置を見つけるのが少々難しいという。

とてもじゃないけど片手では開けない

片手でも強めにグイっと押し上げたら開きはするのですが…。180度開くには何度か握り直さなきゃダメだったりもします。 余談ですが、このネイルの前にしていたネイルはチップタイプだったのですが、こんな風にグイっとしていたらとれてしまいました(画面は無事、強いっすね)。
片手でも強めにグイっと押し上げたら開きはするのですが…。180度開くには何度か握り直さなきゃダメだったりもします。 余談ですが、このネイルの前にしていたネイルはチップタイプだったのですが、こんな風にグイっとしていたらとれてしまいました(画面は無事、強いっすね)。

これはZ Flip4を触って0.5秒で気づくことですが、片手で開閉できません。手の大きさによるとは思いますが、少なくとも私はできません。

やろうと思えば片手でも開きますが、画面にキズがつきそうなんですよね。たとえば爪が伸びているとか、ちょっとパーツついたネイルをしている時に、10万超えの端末の肝であるフレキシブルスクリーンを、爪でグイグイ押す勇気はあるか? という話です。

私は怖いので両手で開けるわけですが…地味に面倒です。ポケットに入って取り出しやすい、それが利点なはずなのに。

片手で完結できないところがどうしても…、どうにも…、こうにも…。両手でヨイショっとして開ける。片手で完結できるiPhoneを出して使うほうがよっぽど速かったりしてしまうんです。

ハンズオンにも書いたように、昔のガラケーのパカパカ感──用もないのに開け閉めしたくなるフィジェットトイ的な良さもありません。

本末転倒なことに、ちょっと大きなバッグを持ってる日は開いたまんま直入れです。…あれ? これ、面倒くさがりには向かない端末なのか?

「完全に折りたたんだ状態」と「完全に開いた状態」が微妙

閉じた状態でも、カメラ横に小さなスクリーンがあるので通知や時間などは見ることができます。…が、この状態でできることはそれくらい。

いちいち開くのは面倒だから、机上などに置いておく時は前述のように110度くらいがベストだと感じたので、完全に閉じているのはカバンの中やポケットの中にある時──ほぼ移動中のみとなりました。

デフォルトのランダム壁紙がどれもめっちゃくちゃかわいい。好き。
デフォルトのランダム壁紙がどれもめっちゃくちゃかわいい。好き。

加えて、完全に開いた時にも気になってしまうところがあったんです。けっこう落とすんですよ。

開いたZ Flip4は通常のスマホよりも長細め。上部の手からはみ出す部分も大きく、頭が重い。ゴロゴロしながら片手で開いて見ていると、何度も落としてしまいました。

あちらを立てればこちらが立たぬスマートフォン

マルチタスク画面は好き。でも、作業しようとすると…。
マルチタスク画面は好き。でも、作業しようとすると…。

なぜこんなにモヤモヤするのかを考えてみると、Z Flip4の魅力・個性・利点がそのまま欠点につながってしまうからだという結果に辿り着きました。

好きな角度でとめておけるヒンジ力という独自の利点は、両手を使わないと開けられないという欠点に。手にフィットしやすい角度は、コンテンツの影や屈折に開いて使えば落としやすい

Z Flip4の良いところを人にプレゼンしようとすると、どうしてもマイナスの影がチラつき尻すぼみになってしまう。「良いとも悪いとも断言できないモヤモヤ感

いざ作業しようとすると、キーボードは画面分割機能を無視した表示に。そんなソフトの問題は今後解決されていくのかな。
いざ作業しようとすると、キーボードは画面分割機能を無視した表示に。そんなソフトの問題は今後解決されていくのかな。

誤解がないように言っておくと、Z Flip4がすばらしいスマホなのは間違いないんです。ただ高価です。

高い理由が折りたたむところにあるなら「じゃあなくていいや」という結論になってしまう。結局、折りたためることに価格を凌駕するほど「好き!」と感動できなかった。

「小さくなるのが正解では?」とZ Flip4を使ってみたのですが、「本当の正解はZ Fold4なのでは?」と思うようになってきました。通常スマホが1/2サイズになるのではなく、通常スマホが2倍になってタブレットにもなるのが正解のような…。

自分のスマホスタイルには正解であると思っていたZ Flip4がイマヒトツで残念に思いつつ、それでも「折りたたみスマホというモノへの期待」は薄れていません。

ソフトウェアとのタッグで、画面の影や屈折など気にならないほど大きな利点が生まれるのでは?」と思ってしまうから。逆に言えば、AppleやGoogleが出さないのであれば、折りたたみスマホというモノには何か根本的な欠陥があるとも思うわけで…。

まだAppleやGoogleが出していないから。結局そこです。

Pixel 7と基本スペック同等で、そこに1万円プラスで曲げられるけどどうする? と言われたら急に良いかもってなっちゃうかも…。やっぱり折りたたみ端末へ謎の期待はあるんです。

執筆・撮影:そうこ

ギズモード・ジャパンより転載(2023.1.27公開記事)