ライフハッカーの特集でも展開中の「リスキリング」。今まさに注目を集めるワードですが、具体的にどうすればいいのか、何をすればいいのか、いまいちピンと来ていない人も多いのではないでしょうか。
リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で求められるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること(リクルートワークス研究所より引用)」とされています。
デジタル化とともに生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わる職業に就くためのスキル習得を指すことが多いようです。
要は企業のDX化を推進する人材になる、育てるということになってきますが、企業の人事担当者も「何からはじめればいいか分からない」と思っている人が多いのが実情。
そんななか、1月18日にDX人材の採用育成サポートに携わる3社が合同勉強会を実施。今回はその中から、DXを推進する上で陥りやすい失敗例や人材の採用・育成におけるポイントなどについてまとめてご紹介します!

経営者、管理職レベルでも3.5割しか知らない「リスキリング」

まず、データを元にリスキリングの現状と課題について解説してくれたのはレバテックの泉澤匡寛・ITリクルーティング事業部部長。
ITエンジニアの採用領域でNo.1シェアを誇る同社がIT法人に対して実施したアンケートによると、「リスキリング」という言葉自体を知っている割合は経営者・管理職クラスでもわずか3.5割。
一方で、半数以上が「社員のリスキリング(学び直し)の必要性を感じている」と回答しています。リスキリング自体はよく知らなくても、「スキルを学び直す」ことの大切さは実感しているようです。
同業界の技術者個人に対しての調査では、こちらも半数以上の社員が「リスキリング」という言葉を認識しておらず、所属企業からリスキリングの機会を受けたことがあるとの回答はわずか11%。
ただ、「リスキリングを受けたい」と回答した割合は6割にも上ったそう!
企業、個人ともにリスキリングというワード自体にまだ馴染みはないようですが、学び直しの重要性は認識している様子。
同氏曰く、個人でリスキリングに取り組む社員は書籍や無料教材に頼ることが多く、充分なサポートが受けられないために、リスキリングになりきっていないケースもあるのだとか。
企業側は学習意欲のある社員の成長機会を逃さず、今後より積極的に学びの場を提供していく必要がありそうです。
リスキリング成功の鍵となる2つのポイント
社員のリスキリングを推進、定着させるコツはどこにあるのでしょうか? 2つの観点からポイントを整理しておきましょう。
リスキリング成功に向けてのポイント
- 参加社員の業務との両立
- 実務活用しやすいスキル習得を優先する
普段はつい業務に追われ、目の前の仕事を優先して時間や労力を費やしがちですが、短期的な利益を生む業務の負荷を減らしながら長期的な投資に踏み切れるか?が重要な視点。
個人単位ではなく、組織全体がリスキリングの重要性をよく理解し、フォローしていく体制も必要でしょう。
さらに、学習者側のモチベーションアップ、学びの継続のためにはまず実務活用しやすいスキルを習得させると良いのだとか。
実務活用が難しいスキル
AI関連知識、技術、高度なデータ分析、セキュリティ技術など
実務活用しやすいスキル
プログラミング、Webマーケティング、クラウド技術、データ解析・分析など
DX推進=高度な知識や技術インプット、と思いがちですが、汎用性が高く、実践で活かせるイメージが湧く内容であれば、学びっぱなしで終わることもなくなるはず。IT業界以外でも、リスキリングの際に意識したいポイントです。
DX推進で企業が陥りやすい失敗パターンとは?

東京大学発のスタートアップ、アイデミーは組織開発から人材育成、実運用まで幅広く企業をサポートする「全社まるごとDX推進パートナー」。同社執行役員の木之内毅氏が指摘したのは「人材育成はDX実現のための土台だと理解する」ことの重要性でした。
よくある失敗パターンとして挙げられるのが、DX実現の具体的な目標を定めないまま、とりあえずDX人材育成を開始してしまうケース。どのレベルに到達すべきか?などの育成ゴールが明確でないため、対象者の学習意欲を継続することが難しくなるのだそう。
DX人材育成を進める上で意識すべきステップは、以下の3つ。
DX人材育成の進め方
- DXビジョン・ゴールの明確化
- 育成ゴールの設定(全体スケジュール、マイルストーン設定、育成後の人材定義)
- 人材育成をアジャイルに推進(想定外・想定不足のリスクを計画に織り込む)
育成後の人材定義をしっかりイメージする
育成ゴールの設定で意識したいのは、一足飛びに高度なスキルを学ばせるのではなく、段階を踏むこと。
そして、それぞれの社員の職種、役割や能力などに合わせた育成イメージを描き、それに照らし合わせたリスキリングの機会を提供することです。
実際の事例として紹介のあったマツダでは、役員・事務系・技術系(エンジニア)に対して直近3年後のゴールを設定しているのだそう。冷凍食品でおなじみのニチレイはグループDX戦略推進に向け、全社員を対象に研修を実施中。
最終的にはこの中から、現場のDX推進や新規事業創出等を推進するリーダーとなる人材を育成することをゴールとして定めているそうです。
一方、中小企業のDX化は大企業より課題が多く、ノウハウ、体勢が整っていないケースも。法人全体でリスキリングに取り組むことが難しい場合、まず社長自身がリスキリングを体験し、自社で使えるかどうかを判断する、といった方法も。
まずは自社に合った導入方法を見極めることがリスキリング成功に向けた最初の一歩です。
次世代のDX化を担うのは高校生⁉︎ スマホネイティブが秘める可能性

人材採用支援会社ジンジブ取締役の河合大輔氏は、DX・IT人材とZ世代人材の親和性に着目。実は、DX推進にはZ世代が大きな可能性を秘めているのだとか!
Z世代(1995年〜2004年生まれ)はいわばデジタルネイティブ。幼い頃からスマホ、SNSを使いこなしているため、どの世代よりも圧倒的にデジタルに慣れ親しんでいます。
LINE、SONY生命が実施したなりたい職業ランキング(男子高校生)ではシステム・ITエンジニアやプログラマーが上位にランクイン。就職先としてこうした領域にチャレンジしたいと考える生徒も多いようです。
ただ現状、高卒の就職先として約半数近くを占めているのが建築業や製造業。現場人員としての採用が多いことが予測されますが、同社はここに「ブルーオーシャンの採用市場がある」と指摘。
デジタルに親和性が高く、この分野に対して就業意向も高い高卒人材に対し、DX、IT人材としてオファーをするという新たな選択肢を提示しています。
ジンジブでは高校卒人材採用支援サービス「ジョブドラフトNavi」のほか、高卒第二新卒、既卒者のセカンドキャリアを支援するサービスを展開。社会人基礎力を学べる講座等を無料提供し、就業後の戦力化サポートにも力を入れているそう。
長期的な視野を持ち、この市場に先手を打っておくことは数十年後の自社の行く末に大きな影響をもたらすかも。現社員のリスキリング以外の打ち手として、有力なDX推進策となりそうです。
DX化、それに伴うリスキリングは個人、企業ともに重要なテーマ。コロナ禍で働き方の概念に大きな変化が訪れた今、学びの機会をコストと捉えず、長期的な視点を持って積極的にリソースを投下していきたいですね。
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