物事に対する私たちの理解は、自分で思っているほど深くはないものです。
自分では何かを「学習した」つもりだったのに、あとになってみると完全には思い出せなかったり、誰かに説明しようと思ってもできなかったり。そんなことは日常茶飯事です。
米Lifehackerはこれまでも、理解した内容を詳しく書き留めたり、議論したりするよう提案してきました。
これに関連して、もっとシンプルで、欠けた知識を埋めるための方法があります。それが「ファインマン・テクニック」です。
このテクニックのもとになったのは、「複雑なトピックをシンプルに説明できないのは、そのトピックをよく理解していないからだ」という、物理学者リチャード・ファインマン博士の持論です。
言い換えると、人に教えることは、学ぶのにいちばんいい方法でもあるということです。
ファインマン・テクニックを使った学習法
ファインマン・テクニックには、次の4つのステップがあります。
- 架空の子どもを思い浮かべて、その子を相手に、複雑なトピックについて教える。
- 欠けている知識は何かを見きわめ、元の資料に立ち戻って、欠落しているところを学習する。
- メモをまとめて、1つのスピーチにする。
- 今度は、実際に誰かに教える。
教職についている人なら、このプロセスは講義の準備とだいたい同じだと思うかもしれません。
自分が担当している科目なのだから、きちんと理解しているとは思っていても、いざ講義のリハーサルをしてみると、確認すべき細かい事柄があることに気づくものです。
あるいは、生徒が質問してきそうなところに気づいたものの、どう答えるのが一番いいのか悩むこともあります。
「物事を簡潔に説明できないのは、そのことを理解していないからだ」とファインマン博士が気づいたのは、大学1年生に向けた講義の準備をしている時でした。
博士のこの考えはその後、さまざまな人々によって広げられ、今では「5歳の子どもに説明できるように」や「頭のいい中学生に説明できるように」と言われるようになっています。
架空の説明相手の設定と注意点
「架空の説明相手」の年齢は、特に決まっているわけではありません。私の知る多くのサイエンスライターはよく、複雑なトピックについて解説する時には、自分の祖母や夫、親友に教えるつもりでいると言っています。
ポイントは、説明する相手の年齢が下がれば下がるほど、話をより簡単にしなければならないということです。ただし、話を簡単にしすぎて、理解すべき重要な詳細をすべて省略してしまうと、これが裏目に出てしまうこともあります。
ワクチンについて、「あなたが病気にならないように、先生が注射してくれるんだよ」と説明すれば、2歳の子どもでも理解できます。
けれども、10歳の子どもが相手なら、ワクチンがどのようにして病気の重症化を防ぐのかを説明する必要もあるでしょう。
また、その効果についての議論も含めたいと思うかもしれません。つまり、「ワクチンを打てば絶対に病気にならない」と保証されるわけではないことについてです。