若者のスマホ中毒を危惧する記事や発言は少なくありません。小学校高学年の子どもを持つ私も、息子のスクリーンタイムが増えていることやSNSを使ったコミュニケーションに不安を感じています。

しかし、大人が心配する以上に、Z世代はスマホから解放されたいと感じているようです

というのも、今、Z世代の中でレトロテックが密かなブーム。特に常時コネクトされているインフルエンサーを中心に、ガラケーの人気が急上昇中らしいのです。

ぱかぱかフォンの魅力は「繋がれないこと」

ぱかぱかフォンを中心とするガラケーが人気な理由は、スマホと違ってできることが限られているから。特に、SNSに繋がれない撮った写真を盛れないといったことが評価されているようです。

CNNは、このZ世代のヴィンテージガジェット回帰を報じた記事の中で、18歳の大学生であるSammy Palazzoloさんの新習慣を紹介しています。それによると、出かける前に友人らとスマホで最新の音楽で気分を上げて、目的地に着いたらスマホを置いてガラケーに切り替えるそう。

ガラケーを持っているのは珍しいため、その場に居合わせる人たちが話しかけてきてくれるし、ガラケーの魅力を伝えることで、より対人関係を大切にする人たちの輪が広がっていると感じているそうです。

また、スマホを持っていると、どうしてもSNSのコメントが気になり、外出中でも目にしてしまい気分が台無しに。しかし、ガラケーにするとSNSを確認できないから目の前のことに集中できる、と利点を紹介しています。

「悪いことは全てスマホからきている。スマホがなければ酔っ払ってテキストを送ることも写真をとって醜態を晒すこともない」と力説したPalazzoloさんのTikTok動画は約330万回再生されています。

共感する人は多く、Z世代の中でガラケーが流行りになっているそう。実際、パカパカフォンのマーケットは、2025年には290億ドルに達するだろうと予想されているようです。

編集疲れのZ世代に人気のアイテムは?

Z世代のスマホ離れで思い出すのが、少し前に話題になったインスタントカメラのリバイバルブームではないでしょうか。ここ数年、昭和や平成初期の文化が若者の中で「エモい」と人気で、マーケットから絶滅の危機にあった使い捨てカメラが見直されています。

ただ、これは単なるエモさからきたブームではなく、“編集疲れ”“盛り疲れ”ひいては“SNS疲れ”が根底にあると考えられるでしょう。「思い出が加工後の顔になってしまった」といった盛り過ぎ写真への後悔を綴ったZ世代のコメントが話題になったのも記憶に新しいはず。

編集できないSNS『BeRealが若者の間で認知度を高めていることからも、あえて盛らなくても(いい意味で)解像度が荒いガラケーやインスタントのカメラは、SNSネイティブのZ世代にとって、さまざまなしがらみや面倒臭さを強制シャットアウトしてくれる味方なのかもしれません。

ニーズの高さとその成長度合いは、2030年までにインスタントカメラ市場が12億3000万ドルになると予測されていることからもうかがえます。

再注目されるiPod

これらの流れを汲んで、再び注目されているのが音楽再生デバイスのiPod。今は音楽再生も写真撮影もスマホに統合されているので、音楽再生にフォーカスしたiPodは市場から姿を消しました。

しかし、スマホを持たない選択をすると、音楽はiPodなどの専用機を用意する必要がでてきます。

つまり、スマホを持たない生活に戻そうとすると、ガラケー(+インスタントカメラ)+iPodというヴィンテージガジェットに逆戻りするというわけ。

このレトロテックブームは、マーケットにしっかり定着するのでしょうか。私も今の生活に疑問を持ったら、最新のガジェット投入で問題を解決するのではなく、かつての生活を思い返してみようと思います。

というわけで、しまいっぱなしになっていたiPod miniの充電ケーブルを購入しました。音楽を新たに取り込む方法がないので、2008年頃に入れた音楽を楽しもうと思います。

Source: CNN, BeReal, TikTok