上司からしばしば、自分に課されているものではない、それほど負荷も多くはない仕事を頼まれることがあります。

こうした要請は普通、「成長できる絶好のチャンス」「チームプレイヤーの一員として」といった言葉とともに語られます。

ただし、引き受ける責任が重くなり、昇給や特別な福利厚生などが伴う、正式な昇進として認められるべきポイントに達する時もあります

そうした時、仕事が増えても待遇が前と同じままなら、あなたは「静かな昇進(quiet promotion)」の犠牲者なのかもしれません。

現状が「静かな昇進」にあたるのかどうかは、どうすれば見分けられるのでしょうか? 価値を認めてもらい、それに見合った給料を受け取るには、どうすればいいのでしょう?

「静かな昇進」とは?

アメリカでは2022年、「静かな退職(quiet quitting)」があっという間に流行語になりました。これについては以前米Lifehackerも取り上げました

職場でこき使われないために。私生活から仕事をシャットアウトする境界線の引き方 | ライフハッカー・ジャパン

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実は、職場には別の「静かな」があります。そしてそれは「静かな退職」よりずっと一般的で、さらに有害です。

それは、「静かな解雇(quiet fired)」です。そして、この「静かな解雇」の裏面にあるのが「静かな昇進」なのです。

確かに、「昇進」という言葉には良い響きがあります。ところが悲しいかな、この「静かな」はいつのまにか、ポジティブな意味合いからネガティブな意味合いへと変化するキーワードなのです。

「静かな昇進」の「静かな」が表しているのは、正式な昇進に伴う責任の増大に対して対価が払われず、評価も与えられないということ。

「今の肩書きでもらっている給料以上の仕事をしなければならない」とプレッシャーを感じる理由は、いくらでもあります。

たとえば、チームが人手不足に陥っている時には、解雇されたり休んでいたりするメンバーの分の責任まで引き受けることを求められるかもしれません。

このような場合、対価が支払われない負担増について、「学べる機会」「自分の実力を示すチャンスだ」といった言葉で飾り立てる上司に対して、きっぱり「ノー」と言うことは難しいでしょう。

では、その「機会やチャンス」が、「搾取」の領域へと入り込んだときはどうすればいいのでしょうか?

「静かな昇進」の対処法3つ

仕事上の責任が大きくなってくれば、「これは、昇進が近いサインかもしれない」と思うのも無理はありません。

ただし残念ながら、書面で昇進の通知を受け取ったのでない限り、それはただの希望的観測にすぎません

幸い、「静かな昇進」の餌食になっているような気がする時にできる対処法があります。

記録を残す

仕事の難易度が上がるばかりで、認められもせず、見返りももらえないことに気がついた。

そうしたら、まずはその現状を記録に残しておきましょう。記録に残しておけば、人事部に不安を訴える時の材料になります。あるいは、将来的に何らかの措置を講じる時にも使えます。

思い過ごしか確かめる

その「静かな昇進」がただの思い過ごしなのか、あるいは、もっと悪質なものなのかを見極めたければ、1対1のミーティングを上司に求めて、相手に不安を直接ぶつけてみることも考えてみましょう。

大きくなった責任について、一度きちんと話し合っておいたほうが、昇進や昇給を求めやすくなります。

はっきり「NO」を宣言する

上記のような機会を得るまでの間は、職場で身につけておくべき、もっとも重要なスキルの1つがあります。それは、仕事を不当に押し付けられたときの断わり方

どこのオフィスでも、有能な社員は、はっきり「NO」とは言わずにうまく断わる術を身につけています。

「すべては相手側の利益を思ってのこと」という形で「NO」をわかってもらう方法については、こちらの記事をご一読ください。


結局のところ、転職を考えるべき時なのかもしれません。

自分が担当した仕事に対して、適正な報酬を受け取るのは当然のこと。仕事をきちんと評価してもらえないなら、「静かな昇進」に甘んじないようにしましょう。