昨年は、米国経済にも働く人たちにとっても激動の1年でした。新型コロナの大流行の影響が残る中、「大離職時代」「静かな退職」といったトレンドが見出しを飾り、懸念する雇用主の関心を集めました。
2022年はほぼ毎月400万人の労働者が離職。今はインフレが激化し、不況が迫っているため、解雇が相次ぎ、経済不安の新しい波がポスト・パンデミックの経済の課題と変化に果敢に立ち向かう労働者に及んでいます。
筆者はハーバード大学の起業家精神とイノベーションの講師として、また人的資本戦略会社の創設者として、労働者、企業、起業家がこの進化し続ける仕事の世界にどのような意味を持たせているのかを最前線で見てきました。
労働者が自分のキャリアのROI(投資利益率)を把握し、仕事が自分の人生にどのように関わっているか再考していることは明らかです。経済的な懸念はあるものの、このマインドセットは今後も原動力となるでしょう。
2023年は、雇用主も従業員も、パンデミックと経済的低迷によって永久に変化した労働力と折り合いをつけるために、仕事の未来にとって極めて重要な年になると私は考えています。
ここでは、雇用主が今後成功してくために理解すべき職場のトレンドを5つご紹介します。
1. ギグワークが主流になる
ギグワーク(単発の仕事を受ける働き方)は、多くの労働者にとって副業をはるかに超える存在になりつつあります。
ギグワークの労働人口の規模は、2027年までにフルタイムの労働人口を上回る勢いです。
ギグワークはサービス業では何年も前から一般的でしたが、現在、いわゆる「スキル・ワーカー」の間でもギグワークが驚くほど増えており、Incredible HealthやDocketlyなどのプラットフォームでは、看護師や弁護士のサービスをオンデマンドで利用することができます。
企業もまた、人手不足、インフレ、景気後退の三重苦に対抗する戦略として、ギグワークを採用するようになっています。
10人に6人の経営者が、今後3年間でギグワーカーが正社員の雇用を大幅に代替するとも予想されています。
2. ワークライフバランスや柔軟性、価値観の共有が求められる
今日の従業員の仕事に対する期待の変化の中心には、多世代労働力の影響があります。
それに伴う文化の変化により、ビジネスリーダーやミドルマネジャーは、従業員との関係や、職場の成功の定義さえをも見直す必要があります。たとえば、若い世代は仕事に関して柔軟性やワークライフバランスをより重視します。
また、高給と同じくらい仕事の意義を求めており、価値観を共有する企業で働くことを望んでいます。現に、倫理的に正しい行ないをすることが、企業にとって価値ある提案になりつつあります。
昨年、Patagonia創業者が、会社の所有権を気候変動対策を目的とした信託に譲渡することを発表したのは、その顕著な例と言えるでしょう。
これからは、人間中心の価値観を実業に取り入れることで差別化を図る企業が増えていくでしょう。
3. DEI(多様性、公平性、包括性)に取り組み交差性を受け入れる
今日の労働者は、公平性と多様性への関心を高めており、従業員と求職者の3/4が、勤務先を決定する際に従業員の多様性を認めていることが重要な要素であると回答しています。
2020年の人種的不公正に対する全国的な抗議行動を受け、企業はすでに近年、DEI(多様性、公平性、包括性)への取り組みを倍加させています。
そして今、これらの取り組みは、多くの複雑で交差するアイデンティティを持つ多様な労働力を反映するために成長し、進化しなければなりません。
これまでDEIイニシアティブは、多様性と帰属意識の促進を目的として、労働者のアイデンティティの1つの要素に基づいた支援を提供してきました。
しかし今、雇用主は、リーダーが従業員の多様な経験や専門性を認め、評価し、活用することで、真の変革が起こることを学びはじめています。
4. 福利厚生を再構築する
2021年、記録的な数の女性が離職しました。その理由の大部分は、家事や育児など家庭に関する負担が男性よりはるかに重いことにあります。
もし、女性が「家事労働」という無報酬の労働に対して報酬を得るとしたら、世界の大手企業50社の合計収益を上回ることになるとも言われています。労働力不足に悩む企業は、多忙で複雑な労働者の生活を考慮し、福利厚生戦略を再構築する必要があります。
実際、福利厚生の見直しは、性別に関係なく、採用・人材流出防止戦略として有効であることが証明されています。
筆者のクライアントであるカジュアル・ファスト・レストランでは、最近、401(k)プランをオプションとし、企業が提供するマッチング資金を従業員が自分に最も有利な方法で利用できるようにしました。
多くの従業員は、この資金を急ぎの住居費や交通費に充当することで、仕事に専念できないような差し迫った障壁を取り除いたようです。
5. 雇用主が従業員の学びをサポートする
2022年版エデルマン・トラスト・バロメーターによると、労働者は高等教育機関より雇用主を信頼しています。
これは、急速に進化する労働力のニーズに対応するのに苦労している大学や専門学校に対する非難であると同時に、雇用主に対する支持でもあります。
雇用主はこの空白を埋めるべく、学費の給付、有給の実習、インターンシップなど、キャリアや収入を妨げずに勉学を促進する手段を通じて、現在雇用している労働者のスキルアップと再スキルアップ(リスキリング)に取り組むことが可能です。
新型コロナウイルスのパンデミックでわかったように、未来を完全に予測することは不可能。でも、いくつかのトレンドは今後も継続することが明らかになりつつあります。
個人がどのように生計を立て、自己と将来に投資していくかという問題は、今後も働く人々の関心事の中心にあり続けるでしょう。
労働者は、家族を養うための賃金だけでなく、自律性や自己安定性、そして仕事の目的を追求するようになるはず。そうならば、雇用主はそうした未来の働き方に今から備えておかなければなりません。
Source: CNBC, Forbes, Mercer US, The New York Times(1, 2, 3), Glassdoor, McKinsey, Edelman
Originally published by Fast Company [原文]
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