『理想の自分をつくる セルフトーク マネジメント 入門』(鈴木義幸 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2008年に刊行された『セルフトーク・マネジメントのすすめ』(日本実業出版社)を改定し、新章を加えた「新版」。
「力は持っているはずなのに、それが充分に発揮できない」ことの原因として、自分の内側における“自分自身との対話(セルフトーク)”に着目しているのです。
気になるのは「セルフトークとはなにか」ということですが、著者によればそれは「人間の感情や行動を左右する『特別なひとり言』」。
たとえば、失敗した相手に対して思わずキレて、感情的な「大爆発」を起こしてしまったという場合、まず最初に「許せない」というささやきが自分の内部で生まれることがあります。
それが大爆発につながるわけですが、「許せない」とささやくのではなく、意識して「なにがあったんだろう?」と相手の背景を知ろうとすれば、大爆発しなくて済む可能性が生まれます。
この場合の、大爆発のスイッチとなっていた「許せない」というセリフ、そして相手への気づかいが込められた「なにがあったんだろう?」という思い、どちらもセルフトーク。
つまり、セルフトークとは、感情や、思考、行動の引き金として、自分の中に生まれる「言葉」ということになります。(24ページより)
エグゼクティブコーチである著者は、こう述べています。この考え方を踏まえたうえで、さらに踏み込んでみることにしましょう。
「感情」のセルフトークAと、「理性」のセルフトークB
著者は本書で、頭のなかに浮かぶセルフトークを「セルフトークA」と「セルフトークB」に分けています。
セルフトークAは、「感情」を呼び起こし、「反応」としての行動を導くセルフトークです。
自分の意思にかかわらず自動的に「生まれる」セルフトークであり、「A」はautomatic(自動的)を意味します。(59ページより)
セルフトークAはさらに、「ポジティブな感情・反応を導くもの」と「ネガティブな感情・反応を導くもの」に分けることができるそう。
つまりネガティブなセルフトークは、少なければ少ないほどよいわけです。
これに対し、セルフトークBは、「理性」を呼び起こし、「対応」としての行動を導くセルフトークです。
セルフトークBは自ら「生み出す」セルフトークです。
Bはbear(生む)のBと覚えてください。
自分の意思で生み出すセルフトークBは原則として有用な存在であり、これをどう利用するかがセルフトーク・マネジメントのポイントになります。(59〜60ページより)
「反応」と「対応」を区別する
セルフトークがAとBの2つに分けられるように、それによって引き起こされる行動も2つに分けることが可能。
「感情」によって引き起こされる「反応」としての行動(感情的反応)と、「理性」によって引き起こされる「対応」としての行動(理性的対応)です。
この2つの違いを意識することは、セルフトーク・マネジメントにおいて重要なのだそうです。
「感情→反応」と「理性→対応」の本質的な違いは、「目的」の有無になります。
引き起こされてしまう「受け身」の行動か、自ら生み出す「積極的な」行動かの違いということもできるでしょう。(63ページより)
「怒るのではなく、叱りなさい」といわれることがありますが、「怒る」と「叱る」の違いは、「反応するか、対応するか」。
他人の言動や出来事に刺激されると、セルフトークAが生まれて「怒る」ことになります。つまり、自分をコントロールできない状態。
対して「叱る」場合には、たとえセルフトークAが生まれ、怒りの感情が引き起こされたとしても、行動を起こす前にセルフトークBによって修正され、理性的な対応となるわけです。(62ページより)
セルフトークをコントロールするためのポイント
本書で解説されているセルフトークへのアプローチは、「変える」「使う」「減らす」「なくす」の4つに分類できるそうです。
1. セルフトークを「変える」
セルフトークは感情や行動の引き金なので、セルフトークを自分の意思で変えることができれば、感情に流されず自分の行動をコントロールできるということ。
2. セルフトークを「使う」
人は無意識のうちに、セルフトークBを使っているもの。しかしそれを意識的に、いくつかの「やり方」を知ったうえで行えば、より効果的に自分の意識や行動をコントロールできるようになるわけです。
3. セルフトークを「減らす」
ネガティブなセルフトークAは、原則として少ないほどよいもの。したがってそれを減らすことは、セルフトーク・マネジメントの重要なテーマだということ。
4. セルフトークを「なくす」
セルフトークを「減らす」ことを突き詰めるとセルフトークAがなくなり、完全に集中した状態になるそう。
つまり、ひとつひとつの方法にこだわるのではなく、トータルでの理解と実践がセルフトーク・マネジメントのポイントだということです。(75ページより)
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こうした考え方に基づき、以後の章ではセルフトークの“変え方”“使い方”“減らし方”が解説されます。
実践的な内容なので、すぐに生かせるのではないかと思います。
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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン
Photo: 印南敦史