共働き夫婦の悩みといえば、家事や育児のシェアをしつつ会社の仕事と向き合うことです。仕事を辞めたくなることも何度もあるでしょう。
しかし、共働き夫婦の苦労は目の前の家計のやりくりや子どもの学費準備だけのためにあるわけではありません。実はリタイアする頃に「共働きしておいてよかったねぇ」と言える日がやってきます。
私たちは誰もが老後のお金の心配をしていますが、「そもそも見当もつかない」という不安が一番大きいのではないでしょうか。
しかし、共働き夫婦をがんばっていると、「老後に2000万円」と言われる自助で備えるべき部分について、すでに一定のメドがたっているかもしれません。
いくつかの条件をチェックすれば不安がずいぶんやわらいでくるかもしれません。それでは考えてみましょう。
専業主婦と会社員モデル「片働き世帯」の老後は

年金の話をするとき、一般的に言われているのは「専業主婦と会社員モデル」です(いわゆる片働き世帯)。これを老後の収入で整理すると、以下の通りに。

※年金は受け取り時にはそれぞれ老齢厚生年金、老齢基礎年金と呼びますがここでは分かりやすく制度名で説明します。
標準モデルではこの夫婦の年金額が合計月22.1万円(内訳は夫15.6万円+妻6.5万円)。これで基本的な生活費をやりくりしています。
総務省の家計調査年報でも「公的年金収入=日常生活費」がほぼトントンになっています。
そして、退職金やリタイアまでに積み上げた定期預金などを老後の旅行や映画鑑賞などに使っています。
現実にも月5万円くらい取り崩しをしており、100歳人生時代には2000万円くらい欲しいというのが「老後に2000万円」の考え方です(誤解が多いのですが、国の年金がもらえないという話ではありません)。
退職金は、会社によって金額が異なりますが2000万円以上もらえるのは上場企業の一部のケースに限られます。
つまり片働き世帯では、もっとプラスアルファの自助努力をする必要があるわけです。
共働き夫婦は「老後に2000万円以上」の価値がある!?

ところが、共働きで正社員だった夫婦ならこのモデルが一変します。

となり、「妻の厚生年金」「妻の退職金」の分、一気に老後の財産や収入が増えます。
まず、毎月の定期収入である「妻の厚生年金」の増額ですが、月6〜7万円くらいになります(子育て期間の時短勤務や賃金状況により男性の厚生年金額より下がると見込んだ概算)。
仮に月6万円、年72万円としても、これだけで標準的な年金生活夫婦の老後の不足額に匹敵します。女性の平均余命(65歳なら25年)を考えると合計1800万円にもなります。
公的年金は長生きする限り、無条件でもらい続けることができるので、女性が自分の年金を増やしておく意義はとても大きいです。
さらに妻も退職金をもらえれば(正社員なら多くが対象となる)、その分の上積みが実現できます。
つまり妻の厚生年金と夫婦の退職金を合計すれば、「老後に2000万円」どころか「老後に3000万円」を準備している、といってもいいでしょう。
できれば、さらにNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を使って老後の積立を行えれば盤石です。
条件は「正社員で共働きを続けること」「家事育児シェア」
もちろん、うまくいくための条件がいくつかあります。
まず「厚生年金に入る正社員」で働くこと。
正社員でなくても厚生年金に加入できる時代になり、老後の収入が増えるようになりましたが、退職金は正社員のみを対象としていることがほとんどです。
そして、W厚生年金+W退職金を実現するためには「女性が正社員を続けられる家事育児シェア」が欠かせません。
家事と育児を男性がきちんと受け持たなければ女性が正社員を続けることは困難です。
男性がひとりで家庭を養うより、共働きで家計をやりくりし、老後の備えもWで実現するほうが賢い選択なのです。
つまり男性は今の2倍くらい家事や育児を担当してみてください(一般的な共働き夫婦の男性の家事育児シェアは2割といわれる)。
夫婦が共働きをがんばるだけの価値はあります。
子どもの学費や住宅ローンを返済しながら(時々ケンカもしながら)日々を駆け抜け、迎えた老後には経済的な余裕が待っているからです。
私はセミナーなどではよく「共働き夫婦は最後に笑う」といってエールを送っています。ぜひ皆さんの家庭でも共働きを続け、最後に楽しい人生をエンジョイしてほしいと思います。
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山崎俊輔
フィナンシャルウィズダム代表。ファイナンシャルプランナー。夫婦で共働き、共家事、共育児しながら子どもふたりを育てている。
Source: 厚生労働省
Image: Shutterstock