少し前までは物珍しかったAI(人工知能)。スマホの音声認識をはじめ、「Pepper」や「aibo」、ロボット掃除機などが浸透した今は、AIのある生活が当たり前になりつつあります。
そんな中、日本におけるAI研究の第一人者が、IBMが運営するWebメディアMugendai(無限大)に登場。「近い将来、人と人との絆と同様に、人とAIとの関係性にも変化が必要になる」と提言しています。
AI研究の進歩は、富士山の高さに例えるなら3合目
インタビューに登場した松原仁さんは、AIが学問として認知されていなかった20年以上前からAIの研究開発に取り組んでおり、現在は東京大学と北海道の公立はこだて未来大学で教授を務めています。
松原さんいわく、AI研究の歴史は60数年ほどと浅く、ブームに沸く時期と、研究が停滞する冬の時代を何度か繰り返してきたのだそう。
アニメ『鉄腕アトム』とフロイトの影響で「人間の知能とは何か」を研究したいとこの道に進んだ松原さん。
当時、日本にはAIを本格的に学べる環境がなかったため、東京大学工学部の大学院に籍を置きながら、研究者仲間と欧米のAI研究の最先端論文を読み、AIに関する洋書を手分けして翻訳しながら独学で学んだといいます。

その間、1997年には、IBMのスーパーコンピューター『ディープ・ブルー』が、チェスの世界チャンピオンに勝利。2006年頃にはディープラーニング(深層学習)が開発されたことで、AI研究は3度目の過熱期に。 そして現在、富士山の高さでいうとようやく3合目あたりに達したと分析しています。
人間の知能はそれだけ偉大かつ複雑なわけです。
だから、AI研究が着実に一歩ずつ進展し、3合目まで達していることもおおいに評価すべきことなんです。
地方でのAI活用サービス「SAVS」とは?
2000年に研究の拠点を北海道・函館市に移した松原さんは、観光都市という華やかな一面とは違った、地方都市における交通の不便さを実感。
地方という「現場」の問題に直面し、2016年にはこだて未来大学発のベンチャー企業「未来シェア」を立ち上げ、「SAVS(Smart Access Vehicle Service)」というサービスを開発しました。
都市レベルでの最適交通の実現を目指し、次のように語っています。
地方都市では多くの人が車で移動します。おのずと公共交通は使われなくなり、運行本数も減り、負のスパイラルに陥ってしまう。
とはいえ、高齢化も進んでいますから、運転をしなくなった高齢者向けの移動手段は確保しておかなければなりません。
そのような現状を目の当たりにして、研究者仲間と立ち上げたのがAIを活用した公共交通サービス「SAVS」です。
リアルタイムに個人のスマートデバイスと車両の運行状況を結び、人・物の移動状況に応じて「便乗」配車を提供します。
いわばタクシー(デマンド交通)と路線バス(乗合交通)の長所を掛け合わせたような交通サービスで、「バスより便利、タクシーより安い」をモットーにしています。

人間とAIが信頼関係を築くためには
今後は一層、人間とAIとの距離が縮まり、一体化が進むだろうと松原さん。そこで鍵となるのが、人間とAIとの信頼関係なのだそう。
人間がAIに対して懐疑的であれば、AIは人間にとって懐疑的な存在にならざるを得ないんです。
人と人とが信頼関係を築く場合も、同様の落とし穴がありますが、まったくその部分では似ているような気がしてなりません。
今はまだ発展途上とはいえ、これからAIはさらに進化します。だとすれば、私たちは、「AIにも心が宿る」と考えた方が、AIとやりとりしやすくなるのではないでしょうか。
ひとりのAI研究者としては、そんな「人間に信頼されるAI」が生まれることを期待してやみません。
「ゆくゆくは自分の一生に寄り添い続けてくれる執事のようなパーソナルロボットも誕生するかもしれない」と話す松原さんが理想とする、AIと人間の未来社会についてなど、続きはMugendai(無限大)にてお楽しみください。
Image: Mugendai(無限大)
Source: Mugendai(無限大)