東京商工リサーチの調査結果によると、2020年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は118件(前年比6.3%増)と過去最多を更新しました。これは人と人との繋がりを分断するとも言われる新型コロナウイルスの影響が一因とされ、大きな局面を迎えています。

そんな中、多世代多文化の人々が交流する介護付きシェアハウスが各方面から注目を集め、その創設者がIBMのWebメディアMugendai(無限大)に登場。 これからの社会における、人と人との繋がりのヒントが語られていました。

「近くのタニン」同士が寄り添う場所に

インタビューに登場したのは、株式会社Happy代表取締役の首藤義敬さん

空き家活用の不動産業を営む首藤さんは、2017年に兵庫県長田区に6階建ての介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」を創設。地域に開放した1階のリビングルームには、入所者である高齢者のほかに、子ども連れの母親や小学生、留学生など多様な人が集い、その数は週にのべ200人にもなるそうです。

多世代多文化の共生を実践し、地域福祉に留まらない「はっぴーの家ろっけん」。 当初、「地域のためというより自分たち(=首藤さんとご家族)のためにこの施設を作った」と言います。

首藤さんは、娘が小学生になったタイミングで同居する祖父母が認知症になり、子育てと高齢者介護が必要な「ダブルケア」の大変さを経験。介護を施設に任せるか、子育てを人に委ねるか、仕事をセーブするかの選択に迫られましたが、「何も諦めたくない」と一念発起。

自分たちが欲しているものは、必ず誰かも欲しているはず」との思いもあり、“遠くのシンセキより近くのタニン”をキャッチフレーズに、地域の人同士が寄り添い合える場所として施設を立ち上げたのです。

ろっけんの家の様子
Image: Mugendai(無限大)

関わる人を増やせばQOLが上がる

「はっぴーの家ろっけん」には「3時間だけ様子を見ていてほしい」と赤ちゃんを預けていくお母さんもいるそう。そんな時は、“そこにいる誰かが面倒を見て、さらにそれを入所者のおじいちゃんが見守る”ということが日常茶飯事。

また、地域でイベントがあるときは、日本語を話せない外国人アーティストが認知症の入所者と一緒にパンフレットを作ることもあるそうです。

介護施設にシェアハウスのようなコンセンプトを取り入れた背景には、どのような思いがあったのでしょうか?

核にあったのは、その人に係る「日常の登場人物を増やす」という仮説です。高齢者の幸せを考えたとき、今の国の仕組みの中でできることには限界があります。

そこで、高齢者だけにスポットを当てるのではなく、その方に関わる人物を増やす。全体として居心地の良い空間をつくることができれば、結果的に高齢者が感じるQOLが上がるという考え方です。

(中略)

認知症のおばあちゃんがいます。クレーマー気質があり子ども嫌いという方で、普通に考えたら、ここはベストな場所ではありません。

ところが今、このおばあちゃんは子どもたちと笑顔で一緒にいます。そのように、関わる人の数を増やすことで変えられることはたくさんあると思っています。

入所者と地域との繋がり
Image: Mugendai(無限大)

新型コロナウイルス感染防止の観点から関わる人が少なくなっていることを受けて、「はっぴーの家ろっけん」では、今関わっている人との繋がりを濃くしようとオンラインでのコミュニケーションにも力を入れています。

「ほとんどの人が自分の理想の暮らしを諦めているが、これからも目の前の人たちの課題解決に繋がる選択肢を増やしていきたい」と話す首藤さん。そのほかにも、地域にもたらした変化や効果などについては、Mugendai(無限大)にて続きをお楽しみください。


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Source: Mugendai(無限大)