早いもので、2020年ももう終わり。今年は新型コロナウイルスの影響で社会の仕組みやワークスタイルが大きく変化したため、生き方そのものを問いなおすことになったという方も多いのではないかと思います。
これまでの“常識”が覆されたのですから、気苦労なども少なくないはず。
しかしその一方、リモートワークが浸透したことにより、以前よりも自分の時間を持ちやすくなったという側面もあるのではないでしょうか?
つまり、読書をしやすくなったと考えることもできるわけです。せめて、そう前向きに考えたいところですね。
ところで、僕がライフハッカー[日本版]で書評を書き始めたのは2012年8月26日です。以来、土日・祝日を除くほぼ毎日書き続けてきたため、この12月で8年4カ月。今年も200冊以上の新刊をご紹介してきました。
そこで2020年最後となる今回も、例年どおり「印象に残った10冊」を厳選してみたいと思います。
なお毎年書いていることですが、これはあくまで僕のセレクトなので、ベストセラー・ランキングに選ばれるようなものとは内容が異なると思います。
なぜなら、そもそもこの連載では1年を通じて、「ライフハッカー読者のみなさんに“刺さりそう”かどうか」を自分なりに考え、それを基準に選書しているから。
「どれだけ売れたか、話題になったか」ということよりも、なるべく読者目線に近いところにいようと考えているのです(簡単ではありませんけれどね)。
ましてやここでは、そこからさらに10冊を厳選しているわけです。
したがって、「ここにしかないチョイス」としての個性は際立っているのではないかと思います。そして当然ながら、いまでも自信を持ってお勧めできるものばかり。
ピンときたものがあったら、この年末休みにでもぜひ読んでみてください。
10位 『「雑草」という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか』
『「雑草」という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか』(稲垣栄洋 著、日本実業出版社)8月25日公開
農学博士の著者が、雑草の生存戦略を人の生き方と紐づけたユニークな書籍。
たとえば踏まれても千切れないオオバコの強さを、人の生き方にも応用できるものとして捉えていたりするわけです。少々こじつけっぽいそのスタンスが、雑草への関心を高めてくれるはず。
9位『だからモメる! これで解決! 男女の会話答え合わせ辞典』
『だからモメる! これで解決! 男女の会話答え合わせ辞典』(男女のすれ違い検証委員会 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)3月2日公開
男女の感じ方の違いは、トラブルにつながりがち。そこで本書では、両者の“違い”を比較しているのです。
買い物が、男性にとって「目的のものを買いに行くこと」であるのに対し、女性は「心ときめくものを探しに行く」ことであるなど、「なるほど!」と思わず笑ってしまうトピックス満載。
8位『子どもの学力が劇的に伸びていく! 1年生になったら紙の辞書を与えなさい』
『子どもの学力が劇的に伸びていく! 1年生になったら紙の辞書を与えなさい』(深谷圭助 著、大和書房)5月7日公開
公立小学校教諭時代に「辞書引き学習法」を考案した著者が、「子どもの教育になぜ紙の辞書がよいのか」をわかりやすく解説した書籍。
子どもに言葉に対する興味を持たせ、言葉の力をつけることの大切さを実感できるはず。辞書引き学習法が自己肯定感につながるという主張にも説得力があります。
7位『サクッとわかるビジネス教養 地政学』
『サクッとわかるビジネス教養 地政学』(奥山真司 監修、新星出版社)9月9日公開
地球全体をマクロな視点でとらえ、世界各国の動向を分析する「地政学」を、わかりやすい文章とイラスト、図版によって解説したもの。
地理的な条件がなぜ他国との関係性に影響を及ぼすのかなど、いまさら聞くに聞けない疑問にも明解に答えてくれています。短時間で読み切れる構成も魅力的。
6位『だれもわかってくれない: 傷つかないための心理学』
『だれもわかってくれない: 傷つかないための心理学』(ハイディ・グラント・ハルヴァーソン 著、高橋由紀子 訳、ハヤカワ文庫)4月17日公開
「自分をいかに人に理解してもらうか」について悩む方は少なくないはず。
そこで本書では、「他の人が自分をどう見ているのか」を理解し、ことばや行動を変化させることで、自分が送りたいシグナルを発信するための方法が紹介しているのです。
原因から解決策までが平易に解説されているので、「伝える」ことに悩んでいる方にはきっと役立つことでしょう。
5位『幸せに気づく世界のことば』
『幸せに気づく世界のことば』(メーガン・C・ヘイズ 著、田沢恭子 訳、フィルムアート社)4月7日公開
世界に存在する約200カ国では、無数のコミュニティで暮らす何10億もの人が数千種におよぶ言語や方言を話しているもの。
そのなかから、それぞれの文化に根ざした「幸せ」にまつわる50種のことばを選んで紹介しているのが本書。イラストを楽しみながら、穏やかな気持ちでゆったりと読み進めることができます。
4位『ストイック・チャレンジ: 逆境を「最高の喜び」に変える心の技法』
『ストイック・チャレンジ: 逆境を「最高の喜び」に変える心の技法』(ウィリアム・B. アーヴァイン 著、月沢 李歌子 訳、NHK出版)12月17日公開
著者によれば「ストア哲学」とは、マルクス・アウレリウス、セネカ、エピクテトスといった哲学者が2000年前に説いた、よい人生を送るためのテクニック。
単純化すれば、多くの人が「逆境」ととらえることを「ゲーム」に変えるという考え方だそうです。ここには、近年注目を集めるストア哲学について知っておきたいことが、わかりやすくまとめられています。
3位『文豪たちの憂鬱語録』
『文豪たちの憂鬱語録』(豊岡昭彦、高見澤 秀 編集、秀和システム)6月25日公開
「文豪の名言」と聞けば、独特の表現による崇高な人生論などを思い浮かべるのではないでしょうか。
ところが本書に納められている彼らのことばはむき出しの“本音”であり、いわゆる名言とはほど遠いもの。
“暗さの象徴的存在”としてSNSで再評価される太宰治がそうであるように、「憂鬱」「絶望」「悲哀」「慟哭(どうこく)」に満ちているのです。
思わず笑わずにはいられなかったりするものも多く、読み応えは抜群です。
2位『あやうく一生懸命生きるところだった』
『あやうく一生懸命生きるところだった』(ハ・ワン 著、岡崎 暢子 訳、ダイヤモンド社)1月28日公開
タイトルも秀逸な本書は、韓国で25万部のベストセラーとなった“人生エッセイ”。
40歳を目前にしてやりきれなさが限界に達し、ノー・プランのまま会社を辞めてしまったという著者の現在の肩書きはイラストレーター、作家。そんな現在行き着くまでの葛藤や苦悩が生々しく、そしてコミカルに描かれています。
「悩みなんて、どこの国でも同じようなものだな」と感じつことのできるエピソードがたくさん登場します。
1位『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』
『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』(左右社)8月7日公開
今年は多くのコロナ関連書籍が刊行されましたが、なかでも特筆すべき個性を備えていたのがこれ。
緊急事態宣言が発せられた日に「仕事」をテーマにした本をつくろうと決め、さまざまな仕事につく77人の人々に依頼した“激動の4月の日記”をまとめたものです。
登場する人々は有名無名を問わず、職業も年齢も多種多様。「あの時期に、どうしていたか」を共有することが、「これから、どうするべきか」について考える際の参考になるように感じました。
番外編
さて手前味噌ながら、今年は僕も3冊の本を出すことができました。そこで「番外編」として、その3冊を紹介させてください。
『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)
書評についての考え方、日常、本の読み方、感じ方、書き方、お金の事情などなど、書評家としての僕の経験や価値観などをまとめた“書評エッセイ”。
書評を書きたいという人だけではなく、さまざまなフィールドの方にも楽しんでいただける内容だと自負しています。
『読書に学んだライフハック』(サンガ)
8年間にわたり、ライフハッカーに書き続けてきた書評の集大成。
全原稿のなかからページビュー数の多かった記事を厳選し、「BUSINESS 仕事」「LIFE 生活」「MIND 心」という3カテゴリーに分けてまとめています。各書籍のメッセージを、無理なく受け止めていただけるはず。
『それはきっと必要ない』(誠文堂新光社)
モノや情報に囲まれる生活を見渡し、「本当は必要ないのではないか?」と感じたものについての考え方を綴ったエッセイ。
誠文堂新光社のサイト「よみものどっとこむ」で2017年1月からスタートした同名連載をまとめたものですが、時代の変化に合わせ、大部分を加筆修正しています。
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ありがたいことに今年は、「書評執筆本数日本一」に認定していただくこともできました。やるべきことを愚直にやってきただけにすぎないのですが、続けることの意義を感じることができ、とても感謝しております。
来年も、多くの方に役立つ本をご紹介させていただこうと考えています。
引き続き、よろしくお願いします。よいお年をお迎えください。
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