人に親切にすることは、誰もが知っているとおり正しい行ないです。では、賢い行ないとも言えるでしょうか?

うまく立ち回る、手を抜く、他人を操作するなどはすべて、手っ取り早く成功するために使われる戦略です。

こうした戦略はうまくいくのでしょうか? 古い格言にあるとおり「お人好しでは勝てない」のでしょうか?

これはまさに、心理学者のScott Barry Kaufman氏とCraig Neumann氏が、Psycheに最近投稿した記事で扱っているテーマです。同記事では、このテーマに関連するさまざまな研究が紹介されています。

善良であることを大切にしたい人たちに朗報があります。

自己中心的な戦略で成功したとしても、それはあくまで短期的なものであり、長期的に見れば「お人好しが勝てない」ことなどありません。

邪悪な者が成功する?

「そんなのはきれいごとだ」と首を振っている人は、これまでの人生でずる賢く立ち回った人が成功する事例をたくさん見てきたのだと思います。

投資を受け続けている無能なナルシスト、上司に気に入られる策略家、大成功している性格の悪い高校の同級生…、多くの人が身をもって体験しているこうした事例に反駁するのは簡単ではありません。Kaufman氏とNeumann氏もそうした事実を否定はしていません。

両氏は、表面的な魅力を持つ人たちや、目的のために手段を選ばない人たちが成功しやすいことを示す研究が無数にあることを認めています。また、魅力的なナルシストがリーダーに選ばれやすいことを示す研究もたくさんあります。

では、自己中心的なエゴマニアが権力を握ったあと、何が起きるのでしょうか? この答えもまた、研究により明らかとなっています。

両氏は、サイコパスなどいわゆる「邪悪な特性」を持つ企業リーダーについて次のように述べています。

仕事を成し遂げるということに関して言えば、そうした人たちはたいした業績を挙げられない傾向にあり、チームプレイヤーとしても劣っていると考えられています。

邪悪な特性を持つ人たちは、経営幹部として無能なだけではありません。議員に選ばれても法案を通過させることができず、ヘッジファンドを運営してもたいした投資収益を上げることができません。

私生活ではどうでしょうか? 繰り返しますが、邪悪な行為で本当に成功することはできません。不幸と破滅が待っているだけなのです。

両氏は次のように指摘しています。

刑務所を回避できたとしても(邪悪な特性を持つ人々は投獄される可能性が高い)、自殺暴力的な死のリスクが高くなります。

また、そうした人たちは幸せではありません。邪悪な特性を持つ人々は、自尊心が低く、他者と親密につながることができず、人生の満足度も低い傾向にあります。

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「お人好しが勝てない」わけではない
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