「時間管理術」に関するノウハウ本は少なくありませんが、それらの多くはテクニックの解説に終始しているように見えると指摘するのは、『超多忙な弁護士が教える時間を増やす思考法』(谷原 誠 著、フォレスト出版)の著者。

時間管理の仕方が上手になったとしても、結果的にはその分やることが増え、さらなる時間管理術が必要になるだけ。

そもそも時間管理術とは、次の2つの問題を解決するためにあるのだというのです。

1 自分の時間を何に投下するのか?

2 その時間で最大のパフォーマンスを発揮するには、どうしたらよいのか?

(「はじめにーー1年間に1400時間以上の自由な時間を作り出している私の方法」より)

「自分の時間をある分野に投下する」とは、「ほかの分野を捨てる」ことを意味するのだといいます。

つまり時間という概念は、「自分の人生でなにに重きを置き、そのほかのことをいかにあきらめていくか」という生き方の問題でもあるということ。

だからこそ、小手先のテクニックでは、時間管理に関する問題は解決しないわけです。

25歳で弁護士になった著者は若いころ、寝る間も惜しんで仕事をしていたそう。

しかし、25人の弁護士が在籍する法律事務所の代表パートナーであり、若いころよりも仕事量は増えている現在は、自宅でたっぷり7時間は睡眠をとっているのだとか。

そればかりか、たくさんの自由な時間も確保できているというのですから不思議です。

本書ではそうした実績に基づき、21種のエピソードを通じ、たくさんの自由時間をつくり出した時間管理法を解説しているのです。

きょうは第3章「休憩と睡眠をたっぷりとるほど時間は増える」のなかから、「睡眠時間はたっぷり確保する」をピックアップしてみたいと思います。

睡眠不足は百害あって一利なし

著者は弁護士業のかたわら、複数のメルマガ発行、ブログ記事の執筆、YouTubeチャンネルでの動画配信、セミナー講師、テレビ出演、法律専門書の執筆、ビジネス書の執筆などをしているため、周囲からは超多忙人間だと思われているのだそうです。

そのせいか「1日何時間くらい睡眠をとれていますか?」と聞かれることも多く、「だいたい7時間くらい眠るようにしています」と答えると驚かれるのだといいます。

多くの人は、「忙しい人は睡眠時間を削って仕事をしている」と思っているのでしょう。

また、著者自身もそういう考え方をしており、若いころは当時は自宅に帰る時間が惜しいため、事務所に寝袋を持ち込み、4時間睡眠くらいの状態で仕事をしていたというのですから驚きです。

しかし45歳のときに、睡眠・栄養・運動という健康の三原則を中心とする生活スタイルへと一新。その結果、無理をしていた若いころよりも集中力と生産性が上がったと実感できるようになったそう。

そしてこの三原則のなかでも、特に毎日のパフォーマンスにダイレクトに影響すると感じるのが睡眠。

1日睡眠不足になってしまうと、そのあと2日くらい、「集中力が続かない」「頭がぼーっとする」「疲れが抜けない」という症状が起きてしまうと実感するといいます。

そればかりか、5年ほど前から筋力トレーニングをほぼ毎日行うようになって以来、睡眠の質が上がったという実感もあるのだそうです。

筋トレに関連して、購読している「MUSCLE & FITNESS」という月刊誌に、睡眠に関する記事がありました(2018年8月号)。ようやくすると、以下のような研究結果が出ているそうです。 ・一晩の睡眠時間が8時間未満(特に6時間未満)の場合、身体が疲労して消耗した状態にいたるまでの時間が最大30パーセント短縮する

・睡眠時間が2時間減少すると、運動時のケガの発生率が2倍になる

・男性、女性の同じ人物について、一晩の睡眠時間が5時間の場合と8時間の場合の写真を見比べて評価してもらったところ、同じ顔でも8時間睡眠をとったときのほうが明らかにより健康的で魅力的に見えた。(171〜172ページより)

つまり睡眠不足になると、ハードな運動をしにくくなり、ケガをする確率が高くなり、外見の魅力までもが低下するということ。(169ページより)

「就寝準備」で素早くベッドへ

他にもさまざまな研究によって、睡眠不足が人間にもたらす悪い影響が多いことが立証されているのはご存知のとおり。

とはいえ、規則正しい睡眠を確保するのは難しいことでもあります。その理由について著者は、入眠するまでの行動が関係しているのではないかと推測しています。

入眠する前には人それぞれ、「しなければならないこと」「したいこと」がたくさんあるものです。

食事のあと片づけ、部屋の片づけ、明日の準備、お風呂、歯磨きなどはもちろん、「テレビを見たい」「読書をしたい」「ネットをチェックしたい」など、「したいこと」も多いはず。

著者はそれらの行為を「就寝準備」と呼んでいるそうですが、就寝準備を自分でコントロールし、決まった時刻に就寝するためにはウィルパワー(意思力)が必要。

しかしウィルパワーには限りがあるので、1日の終わりに差し掛かった時間帯にはそこをついてしまう可能性も。

その結果、夕食を食べ終えてソファに座ったまま、「疲れたなぁ」と思いながらテレビをつけたりスマホに手を伸ばすなど、面倒な就寝準備をすることを避けるべく当日行動に走り、夜更かしをしてしまうというのです。

したがって、まず「夜はウィルパワーが低下しているのだ」と意識することが大切だと著者。

反対に、早く寝て、朝早く起き、自由な時間を朝にとることができれば、それにより得られる幸福感は、人生を変えるほどのものといえます。(176ページより)

それは、日中仕事をして、夜中に仕事や勉強をしているという人にも言えるそうです。

集中力の源であるウィルパワーが枯渇している夜に仕事や勉強をしても、集中力が発揮できず効率はよくないはず。

ならば朝早く起きて、ウィルパワーが十分な状態で取りかかったほうが高い集中力を発揮できるわけです。

朝はそのあとの予定もあってリミットがはっきりしているので、短時間で成果を上げようとするため効率も上がることにもなるでしょう。(174ページより)

時間管理の最大の方法は、「やりたいことをあきらめて、捨てる覚悟を持つ」ことだといいます。

難しいことではありますが、実践すれば必ず自由な時間が増えるそう。本書を参考にしながら、いまより自由な時間を確保してみたいところです。

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Source: フォレスト出版

Photo: 印南敦史