わたしたちがかかえる、いわゆる「人間関係の問題」は、それがどんなに複雑で、根の深い、解決のむずかしいものであったとしても、その発端は、ちょっとした「ひとこと」、そのひとことに対する、ささやかな仕返しとしての、ちょっとした「言い方」の問題ではなかったのでしょうか。(「はじめに」より)

なぜか好かれる人の話し方 なぜか嫌われる人の話し方 新装版』(ディスカヴァー・コミュニケーション・ラボラトリー 編、ディスカヴァー携書)の冒頭にはこう書かれています。

世の中には、「その人といるとなぜかいい気持ちになるため、自然にまわりに人が集まる人」がいるものです。

しかしその一方、「悪い人ではないし、本当は誰よりも人のことを考えているのに、なぜかあまり好かれない人」もいます。

どうして、そんな違いが生まれてしまうのか? その原因である両者の違いは、ちょっとした「言い方」だというのです。

そこで本書には、そういうちょっとした「ひとこと」が集められているわけ。

しかも明らかに相手をおとしめるために使われる言い回しは排除し、「本人は気づかぬうちに、相手の反感を買ってしまいがちなことば」を集めています。

「なぜか好かれない話し方」とは、「誤解されやすいものの言い方」でもあるはず。

したがって、特別なことを言わなくても、ここで紹介されているような言い方を改めるだけで、「なぜか好かれる人の話し方」を身につけられるということ。

Scene1「同僚・友人・家族など一般に」のなかから、職場で役立てられそうないくつかをピックアップしてみたいと思います。

ことばの選び方で印象が変わる具体例

1. 要約する「要するに」

×「つまり、○○ということだろう?」「要するに、○○なんだね」などと相手の話を要約する

↓ ここがNG!

相手の話を「一般論」だと結論づけて、自分の優秀さをアピールしている

○ 相手の話は丸ごと聞いて、相手を受け入れていることを示す

誰でも、自分の話を勝手に要約し、一般化してほしくないと思っているもの。

丸ごと聞いて、受け入れてほしいわけです。なぜなら、自分の言うことは、一般論でまとめることのできない、特別なことだという思いがあるから。

自分自身に当てはめて考えてみると、これは納得できる話ではないかと思います。

にもかかわらず、「つまり」「要するに」と相手の話を要約せずにはいられない人は少なくありません。

それは、相手を受け入れることよりも、自己アピールを優先しているから。

自分を認め、受け入れてほしいからなのだろうと著者は推測していますが、それでは人は寄ってこなくなるというのです。(22ページより)

2. 話題を変える「ところで」「それより」

× 「ところでさ」「それより」などと、勝手に話題を変える

↓ ここがNG!

会話のキャッチボールを一方的に断ち切ることば

○話題を変える前に、一度相手の話をすべて受け止める

相手の話を受け止めることなく、勝手に別の話題に変えてしまうのが、「ところでさ」「それより」などのことば。

それらで返してしまうと、「あなたの話に興味がありません」「あなたの話は聞きたくありません」、つまりは「私はあなたを受け入れません」という意思表示になってしまうわけです。

しかも悪意はなく、ただ会話のキャッチボールができているつもりの人が多いのも困りもの。

でもキャッチボールとは、相手のボールをいったん受け止めてから返すものです。

なのにろくに答えもせず、勝手に話題を変えたとしたら、相手は孤立感を味わうことになってしまって当然。(27ページより)

3. 否定する・言い換える「でも」「って言うか」

×相手の話を「でも」「って言うか」などと否定、もしくは言い換える

ここがNG!

相手の話を否定している

○些細な「違い」ではなく、大きな「共通点」に目を向ける

大筋で話が合っていたとしても、とりあえず「って言うか」と自分のことばに言い換えたり、小さな矛盾も見逃さず「でも」と反論したりするのも、嫌われる人によく見られる傾向だといいます。

多くの場合、本人にさほど深い意味はなく、単なる口癖である場合も多いでしょう。しかし、それだけに相手に与えるダメージは大きく、深いわけです。

なぜなら相手からすれば、毎回少しずつ「あなたの言うことは不完全だ」「あなたは私より劣っている」と言われ続けるようなものなのですから。

その結果、「関わりたい、話したい、いいことを思いついた」という相手の素直な気持ちは次第に失われていき、「どうせ、この人は自分がいちばん正しいと思っているんだろう」と離れていくことになるということです。(32ページより)

4. 曖昧にする「ええ」「まあ」「そのうち」

×「ええ」「まあ」「そのうち」などと言うだけで、それ以上、なにも答えない

ここがNG!

「拒絶」を曖昧に示すことば

○なにかを断るときは、曖昧な表現ではなく、はっきりと伝えたほうが信用を損なわない

「ええ」「まあ」「そのうち」などは、よくない表現ではないものの、一般的には「答えたくない」と言うことを湾曲的に伝えるためのことば。

相手を傷つけずに断る際の言い方なので、それを知らずに多用すると、「なんでも断る人」「はっきりしない人」と言う印象を与えることになるのです。

基本的にはその場限りのつきあいの他人行儀なことばであるため、「私はあなたとそれほど親しくはありません」という「距離」を表明するメッセージになってしまうことも。(42ページより)

我が国におけるコーチングの第一人者である伊藤守氏が主宰していた『コミュニケーション・ラボ』での実践・研究をもとに1996年に出版された『そのひとことで、誤解されている』を2007年に改訂・復刊したものを、さらに読みやすく再編集した一冊。

20年以上読まれ続けているベストセラーを、さらにブラッシュアップしているわけです。コミュニケーションについて悩みを抱えている方は、手にとってみてはいかがでしょうか?

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Source: ディスカヴァー・コミュニケーション・ラボラトリー

Photo: 印南敦史