日本に古くから根付く「もったいない」の精神。
十数年前には世界的な流行語ともなりましたが、実際には日本の年間食品廃棄量は世界トップクラスといわれ、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」は飢餓に苦しむ人々への食糧援助量の約1.6倍、612万トンに達します。
IBMが運営するWebメディアMugendai(無限大)に、その「もったいない」をビジネスにした人物が登場。食べられる食品を捨ててしまう、日本人ならではのある性質とは。
「お金をかけて廃棄」する現状。解決のための施策とは
インタビューに登場していたのは、アイムライズ株式会社代表取締役の佐藤亮一さん。
同社が展開する「もったいない事業」をひとことで言うなら、賞味期限が迫った余剰在庫を抱えたメーカーなどと小売店をマッチングさせるビジネス。希望価格や販路など、双方の条件が合った商品のみ買い付けを行なうそうです。
他にも在庫を買い取ってくれる現金問屋などは存在しますが、買取値が安くなりがちな点や、販売ルート・販売先が不明確で自社ブランドの毀損に繋がりかねない点から、敬遠される傾向があったそう。

事業開始のきっかけは、ある仕入れ先の食品メーカーから「賞味期限の近い在庫がある」と相談を受けたことでした。
佐藤さんが複数社に聞き取りを行ったところ、多くの会社が賞味期限切れ間近の在庫を大量に抱えており、しかもそのほとんどが廃棄される現実を知ったそう。その頃の思いを以下のように語っています。
せっかくおいしい食品を食べてもらおうと丹精込めてお金もかけて作ったのに、それをさらにお金をかけて廃棄しなければならないのです。
この業界ではそういったジレンマを感じながら働いている人が実に多いことを知り、少しでもお役に立ちたいと考えました。
賞味期限が迫っていたり少し過ぎていたりしても十分おいしく食べられるのですから、廃棄するぐらいなら安価で販売するルートができれば、消費者にも喜んでもらえるのではないか。
そう思ってこの事業を手掛けることにしました。
「もったいない」精神が根付く日本で、食品ロスが多い理由
食べ物を粗末にしない「もったいない」の精神があるといわれる日本人ですが、一方で食品ロスが多いのも事実。佐藤さんはその理由の1つとして「賞味期限」と「消費期限」への理解不足があるのではと指摘します。
「賞味期限」は、インスタントラーメンやレトルト食品、缶詰などの加工食品に表示されており、未開封で保存状態が適切であればおいしく食べられる期間。
一方、「消費期限」は主にサンドイッチや納豆など、傷みやすいナマモノに表示されており、「この日までは安全に食べられる期限」を示します。
佐藤さんは、日本人の「記述や期限を厳格に守る」性質から、賞味期限が1日過ぎただけでもゴミとして捨ててしまうのではと指摘します。
また、業界内にも賞味期限に関する厳しい流通上のルールも存在するそうで、大手スーパーやメーカーなどを中心に、これを緩めていこうといった動きもあるとのこと。

すでに売上の8割を占める同社の「もったいない事業」ですが、佐藤さんは「いずれ事業がなくなればいい」と表現し、その真意を語っています。
もったいない事業は、食品ロスの削減を目指しています。
食品業界の企業努力、消費者の行動変化が進み、世の中から食品ロスが減り続けると、この事業は無くなるはずです。
しかし、無くなるのであれば、それはそれで良いと思っています。その時は、当社の事業も社会の役にたち役目を終えたと捉えます。
その他にも、食品ロスを減らすためにわれわれ消費者がまず始められることなどが語られたインタビューの続きは、Mugendai(無限大)でご覧ください。
Image: Mugendai(無限大)
Source: Mugendai(無限大)