「人前に出るとあがってしまう」とお悩みの方は、決して少なくないはず。
メンタルコーチ/ビジネスコーチである『ドキドキ・ブルブルなし 理想の自分で輝くための あがり症克服術』(村本麗子 著、明日香出版社)の著者も同じで、いまでこそ年間300回以上のセミナー、講義、企業研修などを行っているものの、かつては「あがり症」だったのだそうです。
つまり本書では、そんな自身の体験を軸としながら、あがり症を克服するための方法を紹介しているわけです。
ちなみに、あがり症で悩んでいる方はとても多いようで、経営されている「ビジネスマンスクール」でダントツの人気を誇っているのも「あがり症克服セミナー」だといいます。
なかには「話し方教室、あがり症セラピー、書籍、スクールなど試せるものはすべてやったのに、あがり症は治らなかった」という方もいたそうですが、では、それだけのことをしてもあがり症が治らない理由はどこにあるのでしょうか?
そのヒントは、「そもそもあがり症は、どこで起こっているのか?」ということなのだとか。
あがり症の症状としては「手や額に汗をかく」「顔が赤くなる」「胸がバクバクするな」が挙げられますが、それらはあくまで“結果”。
したがって、あがり症の症状を呼び起こす指令を出しているところに注目すべきで、それは脳だと著者は主張するのです。
いくら書籍を読んだとしても、手のひらに「人」という字を書いて飲み込んでみても、相手をカボチャと思おうとしても、あがり症が治らないのは、その原因が自分の脳にあったからです。
つまり、自分の脳を変えない限り、あがり症の症状と一生付き合うことになるのです。(「まえがき」より)
だとしたら、「あがり症を治すぞ」と決めてしまえばいいということ。
そんな発想に基づいた本書から、きょうは第4章「言葉のチカラを借りよう」に注目してみたいと思います。
スピーチする前・最中・後につぶやくことばに注目
人前でスピーチをする際、心のなかでどのようなことばをつぶやいているでしょうか? 例を挙げてみましょう。
人前でスピーチする前
・「ことばに詰まると、相手に笑われるんじゃないか」
・「スムーズに話せないと、レベルが低いと思われないかなぁ」
・「噛んだらどうしよう。失敗したら……」
・「うまくやらなければ!」
スピーチをしている最中
・「いま、噛んでしまった。恥ずかしいなぁ……」
・「早口になってる! でも、コントロールが効かない」
・「話を飛ばしてしまった。どうしよう、戻ったほうがいいかな」
・「みんなは、どう思っているんだろう……」
スピーチが終わったあと
・「原稿どおりに話せなかった」
・「あ〜、もっと練習しておけばよかった」
・「相手の反応、評価が気になるなぁ」
・「いつも失敗ばっかり」
・「やっぱり自分には無理だ」
このような「自分のつぶやき」を分析すると見えてくるのは、自分のこだわり。
たとえば「原稿どおりに話せなかった」というつぶやきは、「完璧」にこだわったもの。
「うまくやらなければ」というつぶやきは、「ねばならない(must)」というこだわりであるわけです。
しかしネガティブなこだわりがあると、自己評価が下がってしまいます。意味のないこだわりを持っていると、人生に時間さえも無駄遣いすることになる可能性があるのです。
そこで、自分のこだわりが、ネガティブなものであるかどうかの認識を持つことが大切なのだと著者は主張しています。(86ページより)
ことばが◯◯に与える影響
心のつぶやきのことを「セルフトーク」といいますが、人は一日にどのくらいセルフトークをしているのでしょうか?
心のなかで呟いたことも含まれるそうですが、一般には一日最低5万回、平均だと6〜7万回になるのだといいます。
もし、そのセルフトークがネガティブなものだったとしたら、ネガティブ=否定的なことを日に5万回も自分に刷り込んでいるわけで、それが続いていくとネガティブ思考ができあがることに。
しかし逆にポジティブなものだったとしたら、ポジティブ思考となるのです。どんなピンチに陥っても、「これはなにかのチャンスだ」とプラスに変えることができれば、ポジティブになれるということ。
その人のものの考え方や捉え方、思考は、ことばによってできあがるもの。
自分のことばがすべての思考をつくっているともいえるので、「どういうことばを使うか」にかかっているということ。(91ページより)
ことばを書き換えよう
つまりセルフトークによって、自分の思考ができあがるわけです。
ネガティブなセルフトークはネガティブなものの見方や捉え方となり、ポジティブなセルフトークはポジティブなものの見方や捉え方になるということ。
そのため、自分でコントロールしていく必要があるのです。
「原稿どおりに話せなかった」
→ 「アドリブでもなんとかやり切れた!」
「次はもっといいスピーチをするぞ!」
「ことばに詰まると、相手に笑われるんじゃないか」
→「私は、笑いを取れるすばらしい人間だ」
「自分らしくやればいい」
「噛んだらどうしよう。失敗したら……」
→「噛んでもいい。自分のベストを尽くす!」
このように、自分でコントロールしていくことが大切なのです。
自分が発することば、すべてを肯定的にていねいに置き換えていくと、肯定的なことばの刷り込みが増え、思考や行動にまで変化が現れてくるといいます。
自分がどういうことばを使うかが、ものの考え方や捉え方、つまりは思考に大きく影響するというわけです。そしてそれが、あがり症を克服する際にも大きな力となるのでしょう。(97ページより)
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どれだけ優れた企画も、伝える力がなければ優れた提案にはなりません。また、伝えるスキルを身につけていても、ガチガチにあがってしまったのではそのスキルを発揮できません。
だからこそ、あがり症を克服してビジネスチャンスをものにしたいところです。
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Source: 明日香出版社
Photo: 印南敦史