仕事の精度を高めることを目的としたAIの活用が叫ばれる一方、旧態依然として一向に進化していないものが「会議」。
『ゼロから学べる! ファシリテーション超技術』(園部浩司 著、かんき出版)の著者は、そう指摘しています。そもそも、「いったいなにが“よい会議”なのか」を知らない人が多いとも。
では、「よい会議」とはなんなのでしょうか?
著者はその条件として、「時間厳守」「決まる・まとまる(アウトプットの質)」「参加者の納得度が高い」の3つを挙げています。
特に重要なのは「参加者の納得度」。人は納得しないと行動しないため、会議で決まったことを実行するかどうかは、この「納得度」にかかっているわけです。
ちなみに著者は、プロのファシリテーターとしてさまざまな企業の会議に携わり、会議のファシリテーションや会議改革のコンサルティングなどを行っているという人物です。
管理職やプロジェクトリーダーはもちろん、今は、若手の中でもプロジェクトマネージャーをはじめ、様々な年代の人が会議でファシリテーター的な役割を担う可能性があります。
この本で、ファシリテーション、ファシリテーターの極意を掴めば、急に今日、明日、自分がその役目を任されたとき、参加者全員が納得できる会議が実現できるはずです。(「はじめに」より)
また、チームのメンバー、関係者など多くの仲間を巻き込み、問題解決という目標の達成に向かって一緒に突き進んでいくことになるため、必ず「いい仕事」に結びつき、高い成果を創出することもできるというのです。
ファシリテーションは、問題解決のための土台
問題を解決するために必要なのは、「企画力」「プレゼンテーション力」「プロジェクトマネジメント力」「ファシリテーション力」「ロジカルシンキング力」「人格力」「コミュニケーション力」という7つのスキル。
特にファシリテーション力は、「仕事」を遂行するうえでの土台だといいます。
たとえば企画を立てるときに、1人で解決策を立案することはできません。メンバーみんなで相談して企画立案しなければならないので、当然ながら会議が必要となります。
プレゼンテーション資料を作成する際にも、メンバーから意見をもらわなければ完成させることは不可能。
企画が通り、プロジェクトがスタートし、成果物を創出する間にも、ファシリテーション力は必須です。
なぜなら、「どのようにやるのか?」「進捗はどうなっているのか?」など、ひとつの仕事が終わるまで会議の連続となるはずだから。
会議の質が仕事の生産性に直結するわけで、だからこそファシリテーションは、仕事をするうえで土台になるスキルだと言えるわけです、(8ページより)
ファシリテーターとは、会議を円滑に進行するプロ
ところで著者によると、ファシリテーション、ファシリテーターの意味は以下のようになるそうです。
・ファシリテーション=会議を円滑に進行する
・ファシリテーター=ファシリテーションを行う人
(16ページより)
より具体的に言えば、ファシリテーターは「会議が円滑に行われるよう、そのプロセスをリードし、活発な意見が出る“場づくり”を演出する役割を担う人」ということになるようです。
そして、ファシリテーターに求められることは、おもに次の3つ。
1 会議をデザイン(設計)できるか
2 会議をリードできるか
3 “場づくり”ができるか
(16ページより)
いわばファシリテーションとは、広く認知されている「会議の進行」ではなく、本来の意味は「会議の“円滑な”進行」。
「会議の進行をすればOK」ではなく、会議のテーマが決まったら「円滑に進めるためになにができるのか」を考え、活発な意見が出るようにしなければならないということです。
そのために重要なのは、どのように進行すべきか、あらかじめ“脚本”を考えること。その会議がどう着地するのか、結論まで予測していく必要があるわけです。
また会議当日は、全員が意見を言えるように配慮するなどの“場づくり”も欠かせませんし、時間どおりに終えることにも徹底してこだわる必要があるのです。(16ページより)
ファシリテーターに求められる3つのこと
(1)会議をデザイン(設計)できるか
ファシリテーターは、会議の必要性や目的を明確にし、その達成のために「議論の順番を組み立てる」ことが必要。
具体的には、会議前にテーマについてアジェンダ(会議の進行表)をつくり、どのような順番で進め、どのように議論すれば結論に至り、参加者全員が納得できるかについておおよそ設計しておくということ。
この会議設計で、会議の成否が決まるといっても過言ではないそうです。
(2)会議をリードできるか
ファシリテーターは会議当日、事前につくっておいたアジェンダに沿って会議を進行させます。
順序や意見の整理、時間管理などを考えつつ、アジェンダで決めた内容を確実に進める役割があるのです。
全体を俯瞰しているつもりでも、予期せぬ方向へ話が進んでしまうケースも考えられるため、常に軌道修正を行いながら会議をゴールに導くことが求められます。
(3)“場づくり”をできるか
上司と部下が会議に同席していると、ポジションパワーが出やすいもの。そんなとき、ファシリテーターがいれば全員を平等に扱うことが可能になります。(18ページより)
*
ファシリテーションは著者にとっても、仕事のみならず人生全般を変えてくれるものとなったのだそう。
そうした実感があるからこそ、多くの人にファシリテーションのメリットを実感してほしいというのです。
そんなファシリテーションをぜひとも修得し、「いい仕事」に結びつけたいものです。
あわせて読みたい
Source: かんき出版
Photo: 印南敦史