障がいの有無にかかわらず、誰もがデバイスを使えるようにするアクセシビリティは、Appleが力を入れる取り組みのひとつです。

Apple CEOのティム・クック氏と、ワールドワイドマーケティング シニアバイスプレジデントのグレッグ・ジョスウィアック氏は、日本訪問の最終日となった12月16日、東京・お台場の日本財団パラアリーナで行なわれていた車いすラグビーの練習の様子を見学。

日頃からApple Watchを使っている池崎大輔選手と島川慎一選手から、トレーニングや健康管理、日常生活でどのように活用しているかを聞き、さらに、Appleがめざすアクセシビリティについても語りました。

記録を可視化し、トレーニングの自己分析に活用

車いすラグビーは、通称「ラグ車」と呼ばれる頑丈な構造の競技用車いすが激しくぶつかり合う迫力が魅力の競技です。池崎選手と島川選手は、東京パラリンピック日本代表として銅メダルを獲得。現在は2024年のパリパラリンピックに向けてトレーニングを重ねています。

コート上を激しく動きまわり、大きな音を立ててぶつかり合う練習のようすを見学したクック氏は「とてもエキサイティングで見ていて楽しかった」と拍手を送りました。

クック氏が池崎選手のApple Watchの画面をのぞき込むと、「これだけで心拍数が上がりそうです」と笑う池崎選手。

両選手が使用するのは、Appleのアクセシビリティ機能として用意されている「車椅子」設定。歩数の代わりにプッシュ数(こいだ回数)や、プッシュのタイプ、速度、地形といった情報が記録されます。

Photo: 酒井麻里子
Photo: 酒井麻里子

また、トレーニングの記録には、ワークアウトアプリの「車椅子ペースウォーキング」や「車椅子ペースランニング」を使用。こちらは経過時間やペース、距離、カロリー、心拍数などを計測できます。

「Apple Watchで、これまで意識していなかったことを可視化できる」と2人は口をそろえます。心拍数のグラフを試合中の映像と照らし合わせながら確認することで、「心拍数が上がっているときにはミスが起こりやすい」といった分析ができ、課題を見つけやすくなっているそうです。

池崎大輔選手(左)と島川慎一選手(右)
池崎大輔選手(左)と島川慎一選手(右)
Photo: 酒井麻里子

競技中は専用のグローブをつけるため、Apple Watchの装着にも一工夫しているという両選手。池崎選手はグローブを加工して、手首につけたApple Watchの画面部分だけを外に出せるようにしています

Photo: 酒井麻里子
Photo: 酒井麻里子

島川選手は、競技への影響が少ない上腕部分に装着。グローブ越しではタッチ操作が行なえないため、グローブを装着する直前にワークアウトの開始ボタンをタップ。すべり止めとして使っている松ヤニで端末が汚れるのを防ぐためにも、競技中はなるべく触らないようにしているそうです。

Photo: 酒井麻里子
Photo: 酒井麻里子

さらに、トレーニングだけでなく、健康管理にもApple Watchを活用。とくに睡眠記録は眠りの質や呼吸数まで細かく確認できるので、体調をベストな状態に保つために役立っているといいます。

日常生活での障がいの壁も低くしてくれる

日常生活でもApple Watchのさまざまな機能が役立っていると話す両選手。

島川選手は、サードパーティーアプリ製のApple Watchアプリを駆使して、車の鍵の開閉や自宅の照明のコントロール、さらには車いすに取り付けて使う電動アシストユニットの操作までApple Watchから行なっていると話します。

また、遠征先の時間を確認したり、海外の知り合いに連絡したりする機会が多いため、ウォッチフェイスには世界時計を選んでいるそうです。

Photo: 酒井麻里子
Photo: 酒井麻里子

障がいの影響で握力が弱いため、買い物で小銭を取り出すときに不便さを感じていたという池崎選手は、Apple WatchでPayPayを使うことでそのストレスから解放されたと話します。

また、移動中は両手で車いすをこいでいるため、スマホの操作を行なえません。

電話の着信があると人の流れをじゃましない場所に移動して車いすを止めてから応答する必要があり、時間がかかっていたそうですが、これもApple Watchを使うことですぐに対応可能に。

このほかにも、トレーナーとの会話中にメモしたいことがあればボイスメモを起動、自動改札もApple Watchだけで通過できるなど、生活のいろいろな場面でその便利さを実感していると話します。

「その都度スマホを取り出すことなく、Apple Watchだけで完結できるのは車いすユーザーとしてすごく便利です。時間を有効活用できるし、生活の幅も広がりました。自分たちの障がいの壁をすごく低くしてくれるものだと感じています」(池崎選手)

Photo: 酒井麻里子
Photo: 酒井麻里子

パリパラリンピックまで残り2年を切り、ますますトレーニングに力が入る池崎選手と島川選手。自己分析をパフォーマンス向上につなげることや、健康を管理すること、生活の利便性をあげることにApple Watchが多いに役立っているという話を聞き、クック氏とジョス氏も「とても素敵な時間だった」と笑顔をみせます。

すべての製品を、あらゆる人にとって使いやすく

取材の最後に、Appleがめざす「アクセシビリティの究極の理想の姿」についてクック氏にたずねると、次のような答えが返ってきました。

Appleは設立以来、常にアクセシビリティに集中してきました。エンジニアリングは最初から、その人がどんな能力を持っているかにかかわらず——たとえば耳が聞こえなくても、目が見えなくても、あるいは運動の機能が不足していた場合でも使えるようにすることを意識していました。

私たちはすべての製品が、あらゆる人たちがアクセスできるものにしなければならないと考えています。

Apple製品を使っていると、障がいを持たないユーザーであっても、アクセシビリティ機能がとても充実していることを感じるかもしれません。今年の秋に実施されたiOS、iPadOSやwatchOSのアップデートでも、多くのアクセシビリティに関する機能が追加されました。

誰もがデバイスの便利さの恩恵を受けることができ、日々の活動をよりよいものにしていくために重要な意味をもつこれらの機能。Appleのアクセシビリティは、今後もさらに進化を続けていきそうです。

池崎大輔(いけざき・だいすけ)

三菱商事株式会社所属。1978年1月23日生まれ。車いすバスケットボールから2008年に車いすラグビーに転向。2010年4月、車いすラグビー日本代表に選出され、数々の国際大会でベストプレーヤー賞を受賞。2016年リオパラリンピックでは、エースとして日本代表チームをけん引し、銅メダルを獲得。2018年の世界選手権でも初優勝の原動力となり、同大会MVPを獲得した。東京2020パラリンピック競技大会出場し日本代表チームは銅メダルを獲得。2022世界選手権では3位入賞。

島川慎一(しまかわ・しんいち)

バークレイズ証券株式会社所属。1975年1月29日生まれ。力強いタックルとスピードを持ち味とし、2004年のアテネパラリンピックから代表に選ばれ続けている。2016年のリオ大会、2021年の東京大会では銅メダルを獲得。自身で2005年に関東を拠点としたクラブチーム"BLITZ"を立ち上げ、現在も国内で活発に活動している。日本選手権では、11度の優勝、3度の準優勝、個人賞をいくつも獲得。2024年のパリパラリンピックでは金メダル獲得を目指す。