筆者は、何かを習慣化するのはわりと得意なほうです。ですがここ数年は、かなりハードルの高い習慣をいくつも身につけるため、トライアンドエラーを繰り返してきました。

例えば、「ヴィーガンの食習慣を身に付ける」といったこともその1つです。その直前まで、(肉食メインの)パレオダイエットを続けていたので、食生活を180度転換するのは大変でした。

最終的にヴィーガンになることができたのですが、そのためにやってみた習慣術の中で最も効果が高かったのが「フォーカス・マッピング」でした。

この手法は、2021年刊行の『習慣超大全——スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』(BJ・フォッグ著/ダイヤモンド社)に掲載されていたもの。

フォーカス・マッピングは、スタンフォード大学の行動科学者である著者が「最良の方法だと確信している」というだけあって、習慣づけが苦手な人にもかなり有効なメソッドです。

今回は、このメソッドのやり方と、筆者がどのように実践してきたかについてご紹介します。

「願望」を明確にして、「行動」の選択肢を思い付く限り挙げる

フォーカス・マッピングの第1のステップは「願望を明確にする」ことです。次いで第2のステップが、「行動の選択肢を挙げる」となっています。

「願望」は、習慣づけたいことを指します。筆者の場合、「ヴィーガンの食習慣を身に付ける」のほかに、「仕事の生産性を3割アップして、それを維持する」などがありました。これらを願望として明確にします。

そして、「行動の選択肢を挙げる」ですが、願望の達成(習慣化)につながりそうな行動をとにかくたくさん挙げていきます。この時点では、時間的・金銭的な制約は無視して、できるだけ自由に、数多く考えましょう。

時間をかけて何十個も思いついたら、各行動をより具体的な内容にブラッシュアップします。

例えば、生産性を上げるため「テキストの音声入力の機会を増やす」なら「音声入力ソフトの●●を使って、長文メールはすべて音声入力する」といった具合です。

「現実と向き合い」、実現可能な行動を取捨選択する

上のステップを済ませ、あらゆる制約を取り払って考えた行動が数十個と挙げられたら、次は「現実と向き合い」、自分が実際にできると思える行動を取捨選択していきます。

例えば、「2カ月おきに近県で10日間のワーケーションをする」というのが、「今の仕事・家族の現状からどうしても無理だ」と思ったら削ります。

また、行動の中には「効果がありそうだけれども、その行動自体を習慣化するのにいくつものハードルがある」こともあるでしょう。筆者は、「仕事の生産性を3割アップして維持する」ために「睡眠の質を上げ、早寝早起きする」という行動を挙げました。

ですが、この行動自体の必要性を認めても、それを実行するには、さらに細かい習慣を身につける必要があることがわかりました。「枕や布団などの寝具を快眠できるものへ買い替える」とか「寝る前の3時間は固形物を食べない」といった習慣です。

こうなってしまうのは、「仕事の生産性を3割アップして維持する」という願望がアバウトで、大きすぎるものだからです。

そこで、この一大願望にチャレンジする前に、「睡眠の質を上げ、早寝早起きする」という願望をフォーカス・マッピングすることに。

仕切り直して、効果があって実行できそうな行動を決め、以下のようにリストアップしました(以下は一部)。

願望:「睡眠の質を上げ、早寝早起きする」

  • 寝具を快眠できるものへ買い替えて使用
  • 17時以降は固形物を食べない
  • 13時以降はカフェインを摂らない
  • 寝つきが良くなるアロマオイルを購入して使用
  • 夜10時台に布団に入る

行動がもたらす影響と実行のしやすさを可視化する

行動をリストアップしたら、A3サイズくらいの大きな紙を用意します。それに十字線を引いて、象限をつくりましょう。

上に「影響が大きい」、下に「影響が小さい」、左に「実行しにくい」、右に「実行しやすい」と書き入れます(下図参照)。

Image: 鈴木拓也
Image: 鈴木拓也

次に各行動を、厚紙を切るなどして作ったカードに1枚ずつ書き入れます。それらのカードを象限の当てはまる場所に置いていきます。

その判断ですが、まず「このカードの行動は、願望達成に影響が大きいか、影響が小さいか」を吟味し、該当する場所(上下)に置きます。

それから、「実行しにくい」か「実行しやすい」を判断し、カードを左右に動かします。一例を下に挙げます。

Image: 鈴木拓也
Image: 鈴木拓也


影響が大きく、実行しやすい行動に注力する

最初からカードの置き場所に悩む必要はありません。フィーリングで「なんとなく」判断するカードがあっても構わないのです。

これらの行動を日々続けることで、どの場所が適切なのかがわかるようになってきます。その都度、カードの位置を変えていけばOKです。

いずれにせよ、カードの置き場所を確定することが、このメソッドの目的ではありません。あくまでも、願望(習慣化)を達成するためにどんな行動が効果的か、そして自分に合っているかを特定することが目的です。

しばらくは、各行動をまんべんなくやってみましょう。そのうち、たくさんある行動の中で効果が高いと思われるものがわかってきます。

それは言うまでもなく、「影響が大きくて、実行しやすいもの」です。願望が達成されるまで、このカテゴリーにあるものに注力します。

ただし、それ以外の象限にあるものもたまには目を配り、「ここを工夫すれば実行しやすくなるかな?」などと常に検討するようにします。


筆者は、このフォーカス・マッピングをメインに据えつつ、他にもいくつかの習慣術を組み合わせながら、睡眠の質を上げ、仕事の生産性を3割アップし、ヴィーガンになるなど、難しい習慣を定着させることができました。

習慣化が苦手な方には、ぜひおすすめしたいメソッドです。