今は働き方の多様化が進む時代。場所を問わずに働くリモートワーカーが増加する中、各国がデジタルノマド獲得に向けたビザの整備を進めています。

パンデミックを機にこの潮流は加速し、“世界を旅しながらワーケーションする”ことがより身近なものになりつつあります。

デジタルノマド向けビザの魅力や諸条件、取得にあたっての注意点は? 抑えておきたいポイントをチェックしてみましょう。

6カ月から数年にわたって滞在できる「デジタルノマドビザ」

デジタルノマドビザとは、ネット環境とパソコンさえあれば場所を問わず働けるノマドワーカー向けのビザのこと。

最大の特長は滞在可能期間の長さで、6カ月〜(国によっては)最大5年間、その国に滞在しながら働くことが可能です。

国によっても異なりますが、共通して求められるビザ要件は以下の通り。

  • リモートワークで働くこと(の証明)
  • 1カ月、もしくは1年分の収入証明や銀行口座の残高証明
  • 旅行/健康保険の加入
  • あくまで一時的な滞在であること

つまり、その国の雇用を奪うことなく仕事ができて、金銭、医療・健康面で問題なく生活できるワーカーが対象ということ。滞在中は税金の優遇措置などが用意されていることもあります。

ちなみに観光ビザでも長期滞在は可能ですが、多くの場合滞在できるのは最大3カ月程度。また、就労ビザの場合は取得のハードルが高く、発給に数年を要するケースもあります。

その点、このデジタルノマドビザなら比較的取得のハードルが低く最大数年間に渡ってその国で働きながら暮らすことができるのです。

国選びで重視しておくべきポイントをチェック!

パンデミックを機にデジタルノマド獲得競争は加速し、Harvard Business Reviewによればこれまでに33カ国が公式にデジタルノマドビザを発行

Temporary resident visa(一時滞在ビザ)などでノマドワーカーを受け入れている国を合わせると、その数は50カ国近くに上ります。

デジタルノマドビザ発行国一覧

アイスランド/アルバ/アンギラ/アンティグア&バーブーダ/インドネシア/イタリア/エストニア/エクアドル/オーストラリア/カーボベルデ/カンボジア/キプロス/キュラソー/ギリシャ/グレナダ/クロアチア/ケイマン/コスタリカ/コロンビア/ジョージア/ジャマイカ/スペイン/スリランカ/セーシェル/セルビア/セントルシア/タイ/台湾/チェコ/ドイツ/ドバイ/ドミニカ/ノルウェー/パナマ/バハマ/バミューダ/バルバドス/ベトナム/ブラジル/ベリーズ/ポルトガル/マルタ/メキシコ/モーリシャス/モントセラト/モンテネグロ/ルーマニア(2022年5月時点)

滞在可能期間や申請時の要件は、各国で異なります。例として、以下3カ国を比較してみましょう。

ドイツ

申請費用:100USドル(1ドル140円換算。日本円で1万4,000円)

滞在可能期間:6カ月〜最大3年まで

銀行残高証明額:具体的な預金証明額について明確な数値は設定されていないものの、首都ベルリンで十分に生活できる経済能力があると証明することが必要(目安として最低年間9,000ユーロ・1ユーロ145円換算。日本円で約130万円)。

スペイン

※2023年より本格施行予定のため以下見込み

申請費用:90USドル前後(1ドル140円換算。日本円で約1万3,000円)

滞在可能期間:1年〜最大5年まで

収入証明額:一カ月あたり2,000〜3,000ユーロ(1ユーロ145円換算。日本円で29〜43万円)

その他:非居住者の収入に課される税金が4年間24%から15%に減税される税優遇措置あり。

ノルウェー

申請費用:600ユーロ(1ユーロ145円換算。日本円で約9万円)

滞在可能期間:6カ月〜最大4年まで

収入証明額: 年間3万5,719ユーロ(1ユーロ145円換算。日本円で約518万円)

国選びのポイントとして、申請時のハードルが高くないこと(申請にかかる費用、収入や銀行残高証明額が比較的低めに設定されているなど)も重要ですが、現地での住居費、生活費がどのくらいかかるのか、税優遇措置の有無も合わせて確認しておきたいところ。

なるべく長くその国で過ごしたいという方は滞在可能期間も要チェックです。

各国がデジタルノマドビザ発給に乗り出す理由

各国がしのぎを削るデジタルノマド獲得競争。その背景にはどのような理由があるのでしょうか。

まず挙げられるのはデジタルノマドがもたらす経済効果。ビザ取得者は数カ月から数年に渡り中長期でその国に暮らすことになるため、消費活動をブーストしてくれる貴重な存在となりえます。

また、経済的な意味以上に大きな価値があるとされているのが、新たなアイデアやビジネス、プロジェクトを生み出す媒介としての役割。国境を超えて多彩な人材がその国、地域に長期間滞在することで知識やリソースが行き交います。

結果、そこから大きな波及効果が生まれ、ノマドワーカーやその所属組織、そして受け入れ国と全員にとって「ウィンウィンな関係」をもたらしてくれるのです。

ただデジタルノマドの急増によって、その国の不動産価格や物価が上昇しつつあるというネガティブな側面も。こうした問題を踏まえ、今後各国のビザ発給や条件面でどのような動きがあるのかは注視していきたいところです。

逆カルチャーショックも! ビザ取得にあたって気をつけたいこと

あらゆる点から魅力的なデジタルノマドビザですが、いくつか注意点も。

まず、今回ご紹介した諸条件は今後変更される可能性があるため、最新情報は必ずオフィシャルなソースから随時チェックしてください。また、入国に際して事前のPCR検査やコロナワクチン接種義務などの条件も確認しておきましょう。

また、「いきなり長期間その国に滞在するのは不安」という場合、まずは旅行者としてその国を一度訪れてみることをオススメします。

ネットの情報やSNSで眺める光景と実際にその土地で暮らすという体験は大きく異なるもの。気候、治安、食事、文化、人、街の雰囲気など生活者の視点から、その国で働く、暮らす自分を想像してみるといいでしょう。

最後に、長期間海外で暮らして日本に帰国すると逆カルチャーショックと呼ばれる症状に悩まされる人もいます。これはその名の通り、海外生活に慣れ過ぎてしまい、母国の環境や文化に違和感、ストレスを感じてしまう症状のこと。

こうしたことも頭の片隅に置き、帰国前は心の準備をしておくことも重要です。


パンデミックやここ数年の世界情勢の変遷により、いつ何が起こるわからない先行き不透明なこの時代。

長引く円安の影響もありますが、少しでも海外に興味関心がある方、未来の自分に何か投資を、と考えている方にとって、このデジタルノマドビザは魅力的なゲートウェイとなるでしょう。

Source: Harvard Business Review , nomadgirl, VISA GUIDE.COM , BUSINESS INSIDER , CNN