『「手書き・3分割」で情報を整理する 3スプリットメモ術 』(大西恵子 著、同文舘出版)の著者は、「“記憶力”より“記録力”」と捉えて手書きのメモを大切にし、書く速さや書き方を高めてきたのだそうです。なぜなら、膨大な情報をすべて記憶することはできないから。
たしかにそのとおりですが、とはいえ必ずしもいいことばかりではなかったようです。メモする量が増えた結果、それらを探す時間、思い出す時間もまた増えていき、余計な時間と労力を費やすことが多くなったというのです。
そして、そんななかで気づいたのは、「メモを書いて終わりにしたのではもったいない」ということだったのだとか。
情報は鮮度が命です。活用しなければ、そのとき大切だと思ったことが、時間とともに“ゴミ化”してしまいます。
必要な情報を絞り込んで、パッと見てわかるメモにすること、書く場所を決めること、探す手間と時間を減らして、書いた内容を活かしきることが大事なのです。
そしてたどり着いたのが、「1枚の紙にダラダラ書くより、用紙を3分割して所定の位置に、コンパクトにまとめて書くこと」です。(「はじめに 『書いて終わり』ではもったいない!」より)
つまり、それこそがタイトルにもなっている「スプリットメモ術」。分けて書くことには、わかりやすく、活用もしやすいというメリットがあるというのです。
なお著者のなかには、「大切な時間と労力を費やして書いたものを、少しでも仕事や大切な人との関わり、自分自身の成長のために役立てていただきたい」という思いもあるようです。
きょうは1章「仕事は手書きのメモでうまくいく」に注目し、基本的な考え方を確認してみたいと思います。
3つに分けて整理する「3スプリットメモ術」
相手の話を聞くときであっても、自分がやるべきことを書くときであっても、多くの方は“聞いたこと”“思いついたこと”を片っ端から機械的に書いているのではないかと思います。
しかし、人の話を聞きながらメモする際、日ごろからメモをとってない人は苦心することになるはず。相手の話のスピードについていけないため、相手が大事にしていることばを書き漏らしてしまったり、書くことに必死になって話を聞くことがおろそかになったりするわけです。
それでは、さらにメモがとれなくなり、「なににどう対処すればいいのか」と混乱してしまっても無理はありません。
またメモに慣れている人であったとしても、聞いた順番にメモしていることが多いのではないでしょうか? だとすれば、書き終わったあとで内容を整理したり、理解したりする時間が必要になってくるはず。
そう考えていくと、どちらのタイプでも、迅速で適切な対応が求められる場面においては危険だということがわかります。大切な内容を聞き漏らしてしまったり、整理や理解に時間がかかってしまえば、信頼関係にも影響を与えてしまいかねないからです。
そこで著者は、セミナーや講座を受講するとき、クライアントとの打ち合わせのとき、提案書などを作成するときなどに、ページを3つに分割して記録しているのだそうです。それが、「内容を整理しながら、簡単にスピーディにメモをとることができ、その後の対応に活かせるように」との思いから著者が開発した「3スプリットメモ術」。
「3スプリットメモ術」は、メモを積極的に取る人はもちろん、メモを取るのが不慣れな人にもお勧めです。
その仕組みはとてもシンプルです。
用紙の中心にアルファベットのTを描いて3分割し、「事実(客観的なこと)」と「意見や考え(主観的なこと)」「あとでいいこと(調べること、質問したいこと、気がかり・モヤモヤした気持ち)」に分けてメモする方法です。(35ページより)
3つに区切り、整理する項目をあらかじめ決めておくわけです。そうすれば、書く内容はキーワードになる単語や、簡単な箇条書きで十分だということになります。
余計なことを書かなくてすむので、相手の話すスピードにも無理なくついていくことができるのです。(34ページより)
デジタルより使える、手書き・3分割の利点
打ち合わせにパソコンを持ち込み、会話しながら入力するというような光景は、いまや当たり前のものとなりました。そんな時代においてはなおさら、手書きでメモをとる人は少なくなっているのかもしれません。
もちろん、それ自体が悪いことではないでしょう。しかしそれでも、手書き、そして3分割してメモをとることには大きなメリットがあるのだと著者は主張しています。
前述のように、多くの人は聞いたことや思いついたことを、聞いた順、思いついた順に書きとめていることでしょう。しかも、それがパソコンでの入力となると効率が高まり、手書き以上にたくさんのメモをとることが可能になるかもしれません。
相手のすべての発言、さらには自分が気になったことなど、なんでも入力できてしまうといっても過言ではないわけです。
しかしその結果、重要なことも、そうでないことも混在したメモができあがってしまうはず。あとから読み返してみれば、必ずしも「使えるメモ」とはいえないものになっている可能性があるのです。
そこで、スプリットメモ術の出番。最大のポイントは、内容についての理解がより深まり、整理できることだといいます。
書きながら、理解と整理を進めることで、
・相手の話している内容を、さらに深めるための質問ができる
・お客様の話を整理しながら、現状の課題を踏まえた提案がその場で行なえるようになる
・タイムマネジメントが上手になり、仕事に追われなくなる
などの効果が得られます。(37ページより)
聞いたまま闇雲に書き綴るだけの「受け身のメモ」に対し、3スプリットメモは、必要な情報を能動的・主体的に取りに行く「攻めのメモ」だということです。(36ページより)
こうした考え方を軸として、本書では3スプリットメモの基本ルールから応用までをわかりやすく解説しています。次々と入ってくる情報の数々を簡潔にまとめるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
>>Kindle unlimited、30日無料で読み放題トライアル中!
>> 「Voicy」チャンネルでは音声で「毎日書評」を配信中【フォロー大歓迎】
Source: 同文舘出版