『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』(猿渡 歩 著、ダイヤモンド社)の著者は、モバイル充電ブランド「Anker」、オーディオブランド「Soundcore(サウンドコア)」、スマートホームブランド「Eufy(ユーフィ)」、プロジェクターブランド「Nebula(ネビュラ)」などと展開するハードウェアメーカーであるAnker(アンカー)グループの日本法人、アンカー・ジャパンの代表。
2013年1月に誕生した同社の初年度の売上は約9億円だったものの、8年後の2021年には売上300億円を達成。モバイルバッテリーや充電器などによって国内オンラインシェア1位を獲得しているそう。
「3LOW」(Low Passion=消極的な購買姿勢、Low Recurring Rate=低いリピート率、Low Average Selling Price=低い平均販売価格)といわれるきわめて難しい市場へバッテリーや充電器などのコモディティ製品で参入し、そこまでの成長を遂げたわけです。
「難しい選択」をしながら、なぜアンカー・ジャパンは勝ち続けているのか?
その秘密を読み解くキーワードが「1位思考」。
後発でも逆転を可能にする思考法だ。
これは、ビジネスパーソンから経営者それに限らずスポーツや趣味など幅広い分野で活用できる。
事実、私は自社の経営以外でいくつかの会社のお手伝い(社外取締役や顧問等)をさせていただいているが、そこでも「1位思考」の再現性があり、成果を上げてきた。(「はじめに」より)
重要なのは、著者が「1位はひと握りの天才しかなれないものではない」と強調している点。そこで本書では、「誰でも1位になれる、シンプルな6つの習慣」を紹介しているのです。
きょうはそのなかから、第6章「サボる習慣」内の「机に向かい続けることに意味はない」に注目してみましょう。がんばった結果として蓄積されてしまう脳疲労を取り去り、成長の加速度をアップさせるためのメソッドを紹介したパートです。
毎週1日は「ノーミーティングデー」
ご存知のとおり、「忙しい」の“忙”という漢字は「心を亡くす」と書きます。事実、日々の仕事に追われているうちに視野が狭くなっていくことはあるものです。そこで著者は定期的に“軸を見つめなおす時間”をとっているのだといいます。たとえば、水曜日はミーティングをしない日にしているというのです。
かつては月曜から金曜まで、1日にすれば10数回もの会議や面接がびっしり入っていたそう。しかしそれでは、短期的なアウトプットこそ高まったとしても、やがて中長期のパフォーマンスが落ちてしまう可能性があります。そこでメンバーとも話し合い、「水曜はノーミーティングデー」にしたということ。
余白をつくることで、中長期視点で経営を考えることができるようになった。
気持ちの余裕もできて、集中して勉強する時間も取れるし、社外のいろいろな人とも会える。
アンカー・ジャパンという狭い枠からいったん離れ、経営、経済など少し大きめなテーマで話をすることで、改めてアンカー・ジャパンの今後が見えてくる。(240〜241ページより)
経営者にとって、短期的な売上はもちろんのこと、中長期の成長がより重要だと著者は主張しています。収穫ばかりに目が行って種まきを怠ってしまうと、会社は持続できないわけです。しかしそれは経営者だけでなく、組織で働くすべてのビジネスパーソンが意識すべきことでもあるでしょう。
いずれにしても、短期的に考えれば非合理的であるようにも思えるノーミーティングデーは、中長期で考えると合理的なものであるようです。(239ページより)
サボっているときこそ、アイデアをひらめく
リラックスしていると、自然とさまざまなアイデアが浮かんできたりすることがあります。経営者として、「どうしたら売上や利益を伸ばせるか」とつねに考えている著者の場合もそれは同じ。ただし、具体的なアイデアが出てくるのは圧倒的に“サボっているとき”が多いのだとか。
たとえば筋トレをしていたり、シャワーを浴びたりしているときに、ふとアイデアがひらめいたりするというのです。そんなときは、頭に浮かんだそのアイデアを瞬間的にスマホにメモしたりするそう。
サボると脳が適度にリフレッシュする。思考スピードが緩やかになり、情報を定着させたり構造化したりする。いろいろな情報が有機的につながり、物事の全体最適を考えやすくなるのだ。(242ページより)
リラックスしているときには脳内でさまざまな情報が整理されるため、いいアイデアが出てくるということなのかもしれません。(241ページより)
脳疲労を取る「7時間睡眠」
かつてコンサルティングの仕事に携わっていたころ、著者は4時間睡眠が続くこともあったのだそうです。しかし、現在は7時間睡眠をなるべく確保しているのだといいます。
脳が疲労して判断を間違えたりすれば、業務悪化のリスクと直面することになるかもしれないからです。ちなみに著者と同じように、睡眠を大切にしている経営者は少なくないようです。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは著書『Invent & Wander――ジェフ・ベゾスCollected Writings』(ダイヤモンド社)の中で次のように語っている。
「8時間寝る。時差のある場所に行くのでもない限り、睡眠を優先させる。8時間も眠れないことはあるが、この点はかなり気をつけている。8時間睡眠が私には必要なのだ。よく寝れば、よく考えられる。元気も出る。機嫌もよくなる。」
「4時間睡眠だとしよう。すると4時間分、いわゆる『生産的な』時間が増える。それまで一日12時間働いていたとすると、それがいきなり4時間増えて16時間働くことができる。決定を下せる時間が33パーセント伸びることになる。それまでに下していた決定の数が100件なら、さらに33件の決定が下せる。
だが、疲れていたりヘトヘトになっていたりで、決定の質が下がるとしたら、本当にその時間に価値はあるだろうか?」(243〜244ページより)
つまりベゾスは、きちんと睡眠時間を確保することで、判断の質を保とうとしているのだということ。睡眠時間が少なくなると、疲れがたまりやすくなり、判断力も落ちることになるでしょう。そのような事態を避けるため、著者もまた、脳をフレッシュな状態に保つことができるように心がけているのだといいます。
日々の睡眠が与える影響は大きいだけに、この点もまた留意しておきたいところです。(242ページより)
本書で明かされている6つの習慣をひとつひとつ身につけることで、大きな成長を実現できると著者は述べています。その過程でダントツの成果を上げることになるだろうとも。自分の人生をよりよい方向に進めるために、参考にしてみるべきかもしれません。
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Source: ダイヤモンド社