コピーライターとは、その言葉を見聞きするまでは何も関係がなかったものと人とを結びつける仕事だと思います。

言葉をつくっているのではなく、関係をつくっている。

本当にすごい表現は、一瞬で日常に溶け込むものです。最初からそこにあったかのように、自然に横にある表現。

奇抜さでやみくもに目立たせるのではなく、そのものの魅力をしっかり届けられるのが、いい表現だと思います。(「はじめに」より)

面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は? 人を動かす伝え方50の法則(川上徹也 著、アスコム)の著者は、このように述べています。たしかにそのとおりでしょうが、さらに重要なのはこのあとに続く以下の文章です。

そしてそれは、広告だけでなく、人と人とのコミュニケーションでも同じではないでしょうか。

やみくもに大きな声で叫んでも、伝わらない。

相手に伝わるからこそ対話は成り立ちますし、そうでなければただのひとりごとになってしまいます。(「はじめに」より)

つまり、本書は、こうした考え方に基づいて書かれているのです。しかも世界中の研究から、なるべく新しく、日常に取り入れやすいものを選んでいるのだとか。

きょうはそのなかから、第3章「説得したい」に焦点を当ててみたいと思います。

興味がない相手の関心をひきたいとき

「想像してください効果」を使う

いままでになかったような商品やサービスを見たとき、「自分にどんなメリットがあるか」はすぐには見当がつかないもの。そのため、そういう商品を売ろうとするときには、「自分には関係なさそうだから、いらない」と返されてしまうことも少なくありません。

そんなときはまず、相手に「その商品やサービスを手に入れたときの姿」を想像してもらうのがいちばん効果的。そのイメージが相手にとってワクワクするものであれば、「自分にも関係ある商品だ」と興味を持ってもらえる可能性が高まるわけで、著者はこれを「想像してください効果」と呼んでいます。

なお社会心理学者のロバート・B・チャルディーニらは、いまから40年近く前に「想像してください効果」が有効であることを実験で証明したそう。アリゾナ州フェニックス近郊にあるテンペの住宅街で、地元のケーブルテレビ会社(1カ月後にサービス開始予定)とともに行ったのだといいます。

「ケーブルテレビに関するアンケート調査」という名目で、各家庭にケーブルテレビ加入に向けた勧誘の手紙を手渡すというもの。当時はまだケーブルテレビがほとんど知られていなかったため、「加入するとどんなメリットがあるか」を、次の2つのパターンの手紙にまとめ、住民に配ったのです。

① ケーブルテレビは、加入者に幅広いエンターテインメントと情報サービスを提供します。

(中略)ベビーシッターとガソリン代を使ってわざわざ外出しなくても、自宅で家族や友人と、あるいは一人で楽しむ時間を増やすことができます。

少しだけ想像してください。ケーブルテレビがあなたにどれだけ幅広いエンターテイメントと情報サービスを提供するかを。

(中略)ベビーシッターとガソリン代を使ってわざわざ外出しなくても、あなたは自宅で家族や友人と、あるいは一人で楽しむ時間を増やすことができるのです。

(96ページより)

後者②が前者①と違うのは、冒頭の「想像してください」という一文と、二人称である「あなた」ということばで文章が続けられている点。しかし、それだけの違いで1カ月後の加入率に大きな差が出たのだそうです。

①の手紙を受け取った世帯の加入率が19.5%だったのに対し、②の手紙を受け取った世帯の加入率は47.4%と倍以上だったというのです。

これは、②の手紙を受け取った人が、自分がケーブルテレビに加入したあとの生活をリアルに想像できたことで、このサービスが「自分に関係のあるサービスだ」と認識できた結果だと考えられるわけです。(94ページより)

ガンコな相手を説得したいとき

お互いの共通項を見せる(98ページより)

明らかに間違った意見であっても、正しいと思い込んでいる人にその考えを変えさせるのは至難の業。

自分が信じる意見を支持する情報ばかりに注目し、反証する情報が心に入ってこないからです。この傾向は心理学用語で「確証バイアス」と呼ばれているもの。

イリノイ大学アーバナシャンペーン校のザカリー・ホーン博士とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームは、凝りかたまった意見をどうすれば変えさせることができるかの実験を行いました。

アメリカでは、乳幼児にMMRワクチン(麻疹・おたふくかぜ・風疹の三種混合)を打つと大きな副作用があるという俗説が信じられてきました。

その結果、予防接種率の低下と麻疹の再発を招き、2014年には、644件と前年の3倍の麻疹が報告されました。この俗説は、科学的な根拠が認められていないのですが、副作用を信じる親は頑なにこれを信じ、子どもにMMRワクチンを打たせようとはしません。

医者がいくら客観的なデータを示して安全だとすすめても、親たちはますます頑なになるだけでした。(99〜100ページより)

そこで研究チームは説得をやめ、別の方法を試してみることにしたそう。

「子どもを命の危険にさらさない」という、医師と親の共通の目的を強調し、「MMRワクチンは、麻疹など死に至るかもしれない病気を予防する」というプラスの事実だけを強調することにしたのです。その結果、MMRワクチンの接種に同意する親が明らかに増えたのだとか。

つまり、相手の思い込みを変えようと思うなら、その人がもともと持っているガンコな意見を変えさせようとするのではなく、共通して目標にできる別の考えを植えつけたほうが早いということです。この方法は、ビジネス、政治、外交などの分野においても応用がききます。(101ページより)

「間違っている」と指摘すればするほど、ガンコな人はますます頑なになるもの。しかし論理で説き伏せようとするのではなく、新たにお互いの共通目標を見つけ、それを一緒にやろうというスタンスで臨めば、おのずと相手の態度も軟化するわけです。(98ページより)

伝え方次第で、人はもっとわかり合えるようになり、誤解やすれ違いをなくすことができるのだと著者は述べています。そんな考え方に基づく本書は、伝え方で悩んでいる方の大きな武器になるかもしれません。

>>Kindle unlimited、30日無料で読み放題トライアル中!

>> 「Voicy」チャンネルでは音声で「毎日書評」を配信中【フォロー大歓迎】

Source: アスコム