「不安」があなたを強くする 逆説のストレス対処法』(堀田秀吾 著、日刊現代)の著者は、コミュニケーションに関する研究を言語学、心理学、脳科学などの立場から行ってきたという人物。

本書ではそうしたバックグラウンドを軸に、巷で「効果がある」「正しい」と信じられているストレス解消法、そしてQOL(Quality of Life)を向上させたり、元気で幸せに過ごせる方法を取り上げているのだそうです。

しかしその一方には、「そうしたものを盲信するのはやめ、いろいろ批判的・逆説的な見方をしてみよう、それらの真偽をいま一度考えてみよう物事をより中立的な視点から見る目を養おう」という目的があるのだとか。つまり逆説的な視点があるわけですが、そこには理由があるようです。

巷で信じられている常識、ストレス解消法やQOL向上法というのは、一応、科学的な根拠があるとされているものが多いでしょう。

科学的研究で証明されているから間違いない。そう思いがちです。しかし、科学への盲信はとても危ないのです。(「はじめに」より)

なにが科学的に正しいかは、さまざまな要因によって変化するもの。また、既存の説を否定する新たな説が出てきたときには、「これまで信じてきたあれは間違いだったのか」と捉えられがち。しかし科学というのは、“ある説とそれを批判する説を比較して、どちらが正しいかを吟味する営み”だというのです。

大切なのは、あるものの見方に固執せず、柔軟に別の見方を取り入れたりできる素地を作っておくことです。(「はじめに」より)

つまり本書には、それを実現しようという目的があるわけです。第3章「どっちが正しい? 目からウロコの『◯◯か××か』のなかから、2つのトピックスを抜き出してみましょう。

アイデアを出すにはどっち?「一生懸命考える」or「ボーッとする」

アイデアをひねり出すためには、好奇心のアンテナを高くしている必要があるかもしれません。とはいえ、常にそんな状態で生活していたのでは疲れてしまっても当然。ときには、ボーッとすることも大切なのです。

ワシントン大学のレイクルらの研究結果に、「ボーッとすると脳は平常時の15〜20倍のエネルギーを使うため、アイデアも湧きやすくなる」という報告があります。

研究によれば、何か行動をしているときと、ボーッとしているときの脳の動きを比較したところ、後者の方が記憶に関する部位や価値判断に関する部位が活発に働いていたといいます。(145〜146ページより)

たとえばトイレに行ったときなどに、ふとアイデアが湧き出ることがあります。それこそ、ボーッとしたことによるたまものだというのです。しかし、なぜこういった現象が起きるのでしょうか?

何かをしていると、その行動をするために、脳の必要な部位に多くの血液が流れます。その一方で、その他の部位は鈍くなります。

つまり、ボーッとすると脳の一部に血流が向かうのではなく、均一的に血液が流れるため、結果的に使われていなかった部位にもエネルギーを行き届かせられ、ひらめきやすくなるのです。(146ページより)

脳内のさまざまな神経活動を同調させる働きを持つ、複数の脳領域で構成される脳の働きを「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ぶそうです。これまで、ボーッとしているときは脳が運転停止をして休んでいる状態だと認識されていました。

しかし、実はこのネットワークが(車のアイドリング状態のように)常に稼働していることが明らかになったというのです。しかもこの状態は、平常時の15〜30倍のエネルギーを使うというのですから驚きです。

何かに没頭しているときは、集中力も上がり、目的に向かってまっすぐに進んでいきます。言うなれば、脳は高速道路を走って目的を達成しようとフル回転しているようなものです。

一方、脳のデフォルト・モード・ネットワーク状態は、普段使わない下道を通るようなもの。サービスエリアにはない隠れた名店を発見するーーすなわち思わぬアイデアにめぐり合える可能性が高まるのです。

張りつめて仕事をするのではなく、ときにはボーッとするオフの状態をつくることが大切というわけです。(147ページより)

なおボーッとする方法は、砂時計を見つめる、お茶を入れるなど、なんでもOKだといいます。(145ページより)

伸びしろがあるのはどっち?「自分を評価する人」or「自分を評価しない人」

「だからダメなんだよ」というように上から目線でコミュニケーションをとる人がいます。そんなひとことを投げかけられるとイライラが募るかもしれませんが、いちいち敏感になる必要はないと著者はいいます。

というのも、コーネル大学のクルーガーとダニング両氏による、「能力が低い人ほど自分を過大評価する」という実験結果があるそうなのです。

実験では、ユーモア、文法、論理のテストを行いました。

例えば、ユーモアでは、被験者である65人の大学生に30個のジョークを読ませ、どれくらい面白かったか評価してもらうという具合です。

点数の付け方で、自分のユーモアセンスの高さをはからせた格好です。(161ページより)

そのうえで、「あなたのユーモアの理解度は同年代のなかでどのくらいに位置していると思いますか?」と尋ね、被験者に回答してもらったところ、ユーモア理解度の順位の低い人ほど、「自分はユーモアセンスがある」と高く自己評価している傾向があったのだとか。

つまり自分に自信がないのは、それだけ自分自身を客観視できている証拠なのです。

自分を過小評価しろとは言いませんが、謙虚な気持ちは、結果的に自分自身の状態を客観的に判断するメタ認知につながります。ですから、自分のマイナス面を受け入れることは、自分の成長につながる種でもあるのです。むしろ、自分の思考や行動を客観的に把握し、認知するメタ認知ができない人ほど、うぬぼれてしまい、上から目線だったり、自分を過大評価して、成長の機会を失わせているのです。(162ページより)

これは、記憶にとどめておくべきポイントかもしれません。(161ページより)

本書を通じてストレスを解消し、QOLを向上させるさまざまな方法を学んでほしいと著者は述べています。

それだけではなく、科学と向き合い、つきあう際には、「片目で信じながらも、もう片方の目では批判的に見ていく」という視点を養ってほしいとも。本書は、そんなフラットな状態になるための手助けをしてくれることでしょう。

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Source: 日刊現代