悪夢は、一晩だけでも十分恐ろしいものですが、それが何度も繰り返されるとなると(しかも同じ悪夢を)、眠ること自体が怖くなってしまいます。
でも、ご心配なく。対処法はちゃんとあります。そうした状態を指す専門用語もあります。その名も「悪夢障害」です。
「悪夢障害」とは?
誰でも悪い夢を見ることはありますが、悪夢というのはもっと強烈なものです。
たとえば、期末試験を控えているのに準備ができておらず、そのせいで気が重いというようなことではありません。
やけに鮮明でリアルなシナリオの中で、命がけで戦う。これが悪夢です。目が覚めると汗だくで、心臓もバクバクしています。夢の中の恐ろしい出来事を細部まではっきり覚えていて、もう一度眠ろうと思っても、なかなか寝つけません。
日中の活動に支障が出ていたり、寝不足に悩まされたりしているなら、メンタルヘルスの専門家に相談したほうがいいでしょう。
悪夢障害と診断されるほどになると、悪夢にたびたび襲われるだけでなく、それが引き起こす極度の不安や恐怖に悩まされることもあります。
悪夢障害で多いのが、別のメンタルヘルスの問題の一部として発症するケースです。
そのような場合、問題は悪夢だけにとどまらないおそれがあるので、専門家の指示を仰ぐことが何よりも重要です。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は多くの場合、繰り返し見る悪夢を伴います。PTSDのほかにも、不安障害やうつ病なども、悪夢を伴うことがあります。
結末を自分でコントロールする、悪夢の「書き換え」
悪夢障害の治療については、場合によってはセラピーや投薬治療も効果的です。
一方、専門家からもっとも大きな支持を集めている治療法の1つは、「イメージリハーサル療法(IRT)」です(アメリカ睡眠医学会は、専門家がすすめる治療法のポジションペーパーをこちらで公開。そのリストのトップにあるのがIRT)。
IRTの基本は、悪夢を書き換えて、結末を自分でコントロールできるようにすることです。その悪夢のテーマにまつわるトラウマを抱えている人は、専門家の指導の下でIRTに取り組むのが一番良いでしょう。
患者と臨床医を対象としたガイドによれば、IRTのステップは次の4つです。
イメージリハーサル療法4つのステップ
- 悪夢から目覚めたら、夢の中で起きたことをすぐにメモする。ガイドによれば、眠りに戻りやすくするためにも、スマホでタイピングするのは避けたほうがベター。読書灯の明かりで紙にメモするか、ボイスメモに記録するのが良いとのこと。
- 朝起きたら、その夢を物語として書き記し、結末を変える。やり方は自由。現実的な結末でも良いし、超能力を駆使した結末でも良い。自分が納得できれば、何でもOK。主導権を取り戻すことがIRTの狙い。
- ベッドに入る前に、結末を書き換えた物語を読み返す。そして自分に、「またあの夢を見たら、その結末はこうなるんだ」と言い聞かせる。
- 夢を見たあとは、書き換えた通りの結末になろうとなるまいと、このプロセスを見直す。うまくいったら成功を祝い、うまくいかなかったらこのプロセスをもう一度繰り返す。
IRTは、認知行動療法の一種と考えられています。
悪夢障害がそこまでひどくないなら、自分1人でIRTを試してみてもいいかもしれませんが、専門家の指導の下で行なえば、それなりの効果が期待できることは確かです。
いずれにせよ、人によっては、IRTだけが必要な治療とは限りません。必要に応じて、ほかのセラピーや投薬治療といった選択肢について、専門家とオープンな姿勢で話し合うことが大切です。
Source: Journal of Clinical Sleep Medicine, PsychCentral, Frontiers