極限下でも保ち続けた「人間性」
レターマンのインタビューでは、ゼレンスキー大統領は戦争という極限の状況下でも人間性を失わないで行動することの重要性を強調していました。
戦争によって、人々は異なる状況下に追い込まれた。異なる「在り方」の条件だ。
この状況では、人間らしさを失わないか、または、獣、テロリスト、略奪者、レイピストになり果ててしまうのかを選択しなければならない。
ロシアの侵攻によるそうした被害すべてを、私は、私たちは目にしてきた。
(『My Next Guest with David Letterman and Volodymyr Zelenskyy』英語字幕より翻訳引用)
どんな状況でも、人には「どう対応するか」「どう行動するか」の選択肢が残されていることを示す冷静な大統領の言葉に、『夜と霧』の著者ヴィクトール・フランクルを思い出しました。
苦境な戦場で人々の心の救いとなった「ユーモア」
レターマンに対して、元コメディアンらしくユーモアを交えて応答するゼレンスキー大統領。
コメディやユーモアをツールとして使うことについて尋ねられて、次のように答えています。
人は笑顔なくしては生きられない。ユーモアは人間の一部だ。ユーモアのセンスはとても重要だ。理性を失わないためにも。
(中略)私たちは気分を上げるためにユーモアに頼っている。ソ連時代は誰にとっても辛かった。だが、ユーモアによって「生き続けよう」「子どもを育てよう」と鼓舞された。
今も同じように、苦しい時代でも、皆ジョークを言い続けている。
(『My Next Guest with David Letterman and Volodymyr Zelenskyy』英語字幕より翻訳引用)
ユーモアの力については、ウクライナの英語ニュースサイト「The New Voice of Ukraine」のベロニカ・メルコゼロワ記者が、The Atlanticに寄せた記事の中で、以下のように述べていました。
世界には2種類の人がいると思う。挫折して泣く人と、立ち上がって笑う人。ウクライナ人は後者だ。
私たちのユーモアは特別だ。なにせコメディアンを大統領に選んだほどなのだから。ただし、我々のユーモアのセンスはダークでもある。我々が経験してきたことを考えれば、そうならざるを得ない。
(『The Atlantic』より翻訳引用)
地下のコメディクラブで、人々と笑いを共有したメルコゼロワ記者。コメディアンには、笑いを通じて戦争のことを少しでも忘れさせる瞬間を人々に与える使命感が感じられると記しています。
それは、ゼレンスキー大統領からの指示で「鉄道を動かし続ける」と答えた、前述のカムイシンCEOにも通ずるものがあります。
「今年の人」ゼレンスキー大統領が示してくれたこと

正直なところ、地理的に遠いウクライナでの戦争は対岸の火事のような気がしますが、実際にはその影響は世界中に及んでいます。
燃料や小麦価格の高騰のほか、特に欧州では難民やエネルギー関連の影響も甚大です。
多大な被害や影響を受けている人々がこの冬をどう過ごしているのかと思うと、2月に侵攻がはじまった時のような不安とやるせない気持ちに襲われました。
レターマンに「ウクライナの土地と国境をすべて取り戻す時こそが戦争の終わり」と強調し、すべてが終わったら海へ行きたい、ビールが飲みたいと笑って語ったゼレンスキー大統領。
その日が1日も早く来るように祈りつつ、自分には何ができるのかを改めて考えさせられています。
でも、リーダーであろうとなかろうと、自分がすべきことに対する責任とその実行力、人を優先すること、そして苦境でもユーモアを忘れない心の大切さを、「今年の人」は示してくれました。
Source: TIME, Netflix, YouTube, The Washington Post, The Atlantic, The New Voice of Ukraine