私は、キャリアの初期に上司としたやりとりを今は後悔しています。彼女はまず、「あなたの仕事ぶりについてフィードバックします」と言いました。そして、目の前にリストを置いて、うまくできていないと感じた点をすべて並べ立てました。
ほとんど目を合わせず、無感情な口調でした。それを聞いていると、胸がドキドキして、汗が噴き出してきました。本当に腹が立ちました。
上司が指摘したことのうち3つは私でなく同僚が担当していた業務でした。もう1つは、ほかの人たちからは質が高いと評価されていた成果物に関するもので、予想外のフィードバックでした。
彼女のもとで1年近く働いていましたが、仕事に関して彼女から注意されたことは一度もありませんでした。軽く見られていたのかもしれません。彼女のフィードバックの半分は完全に間違っていました。
事実でない指摘は訂正しましたが、それ以外に関しては何も言いませんでした。上司との面談を終えた時は動揺し、意気消沈。彼女を悪い上司だと決めつけ、恨みを抱き、大学院に進学するためにすぐに退職しました。
もちろん、上司を責めることも可能でした。上司のフィードバックの仕方は最低だったからです。しかし、その時学んだことは、「上司の能力はコントロールできないが、上司に対する自分の反応はコントロールできる」ということです。
また、上司も間違いを犯すことがある不完全な人間です。ただ、そのことをまわりに話さなかったことは、もっとも後悔しています。自分を守るために立ち上がる方法を知らずに、衝動的に行動してしまいました。
不正確なフィードバックや不当なフィードバックをもらった時に声を上げることは、誰でも身につけられるスキルです。私にもできたので、読者の皆さんもできますよ。
そのコツを伝授しましょう。
上司に仕事ぶりを批判された時の対処法
多くの場合、フィードバックを聞いた時の最初の反応は、同意するか異議を唱えるかです。しかし、どちらもしてはいけません。たとえ不当な評価であっても、不正確なことを言われても、とりあえず、「ありがとうございます」と言いましょう。
上司の大半は、部下にフィードバックすることに気まずさを感じており、部下の反応を恐れている可能性があります。そのため、「ありがとうございます」と言うことで、両者の感情を中和することができます。
また、話を聞こうとする姿勢を示すことになり、成熟した人格とプロ意識を示すことにもなります。この場合の「ありがとうございます」は、「ご指摘ありがとうございます」という感じかもしれません。
もし、胸がドキドキしたり、激しく反応してしまいそうなら、「ありがとうございます。少し考える時間をいただけますか?」と言い、場所を変えてそのフィードバックを受け止めて考える時間を自分に与えるのが得策です。
フィードバックをうまく受け止める能力があることを示すことになります。
質問してメモを取る
感情が冷静になれば、質問も対話もしやすくなります。具体的事例や状況を確認しましょう。
上司の期待値、そして自分のパフォーマンス、特に自分のどの点が上司の期待に応えられていないかを質問してください。問題が起こる頻度を明確にすることも大切です。
1回限りの問題なのか、それとも行動パターンとして繰り返し起こったことかなどです。
上司が自分をどのように評価をしているのかがわかれば、的を射た対処ができるようになります。また、これは仕事ぶりに対する評価であり、人間性に対する評価ではありません。
仕事に意識を集中させましょう。自分を責めたり、落ち込んだりすると、前進できません。
ほかの人の意見を聞く
上司の意見は1つのデータにすぎません。重要ではありますが、たった1人の意見でしかありません。信頼できる同僚たちの意見を聞いて、上司のフィードバックがどの程度意味があるものか判断しましょう。
たとえば、上司は「あなたはいつも会議に遅刻する」と思っているのに対し、自分はそうではないと思っているとします。そんな時は、同僚に尋ねてみましょう。
「あなたは遅刻していない」と言われたら、上司の指摘は間違っていることがわかります。
逆に同僚たちが上司に同意するようなら、これは大きな問題ですね。今後は上司との会議には絶対に遅れないようにしてください。
これは、他人の期待に自分の行動を適応させる能力を持つということであり、キャリアを歩み続ける限り役立つスキルです。
上司の立場に立ってみる
上司に共感してみましょう。つまり、上司が置かれている状況を理解するようにしてみましょう。
仕事量は多いのでしょうか?上司の上司はどういう人なのでしょうか?上司は大きなプレッシャーにさらされているのでしょうか?
上司があなたに不当なフィードバックをした日は、いろいろなことがうまくいかない日で機嫌が悪かっただけでしょうか?
上司の立場に立って配慮するのは人間味のある行ないです。私は、過去に上司とのやりとりで、それができなかったことを一番後悔しています。
上司はかなりのプレッシャーにさらされていたことを記憶していますし、誰もが長時間労働をしていました。私は上司にもっと優しくできたはずでした。
「こんな上司なんか」と思っても、優しさを示せばよかったのに、恨みを抱いてしまったのです。
善処していることが上司にわかるようにする
あれから何年も経ってから私がもらったアドバイスです。上司に指摘された行動を善処していることが上司にわかるように振る舞いましょう。
上司が、「あなたはチームプレーヤーとしてチームとのコミュニケーションがうまくできていない」と言っているとしましょう。その場合は、仲間との連携を深めてから、上司に次のように伝えてください。
最新の情報をお伝えしますが、私は今日アリスとミーティングして、私たちの仕事がどのような接点をもてるかを話し合いました。とても良いミーティングができたので、彼女とは定期的にミーティングする予定です。
上司は忙しいので、あなたの努力に注意を払うのを忘れてしまうかもしれません。ですから、自分の努力を上司がわかるようにすることが大切です。
職場では正しいフィードバックをもらうことが期待されます。フィードバックは、パフォーマンスを向上させるための情報ですが、時にはフィードバックが間違っていたり、不当に感じられたりすることもあります。
それをどう処理するかで、前向きで生産的な関係を職場で維持できるかどうかが決まります。フィードバックで心が傷つくこともありますが、自分の感情を抑え、上司やほかの人たちと話し合い、行動を起こすことで、効果的に対処することができるのです。