面接で、あるところまで首尾良く進めたとしましょう。すべての質問に対してうってつけのストーリーを披露し、自分の弱点も謙虚に話し、面接官の笑いをとることもできました。
ゴールはもう間近…と思いきや、「何か質問は?」と面接官。さてここで、頭脳明晰で見識があり、おもしろみのある人間だと印象づけるような質問とは?
100%の合格を保証する質問というものは存在しないものの、この人で間違いないと印象づけ、合格に大きく近づける質問はあるにはあります。今回の就職について熟考してきたことをアピールし、ほかの候補者と差をつけるチャンスであり、本当にこの会社に就職したいか見極めるための判断材料を得るチャンスでもあります。
こういう場でするべき「完璧な質問」について、私もいろいろ見聞きしてきました。
たとえば、「成功の評価基準」について尋ねるとやる気があると思われたり、「私について何か懸念点はありますか?」と尋ねると、相手は気に入った点を挙げてくれるので、良い印象で終われる、などといったものです。
しかし、そんなマインドコントロールは必要ありません。
「今週でこの会社を辞めるとしたら、懐かしく思うものは何ですか? 逆に、何とも思わないものは?」
「ここで働いていて、一番気に入っていることは何ですか?」 という質問には、率直ではあるものの、やや取り繕った定型の答えを用意していますが、上記のように変化球で不意を突かれると、アドリブで率直に答えてしまいます。
私が初めてこの質問をされたのは、いまいち満足していない会社に勤務している時だったのですが、候補者がこう質問した時、「同僚と離れるのは残念だが、度を越した忙しさや方向の定まらないプロジェクトは離れても惜しくない」と、思わず率直に答えてしまいました。
自分にとっては大失態ではありましたが、候補者にとっては決定的な情報にはなったことでしょう。
「ダイバーシティ、公平性、インクルージョンに向けて、御社ではどんな方策を講じていますか?」
「DEI(Diversity, Equity, Inclusion, ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)を目指していますか?」というよくある問いかけをしても、「もちろん、わが社では DEIを心がけています! はい、次の質問。」 と言われて終わるだけですが、実際にどんな方策を講じているかを尋ねるほうが、より有益な情報を引き出せます。
DEIに関して、大半の企業はいまだに発展途上ですが、DEIに向けた戦略が実際に存在して進行中なのか、社会正義的に聞こえの良いスローガンを挙げているだけなのかが判明することでしょう。
「御社では、どのようにフィードバックを収集、活用していますか? 一例を挙げてください。」
企業が、フィードバックを収集し、それに基づいて変革を行なっているどうかは、社風を見極める1つの指標になります。
フィードバックを歓迎、収集などをしっかりと行なっていれば、おそらく社員の声や提案が届いているはずですし、そういった社風の会社を探し当てたいものですね。
DEIの質問同様、ただ単にフィードバックを収集しているかではなく、どのように収集しているかを尋ねましょう。アンケート方式であったり、集会であったり、意見箱や1on1など、その場しのぎの回答でなければ、望ましい回答はいくつもあります。
「CEOについて教えてください。」
CEO(最高経営責任者)と毎日接することはないにしても、重大な判断を下す人物であり、社員の日々の仕事や雇用の安定にも影響を与えます。
企業内で起こっていることにCEOがどれだけ関与しているか(面接官自身がCEO と実際に接した事例があるか、それとも表面的な回答しか返ってこないか)の感触が得られ、CEOが社員から好意と信頼を寄せられているかを見極めることもできます。
どの社員からも、「すごい人です」という感想しか聞けなかったら、その会社はやめておきましょう。
「最後に有休を取得したのはいつですか?」
これは、なかなかおもしろい質問ですね。
社員が実際に有休を取得できているのかを知る手がかりにもなります。「有休取得を奨励していますよ」 とは誰でも言えますが、有言実行されているのかを知りたいところです。
また、最近の面接官の休みについて雑談をすると、緊張を和らげるので効果的です。
ここに挙げた質問すべてを網羅する必要はありません。上記のような質問と、職務や次のステップに関する実践的な事柄の両面について質問すると良いでしょう。
面接の段階によって事情も異なるので、ある候補者にとっての完璧な質問が、別の候補者にとっても良いとは限りません。ただ、目前の採用を勝ちとるために、こういった選択肢が参考になれば幸いです。