人にフィードバックをするのってなかなか難しいですよね。フィードバックとは、プレゼントのようなものだと私自身は思っています。ありがたく受け取っても捨て去ってもよし。いずれにしても、聞いておいて損はないものです。
ところが、指導者や上司、同僚などが、オブラートに包んだような微妙なフィードバックをするのを多くの職場で見てきました。そして、フィードバックをもらうほうも渋々だったり、うまく対応できていなかったり。
フィードバックは、職場以外では広く受け入れられていて、よく見かけます。オンラインのアンケートやポップアップのアンケート、サポート電話のあとのアンケート調査、郵送やケータイでのアンケートからフォーカスグループへの参加要請まで、フィードバックをもらおうという姿勢には事欠きません。
それなのに、個人でフィードバックをもらうのには抵抗があるのは何故なのでしょう。
私自身、まだ仕事経験が浅かったころは、関係を損ねたらという懸念から、人にフィードバックをするのをためらっていたところがあります。ところが、経験を積むにつれ、フィードバックをしないことこそが不親切であると気付きました。
フィードバックの考え方がそもそも間違っていたのです。フィードバックは、実は対立関係の1つの健全なあり方です。耳障りの良いフィードバックだけを聞いて、または何のフィードバックももらわずに長いキャリアを(ましてや人生を)過ごしてしまったら、そこに成長はありません。
フィードバックなくしては、向上することも目指すところに行きつくこともできません。
誰しもフィードバックをもらうことで、生産性の向上や、さらにはキャリアのうえでも人間としても成長が期待できるのです。
以下に挙げる、「フィードバックでやってはいけないこと」3つには注意しましょう。
1. パターン認識ができていない
コンスタントにフィードバックをもらうと、自身の行動パターンに気づくことができます。このパターン認識の過程で、受け取った情報と頭の中にすでに持っている情報を関連付けることができるからです。
自分の行動をよく認識している人なら、フィードバックをもらうたびに自身に関する理解をさらに深めて、自己改善につなげることができます。
長期間にわたって誰からもフィードバックをもらえていなかったとしましょう。そこで初めてフィードバックをもらったら、動揺して素直に受け止めることもできないでしょう。
これでは良い結果は生まれません。
これは、コンスタントにフィードバックをもらうことで回避できます。フィードバックが当たり前になればなるほど、うまく対応できるようになります。節度をもって同僚と真摯に向き合うことで、ポテンシャルと能力の限界まで成長して、より良い人間に進化していくことができます。
フィードバックは、業績評価の時に限定せず、毎日や毎週のチェックイン時に使うのが理想的です。定期的に交わすことで、信頼関係が生まれ、本音での対話が可能になります。
2. フィードバックを悪用する
職場において、フィードバックが悪用されることもあります。サポートするためではなく、傷つけることを意図して使われた時です。
1つの職場で働く社員には、共通項が2つあります。
- 同じ会社に勤務しているということ
- 各自の努力が会社の成功に貢献するということ
各自の業績が会社の成功に寄与するので、同僚が良い業績を収めるのは、お互いに本来望むべき方向であるはずです。
ところが、職業人として成熟しておらず、共同体の努力が成功につながるということが理解できていない社員の場合、フィードバックが機能しないということが起こります。
フィードバックが充実したものになるには、誠実な人間関係とオープンなコミュニケーション、成長という目的を共有すること、信頼関係、そして、フィードバックを通して絆が深まるという認識が不可欠です。
3. 伝言ゲームをしてしまう
私が子供のころ、輪になって座り、隣の人に次々と伝言する遊びがありました。大抵の場合、最初の人に伝言が戻るころには、ひどく間違って伝わったものでした。
職場でも、この伝言ゲームをしてしまう人をよく見かけます。元の発信者が、フィードバックの対象の当人に直接自分の言葉で伝える代わりに、上司や同僚に話してしまうのです。
これは、百害あって一利なし、信頼を損ねかねません。
フィードバックを直接伝えるのは、信頼や健全な関係を築くきっかけになりますが、それには正しい手順を踏む必要があります。
- まず、ある程度の信頼関係を構築し、フィードバックが双方向であるようにします。
- そして、建設的で有益なフィードバックを心がけ、こうなってもらいたいという理想像や、それにはどんなサポートができるか、それがどう結果につながるかなどを明確に示す。
これらができて初めて完全なフィードバックができると言えます。
リーダーは、人々を行きたい場所に導く。偉大なリーダーは、必ずしも人々が行きたい場所へではなく、行かねばならない場所へと導く。
というアメリカの前大統領夫人、ロザリン・カーターの言葉がフィードバックの核心をついていると言えるでしょう。
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